エピソード2.5 本社ビルの爆発
〈エピソード2.5 本社ビルの爆発〉
昼休みになると、留美は図書委員だったので、図書室の貸し出しカウンターに座っていた。
だが、あまりにも暇なので、留美がポケットからスマホを取り出そうとすると、突然、ドカーンという大きな音が耳朶を打った。
「何なの、今の音?」
留美は目を瞬かせる。
何かが爆発したような轟音がしっかりと聞こえたのだ。
その証拠に、図書室にいた二人組の男子も窓に近寄って何やら騒いでいる。
「おい、見ろよ。クライスター社の本社ビルから煙が上がってるぜ」
男子生徒は窓から見えるクライスター社の本社ビルを指さす。
ちなみに、ビルは縦に長いタイプのものだ。
三十階建てくらいはある。
「本当だ。何だか知らないが、スゲーことが起きてるな」
ビルの真ん中から黒い煙がモクモクと立ち昇っている。
それを見ているだけで、留美の胸の鼓動も跳ね上がる。
「アメリカの同時多発テロの映像を思い出すな。ひょっとして、今の爆発音もテロの類か?」
「この日本でテロが起きるなんて、よっぽどのことだろ」
「だよな」
愉快そうな顔をしている男子たちとは裏腹に、留美は背筋が凍り付くものを感じていた。
「おっ、ビルが崩れ始めたぞ!」
高層のビルが自壊するようにして、崩れていく。
その光景はテレビで見たことがあるアメリカとの同時多発テロを否応なしに想起させる。
が、同時多発テロとは違い、ビルは途中で真っ二つに折れた。
ビルは周囲の建物を巻き込みながら倒れて、ドスーンという音を響き渡らせた。
「す、すげー」
男子たちと同じように留美も開いた口が塞がらなかった。
まるで、映画のスペクタクルなシーンを見ているようだ。
「これは大惨事になったぞ。死人がたくさん出るんじゃないのか?」
「だろうな。コンクリートの瓦礫に潰されたら、人間の体なんて簡単にグシャグシャだ」
男子たちの不謹慎な話を聞いていた留美は、シュウイチの親友の杉浦康太の名前を思い浮かべていた。
もし、康太が死んだりしたら、シュウイチの居場所も分からなくなりかねない。
だが、崩れたビルの中にいたのなら、その生存は絶望的だ。
「最近、この町はおかしいことだらけだったが、やっぱり、俺たちの知らないところでテロのようなものが起きていたのかもな」
この爆発も化け物の仕業ではないだろうか、と留美は思う。
「その可能性は大だし、さすがにこれはテレビも報道せざるを得ないだろ」
もう揉み消しはできないはずだ。
この件で、町にいる警察官や自衛隊がどういう動きに出るか、それを考えると留美の体からも気持ちの悪い汗が噴き出してきた。




