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エピソード1.5 新学期の学校

〈エピソード1.5 新学期の学校〉


 留美は朝の爽やかな喧噪に包まれた教室にいた。


 まだ夏なのでムワッとした熱気も漂っているが、それも心地良く感じられる。


 一方、新学期ということもあり、どの生徒も浮き立つような顔をしている。


 それは留美の親友の萩原裕子も同じようだった。


「とうとう学校が始まっちゃったわね。今年の夏休みはどうだった、留美?」


 留美が窓の外をぼんやりと眺めていると、裕子がその肩を叩く。裕子の顔には明るい笑みが張り付いていた。


「どうって言われても困るけど、去年の夏休みより何倍も慌ただしかったな。だから、今日もちょっとバテ気味だよ」


 ここで本当のことを告げられればどれだけ救われるか、と留美も心の中で嘆息した。


「そっか。私は彼氏と楽しく過ごせたから大満足だけどね。やっぱり、高二の夏ともなれば、恋愛を満喫しなきゃ」


 裕子は下世話な感じに笑った。


「それはごちそうさまでした」


 留美は苦笑しながら軽い嫌味をぶつけた。


「お粗末様です」


 裕子はユーモアを感じさせるように切り返すと、改まったように口を開く。


「でも、夏休み中はおかしなことが、あっちこっちで起きていたみたいよ。私の彼氏も男なのに随分と怖がっていたわ」


 そう言うと、裕子の顔から笑みが掻き消える。


「おかしなことねぇ」


「そうよ。でも、テレビじゃ何にも報道しないし、ネットのニュース・サイトもだんまりを決め込んでいたわね」


 裕子はおどけたように肩を竦めながら更に言い募る。


「その上、ネットの掲示板でも何かおかしな書き込みがあれば、すぐに消されているみたいだったし」


「それは、怖いとしか言いようがないね」


 警察や自衛隊が噛んでいるとすれば、全ては国ぐるみだ。


 どんな形で情報が封じ込められても不思議ではない。


 その上、自分の周りには、もう味方になってくれる人間は居ないのだ。


 居るとすれば、音沙汰のない喋る猫くらいだろう。


「でも、人の口に戸は立てられないし、特に化け物を見たって言う声は増える一方みたいよ」


「そっか」


 留美は自分が考えていることを吐き出したいという衝動を何とか堪えた。


 改めて思うが裕子は巻き込めない。


「留美は何か知らない? 私と違って夜のアルバイトとかしてるし、色んな話を聞くことができるんでしょ?」


「うーん、特に気になるようなことを言っている人はいないかな」


 それは真っ赤な嘘だ。


 不穏な会話は嫌でも耳に入るし、みんな夜の町を怖がり始めたせいか、店の客入りも悪くなってきた。


 幾ら隠そうとしても、おかしなことの影響は確実に出ている。


「そうなんだ。でも、私は本当にいると思っているわよ、化け物が。でなきゃ、面白くないもん」


 何も知らないであろう裕子はそう無責任なことを言って、ケラケラと笑った。

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