エピソード1.5 亡くなった生徒
〈エピソード1.5 亡くなった生徒〉
お盆の前には登校日がある。
なので、留美は億劫なものを感じながらも、しっかりと学校に来ていた。
騒がしい教室にいると留美も何だかほっとしてしまう。
学校だけは何も変わらない不変の場所のように思えたからだ。
が、そんな安心感を打ち砕くような話を留美は親友の裕子から聞かされる。
「ちょっと、ちょっと。あの元気に陸上をやってた篠原さんが事故で亡くなったらしいわよ。留美は知ってた?」
裕子は怖々とした声で言った。
「知らないよ。今、初めて聞いたし、篠原さんが亡くなったのは本当なの?」
留美は篠原さやかの席を一瞥してから首を振る。
「私も学校に来てから聞かされた話だけど本当みたいよ。しかも、篠原さんがどんな事故で亡くなったのかは誰も知らないみたいなのよね」
広い情報網を持っている裕子でも知らないことなら、留美が知っているわけがない。
「悲しいって言うよりは怖いね。まあ、私は篠原さんとは親しくなかったから、おかしな感傷に浸ったりはしないけど」
留美は本当に事故なのだろうかと思いながら言った。
「私も同じよ。でも、他のクラスでも事故で亡くなった生徒がいるって聞いたし、私もぞっとしていたところよ」
裕子がややオーバーに言うと、教室に担任の老教師、金本美里がやって来る。
いつもは柔和な金本の顔が今日に限っては険しく見えた。
「みなさん、夏休み中とはいえ、だらけていてはいけませんよ。ホームルームを始めるので、みなさんもキビキビと動いて席に着いてください」
金本の叱咤するような声を聞くと、教室にいた生徒たちも体に電気が流れたような動きで自分の席に着く。
全ての生徒が席に着き、教室が静かになると金本は小さく咳払いをしてから口を開く。
「もう知っている人もいるかもしれませんが、夏休み中に篠原さやかさんが事故で亡くなられました」
その訃報に教室の生徒たちもざわめく。
「また、他のクラスでも事故で亡くなる生徒が出ています。みなさんも夏休み中の事故には十分、気を付けてください」
金本の言葉に、利発な裕子が手を上げて質問をする。
「先生、篠原さんは何の事故で亡くなったんですか?」
裕子の言葉に金本は困ったような顔をする。
「それは先生にも分かりません。ですが、ただの事故なので、おかしな噂を真に受けたりはしないでください」
そう裕子に言い聞かせると、金本は必要事項を告げて、さっさとホームルームを終わらせてしまった。
どうやら、この件では教師の金本も、もどかしいものを感じているようだ。
留美はもう頼りにできる大人はいないかもしれないと思いながら、教室の窓から外の景色を眺めた。




