23. 魔申王の威風
ダーツンのボディがいよいよ軋み、ギーガが迫る中、天空から襲う突風が二体の間を裂いた。光球がバラバラと散る。
距離をとるギーガ。意志を持つ突風はダーツンの頭上に瀑布のように降下し、唸りながら全身を包み込むと、停止しかけたダーツンを復活させた。
ギーガは恐れ慄いた。
「……ラ、ラモンさま!」
ダーツンの口の尖った顔はみるみる変わってゆく。黄金の奇怪なマスクを着けた、大柄な『魔申王』の威風を漂わせた。
「ラモンさま、何故……」
「……ギーガよ。俺は新たにこのボディに宿った」
「え?」
「そう。まずはおまえの正体を暴く」
「な、何を」
「このダーツンが疑ったように、俺も訊いてみたい。おまえは実は神オルガの手先か?」
「違います!」
「しかし今のおまえは俺に疑念を抱いているな。俺の意志に納得できない、俺の怒りに同調できないと」
「……」
「前にひとつだけヘビンから聞いたことがある。おまえは一度オルガに連れ去られ、改造されたのだとな」
ダーツンのボディをまとうようにラモンは新たな実体を現した。
ギーガは驚愕している。
小柄だったラモンは異様で脅威で巨大に見えた。
ギーガの心は悲しく震えていた。
「ギーガよ。ヘビンの話は本当か? おまえの後ろにはやはり創造神オルガがいるのか?」
何も自覚がないギーガはただ否定する。
「『知らない』と言ったら……あなたは」
「……力尽くで、訊くのみだ」