21. 幸福とは
ゼロウは全電気エネルギーをギーガに授けた。
ギーガはゼロウの背中をさすりながら思案する。
――この世界で、あのヘビンの、わたしに巻きついたあのヘビンの燃料電池を奪えば、ゼロウを復活させられるかもしれない。ヤツが、使えればの話だが。またあの場所へ戻ってみるか――と。
それから長い間ギーガは木の陰にいて、次の行動パターンを模索しながら辺りを眺めた。
青く晴れた空と緑の木の下で、カワラケとカワラケノアバラが――〝果実〟を手にとって喜んでいる。
二人は地表に露出する大きくうねるような木の根に腰掛け、笑ってそれを食べている。
やがてカワラケノアバラが、じっと見ているギーガに気づいてその果実を持ってきた。
彼らの食料はこの果実。
食べられなくてもギーガはそれをもらい、しばらく見つめた。
よく〝熟れた〟――鮮やかな〝赤〟を。
お腹いっぱいになって心も満たされ、パワーが沸き出る感覚はギーガにもわかる。心があるからわかる。
心が満たされるのだ。
初めて思った。これが〝幸福〟というものかと。
純真無垢に戯れるカワラケとカワラケノアバラを見ていると、それを守りたいとさえ思った。
その光景があまりに清らかで、美しく思えた。
――ラモンさまは創造神オルガに歯向かうため、あのヒトたちを試すと言われた。あのヒトたちに〝禁断の果実〟を与え、試すと。
ラモンさまは神に怒っている。それはわかる。仲間を無惨に廃棄されたことへの怒り。
自分を破壊されたことへの怒り。
……でもわたしは少しわからなくなってしまった。あの生まれたての純粋で清らかなヒトたちを見ていると余計にわからなくなってしまった。
……神への怒りなど……ラモンさま……。
ギーガは、両脇に座って微笑むカワラケたちを見た後、立ち上がった。
まずはゼロウを助けるために。
あらためて地磁気を操作し、先ほどヘビンを倒した場所への移動を開始した。