表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/33

第二十二話 潜入、ここがめぶき園の裏の顔


 私は今、大きな滝の目の前に来ている。水量も多く水飛沫を沢山上げて落ちたところは泡で真っ白になっている。

 鬼灯八さんの情報によればここに訓練場の裏口が隠されている。日吉さんも加藤さんも手が放せない、植木さんは指示を送る必要がある。必然的に私が白羽の矢が立ってしまう。

 でもまあ、インドアだけでないこともアピールしていかないといけないから願ったり叶ったり。

 この滝は種ヶ崎山の観光名所ともなっている『星の落水』。隕石がこの山にも直撃したおかげで滝ができた。そんな名前由来がある。

 そんな観光案内は置いといて、この滝の裏側に扉……そもそも滝の裏に行けるような道が無い。滝壺の近くを泳いで裏に回る? いや、危険すぎる。見た目以上に滝壺は危険。

 地上ルートを使おうにも自然の壁によって道は閉ざされている。もっとこう物語にあるような滝の裏に通じる道があって──

 いや、そうか。少し考え方が間違っていたんだ。八さんはカモフラージュしているとは言っていた。それはめぶき園側の扉のように表面をUCIで隠しているんじゃなくて。この山壁、風景そのものを隠しているとすれば?

 UCI探知ゴーグルを起動させ、UCI製か否かを判別する。

 その予想通り、目の前の壁は巧妙に自然物と一体化したUCI製の偽物。蔓や蔦という本物が伸びて張り付いているから気付き難かった。

 ここで使うは奴らが持っていた『UCI再構築光射装置』これを使えば──よし、粉状になって壁が消えてくれた。

 隠された壁の裏には道、意図的にくり抜いたかのような道が滝の裏にまで伸びていた。よくもまあこんな風に手の込んだ仕掛けを考えるものだと尊敬する。


「こちら東雲、訓練場の裏口を発見しました」

「了解しました。東雲さんはそのまま侵入し証拠を集めてください」

「はっ!」


 意識を切り替える。ここで失敗して足を引っ張るわけにはいかない。


「現在加藤さんは敵パワードスーツの停止に成功。一部故障が起きたようですがめぶき園にそのまま向かうようです」

「はぁ?」


 壊した? 私達がイザという時のために使えるように整備しておいたルプトゥーラを? いくら先輩だとしてもラインを超えている。許せない……!


「ま、まぁまぁ落ち着いてくださいな。任務を達成できるならば充分役目を果たしているでしょう。倉庫の中で眠っているよりかは日の目を浴びれて良かったのではありませんか?」

「……そういうことにしておきます」


 私は大人だからあまり引っ張らないようにする。ここから先の任務も集中しないといけない。大丈夫、私は切り替えられる女──


「日吉さんは西種ヶ崎に向かわせています。恐らくですがあの三人は病院に向かう可能性が高いです。そして、ハッキングをされたことをめぶき園側も理解しています。兵力を集中しているでしょう」

「そうですね……」


 だから私をここに送った。八さんが捕まってしまえば証言どころではなくなる。訓練場から絶対的な証拠を入手すれば捕まったところで問題は無くなる。

 母親に会わせる約束は一部だけ払った。義理は果たしている。


「植木さん、これより潜入しますので通信を完全遮断します。次に繋がる時は証拠を転送する時です」

「武運を」


 通信機器を完全に停止し滝の裏へと進む、大量の水飛沫が身体に触れる、床もヌメリを帯びていて気をつけて歩かないと滑って転びそうになる。

 奥の方へと進んで行くとドアが見つかった。錆びず丈夫な素材で作られているのが見るだけで伝わってくる。ここを開くのは少し骨が折れそうだと気合を入れなおすと、鍵穴はおろか電子パネルも存在しない。取っ手だけが扉に備え付けられている。

 まさかと思ってその取っ手をスライドさせると普通に開いて呆気にとられてしまう。おそらくだけど避難用に作られているかつ、あの偽の壁がセキュリティになっているから鍵はつけていないと決めておく。

 でも、油断はしない。入り口だけが簡単で中は膨大なセキュリティで守られている可能性が高い。UCI光学迷彩機構を起動して突入する。

 非常灯の仄かな明かりだけが照らす金属の階段を無音に近い最小限の音を立てながら上がっていく。斜め上へと20m近く。階段を上がり切り曲がり角を片目だけだしてそっと覗くと誰もいなければ何も無い。

 道をさらに進んで行くと階段へと繋がっている開いた扉があった。この避難経路を使うための各階へ通じている階段──

 この訓練場が何階建てなのかは委員会は誰も知らない。

 少しでも手がかりがないかと階段の踊り場に入ると……地図があった。デパートで良く見られる各階のフロアマップ。丁寧すぎない? とにかく写真に撮っておこう。

 ここは最下層地下4階、地下一階が出入り口のある場所でUCI管理室のある場所。そして、子供達が訓練するであろう大きな広場もそこにあった。さらにはロッカールーム。トイの整備室。大型エレベーター。

 地下二階は広々としたトレーニングジム。ここまで見ればおかしな施設だと断ずることはできない。でも──

 地下三階とここ四階に関しては大まかな見取り図だけで部屋名が書いていない。

 よっぽどの物が隠されていると見て間違いないはず。手に入れるべきは言い訳の効かない絶対的証拠。ただ誰もいない訓練場を映したところで体育館とでも言い張られたら効果は薄い。

 まずはこの四階から……通路歩いていても赤外線の類も動体センサーも張られていない。監視カメラはあるけれど、光学迷彩をしている今ならゆっくり歩いていれば画面にゆらぎや歪みも発生しない。緊張はするけれど余裕はある。

 歩いていくとガラスが張られて中が見られる部屋がある。暗闇の中を暗視スコープで確認するとMRIのような大型の装置が設置してある。バームクーヘン見たいな機械の穴に人を入れて何を調べたりするのだろうか?

 この地下四階は医務室的な役割がある?

 確証を得ようにも、他の部屋の殆どがカードリーダー付きの電子ロックされている部屋。部屋プレートには薬品室、調合室なんて書いてあったからこの考えは間違っていない。大型エレベーターの前は広間があり空の台車と山になっているダンボールが沢山置いてあった。

 箱には薬の名前が書かれていて。精神安定剤に使う薬、痛みを抑える薬、興奮作用のある薬、薬草類、その中にヒト用の成長剤が混ざっていることもわかり思わず身体が固まった。

 子供を強くするために本当に使っているのか? ただ偶然ここにあるのか常習的に使っているのかはまだわからない。最悪の想像通りだとすれば止めなければいけない。迷わず写真に収めた。

 私の想像通りだとしたらこれは『LV計画』をなぞっているようにさえ感じる。

 あの計画の設備や施設は破棄され改築されたとは聞いたけど、計画は一つ一箇所では無く複数個所で同時に行われた計画の可能性──

 東条昭雄はそれをわかってめぶき園を併設させたのか?

 今はまだ可能性。

 この階で調べられるのはここまで、エレベーター隣の階段を使って三階に進むと──


「っ──!?」


 身を乗り出す前にサーチライトの光が開いた扉を満たすように洩れたから何とか回避することができた。

 この階は何かで見張られている──

 光が消えた後、昂ぶる心臓を落ち着かせながらそっと覗くと警備用のロボットが巡回しているのが見えた。あれは企業で良く見るドラム缶型のルート巡回警備ロボット『オウル』。高度な視界センサーによって暗闇だろうと光学迷彩だろうと見極める凄いやつ。登録された普段の景色と異なる部分があればすぐにチェックする機能も備わっているんだからダンボールに隠れて移動するなんてのも意味が無い。

 あれに見つかると警備室にアラームが響く。それに特定位置以外で機能停止に陥っても同様にアラームが響く。

 それに、オウルだけじゃなく普通の監視カメラもある。複数の目を掻い潜って証拠を集めるのは骨が折れるこの階の捜索は不可能に近い。

 先に地下二階を確認するためにこのまま階段を上って確認すると……警備ロボットが無くて少し安心したけど。この階はまるで営業開始前のトレーニングジムみたいな印象を受ける。

 器具の数も種類も豊富。子供だけでなく大人も使えるようにサイズが異なっている。羨ましいわ、都会でこれだけの物を利用しようと思ったら五千円で済むとは思えない。っていけない私的な考えは止めて証拠を集めないと。ここを写真に撮っても証拠としては薄いけど念のため。

 部屋の奥の方に進むと、通路がありトイレとその反対は階段。この階段は裏口に繋がってる。

 三階四階と比べると空気感が全然違う。表と裏、光と闇。こうなってくると調べるべきはやはり三階……──


 チーン!


 と無音の空間に広がる軽快な音。思わず身体が跳ねそうになって驚いて。近くにあったエアロバイクの裏に身を隠す。光学迷彩が機能しているけど反射で身体は動くし、なんなら迷彩が無かったら身体がはみ出てさえいる。

 スコープを使って乱入者は何者か姿を確認すると──

 思わず目を見開いて言葉を失いそうになる。ここまでのもの用意していたとは思わなかった。現れたのは流線型の鎧に全身が包まれ、顔の正面にはT字型の透明板で視界を確保されている。

 すぐにわかった。身体の表面に甲殻類のような外骨格を身に纏い、狭所で活躍する一体型のパワードスーツ、シンプルな見た目だから初期型の『01』、ただ性能は不明ね。

 ルプトゥーラのような大型と比べれば発揮されるパワーも汎用性も低いけど、単純な耐久性に加えてUCIを加えたことで高温低温問わずにパフォーマンスを発揮できるのが特徴。


「到着しました。捜索を開始します」


 AIユニットじゃなくて血の通った人間が纏ってるか。こうなってくると光学迷彩も役に立たなくなる、あの頭のセンサーにはあらゆる感知機器が備え付けられているはず。この闇の中でも普通に動けていることから間違いない。

 熱源やUCI探知をされたらすぐに発覚させる。

 それにまともな武術は通用しない、見つかったからって武力行使で無力化は不可能。あの鎧は銃弾も通さない。間接を決めることも絞め落すこともできない。

 さぁ……どうする?

 決まってる、逃げるしかない。

 でも、運が良かった、避難経路の階段を使える。通路に入り階段の扉を超えようとした瞬間──太く広い緑の光が私の身体を撫でた。


「発見しました。捕獲します──」


 T字の部分から光を放って探索してきた!? まるでヒーロー作品みたいなアイレーザーね!

 あそこからここまで50m以上離れているのに容赦なく私を捉えてきた。多分対UCIに特化した探知光、光学迷彩を使ってくることを完全に理解した装備ということ。

 でも、顔も姿の判明は無理。逃げ切れ──うっ!?

 マラソンランナーのように完璧に整ったフォーム、重心のズレや歪みが全く見えない、天井に吊り下げられながら走っている印象すら受けて恐怖すら感じる。

 なにより機械によって加算された超パワー、おまけに片腕はマシンガンを構えて狙いを定めている。主人公キャラに追いかけられる敵キャラの気持ちが今なら良くわかる。

 これから逃げきるのはまず無理だ!

 でも、運が良かった。この階段で相手に選択肢を与えられる。一階に上がるか三階に下がるか──相手にとってされたら困るのは──

 悩む暇は無い、リズムの良すぎる足音が迫ってきてる!


「階段、だとすれば──」


 機械の足音は徐々に遠ざかって行く。賭けには勝てた。私は三階に降りて向こうは一階に上がった。おそらく出口までの距離は一階の方が近いから、もしくはここはあの裏口は既に誰かが待ち伏せているか……

 こうなってくるとなんとしても三階を調査しないと。アレが来るということはそれだけ見られたくない秘密がある。

 時間はもう無い──無理矢理の突破も考えて動く。

 頭が嫌なぐらい冷えているのに、思考がまとまらない、心臓は大きく脈動してる。

 この三階の通路は地図で見れば正方形、巡回ロボット『オウル』の数は──二機、お互い対角の位置を意識しながら右回りにグルグルと動き続けている。フリーになっているのは二辺、けれどオウルの真後ろを陣取り常に動き回る必要がある。

 案ずる余裕は無くすぐに実践──振り向かれたらお終いというスリルが脳を揺らし続けている。でも、今の所は上手く行っている。

 各部屋を探していくとガラス越しだったりネームプレートで、トイの開発と改良を行っている階層なのがわかった。他にもUCIを利用した兵器の開発も進められている。

 それとワープリで使う小型UCI生成炉の開発。警備ロボが配置されている割にそこまでの情報は──『UCI適合室』。

 見慣れない言葉に思わず足が止まった、扉に手をかけても開きはしない。だけど、写真に収めることはできた。

 もう一度調べようと思ったら追加で一周する必要が……っ!?

 オウルが止まった? 急に振り返るかと考えたけどランプも消えて完全に機能が停止してる。電池切れ? いや、違う──僅かに聞こえたシュインという音。アイツがこの階にやってきた!

 多分、自分が侵入者だと誤認されないために機能を停止した。

 通路の先から通路を埋め尽くす緑の光が洩れて見える。エレベーター前から探知光線を放った。位置的にあそこは隅で私と対角に位置してる。すぐには見つからない。いないとわかったら四階に向かって──

 なんて淡い希望は足音が近づいてきて簡単に壊された。

 でも、これなら逆に好都合──今なら正面突破も……はぁ!?

 もう一体のパワードスーツ!? まさか地下四階から上がって来た!? 死を意識するってこういうことなんだ……T字の面がこちらに向けられるとすぐに通路の角に隠れる。真横が緑の光で満たされる。ドラム缶型のオウルは容赦なく光に当てられて……あっ──

 どうやらもう一人は私にとって幸運の使者だったみたい。

 私のいる辺に最初のヤツがやってきた。ほんの5秒前だったら絶望で青ざめていたと思う。でも、大丈夫だ。後から来たヤツもこっちに向かって来ている。

 私は、光が放たれる直前にオウルの影に隠れる。すると、緑の光はオウルが防いでくれる。

 この光を見たもう一人のヤツは、先程の自分の行動と合わせてここには誰もいないと判断する。

 踵を返すとゆっくりと戻って行くのが見えて大きな溜息が出そうになるのを必死に抑えながらゆっくり呼吸をする。

 二体のパワードスーツの足音がどんどん離れていくとエレベーターの音が聞こえた。

 通路の角からスコープを使ってエレベーターのランプを見ると「1」という数字。二体とも上に上がった。

 脱出のチャンスはもうここしかない。証拠としては弱いけれど、何かが行われている可能性は示せる。

 それにこれ以上はストレスで髪の毛が抜けそうになるし肌もおかしくなりそう。

 だから、絶対休暇をもらう、温泉入って爆睡する。そんな溢れんばかりの欲望が私を帰路に付かせてくれた。

本作を読んでいただきありがとうございます!

「続きが気になる」「興味を惹かれた」と思われたら


ブックマークの追加や【★★★★★】の評価

感想等をお送り頂けると非常に喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ