第二十一話 男達の青春、機兵激突!
パワードスーツバトル!
それは機械工学系企業が己の技術力とプライドをかけて戦う重厚感抜群の超バトル。
通常のワープリと同じようにパワードスーツに一定のUCIダメージを受けたら緊急停止する仕組みとなっている。
UCI耐久値はどのパワードスーツも同じだが、起動系、時間的UCI生成量に制限は無い!
さらに武装も自由! ただし火薬や燃料を武器利用するのは禁止。故に従来のトイを大型改造する手法がメインとなる。
そして、操縦者も当然重要である。操縦者の動きがダイレクトに表現される、へっぴり腰で戦えばそれだけ情けない姿を大衆に晒すことになり企業イメージの低下に繋がるぞ!
これからぶつかり合う二機のパワードスーツは川原に降り立ち、重圧を放っていた。近くで休んでいた小動物達は起きるであろう戦いの激しさを感じ取りすぐに逃げ出した。
「本当にやる気ですか先輩? こういう戦いするの初めてなんじゃないですか? 大丈夫ですか、僕が変わってもいいですよ?」
「こいつとはここで上下関係をハッキリさせておきたい、俺がやらなきゃ意味が無い。確かに初めてだが思った以上に使い勝手が良い、上方向の動きはイメージ通りに動かないだろうが地上戦に関しては問題ない」
パワードスーツの胸部ハッチを開き顔だけ出して会話を行う。
機械の両腕を伸ばしグーパー閉じて開いてを繰り返すした後は滑らかな動きで拳法の型をパワードスーツで見せ付ける。
「わかりました……」
どこか残念そうな表情を見せながらも意識を切り替え坂の上に立ち、川原を見下ろす。そして──
「ではこれよりパワードスーツによるバトルを執り行います! ジャッジは私、日吉和樹! 両者準備はよろしいですね?」
ハキハキと通る声で執り行う。
互いのハッチが閉じ、排気熱が大きく放出され小石を砕く音を響かせながら動き、川原の中央で向き合う。
両者、戦いの準備は出来上がっている。頭部ユニットのアイカメラが一際輝くと傍目から睨み合っているようにも見えた。
「んっふっふ……年甲斐も無く心が滾ってしまいますな! 子供相手に稽古付けるのとは訳が違う、超パワーによるぶつかり合いを体験できるとは!」
「否定は仕切れないな──」
大の大人が真面目な戦いだと知っていながらもどこか心が躍っていた。
ただ仕方ないだろう──
子供の頃特撮ヒーローやロボットアニメに憧れた大人達にとってこの姿はまさに夢の衣装で夢の戦い。パワードスーツを着たくて警察や自衛隊を目指す子供をいる位だ。現実を知っているマセた子供であっても近くでこの迫力を見てしまったら脳が焼けることになる魅力を秘めている。
変身アイテムを身に着けたところでカッコイイ姿になって超パワーを手に入れることはできない。だがこれは違う。
本物の力がここにある。
暴徒鎮圧兼障害粉砕型パワードスーツ『ルプトゥーラ』
高さ 3200mm
重さ 1300kg
UCI生産速度 3000me
VS
拠点防衛兼暴徒鎮圧用パワードスーツ『アテナ』
高さ 3100mm
重さ 1450kg
UCI生産速度 4000me
「バトル開始──!!」
開幕、アテナのガトリングによる先制。
それをシールドによる防ぐルプトゥーラ。工事現場の作業音の如き轟音が田舎の空間に広がっていく。
(従来のルプトゥーラと装備が違うな──装備を持ち替えて様々な障害に対応するのがメインコンセプトの機体。機体の器用度はトップクラス、左腕は防御用のシールド、だが右腕は何だ? 筒が一つ、遠距離か? それともUCIでビームサーベルもどきを生成するか?)
(この連射力、相当弄くって射撃に力を入れたと見て間違いない。物量質量攻撃をされたら危険だな。あの生成機で何を作り出してくるかはわからないが、さっきの戦いで健朴さん並の錬度は持っていないのがわかっている。最悪じゃない)
両者分析──しかし情報が多いのは加藤側、先程の戦いで米山は気分良く戦い過ぎた。底が知れてしまっている。
盾に加えてステップで左右に移動、ガトリングの圧が途切れると同時に前へと距離を詰める。加藤の運動能力を表現できるルプトゥーラ。まさに高機動型に恥じない性能と言えるだろう。
対してアテナはどっしりと構えて迎え撃つのが得意とされる射撃型──
操縦者に求められるは運動能力よりも分析能力と処理速度。米山は指導教官を行っているだけあり非常に高い能力を持っている。
ルプトゥーラが攻めきれない射撃で押さえ込んでいる。
「そのまま撃ち続けたって勝ち目は無いぞ」
「有利な戦いを押し付けることこそ正義だ! 何時までその盾でふせぎ切れるかな?」
ルプトゥーラの盾はUCI製の盾。半無限に続くガトリングの嵐。いつかは砕かれ大ダメージを負う事になる。
しかし、先に悲鳴をあげたのは──
「弾が──!?」
「その瞬間を待っていた!」
オーバーヒート、安全装置が起動した。これは試合、操縦者の安全も守られる。さっきの戦いの熱が抜けきっていないのに加えて連射を続けていた。生成炉をフル稼働させ続ければ炉は問題なくともパイプにも負荷がかかる。
この好機を逃すわけも無く盾を放り、一気に飛び掛る。そう、文字通り高く跳び上がり着地と同時に殴りかかる。
「なんとも野蛮な動きだ!?」
「これが醍醐味だろう! 機体の力を最大限に活用してこそだ!」
攻撃は回避されるが二の手三の手と拳を振り下ろす。米山も負けじと近距離戦へと切り替え、両者の手と手が組み合いロックアップ状態。
人間同士では到底出すことの出来ない地面が削れて砕ける音が響き、金属の肉体が剛力によって重厚な異音を奏でる。
お互い操縦者、ここでどれだけ力を振り絞ろうがスーツの出力に影響がでるわけではない。それでも男達は血管を浮き上がらせて全身で全力を出しながら戦っていた。このスーツは己の身体の一部だと認識して。
「バカめ! 出力勝負になればアテナが上だ! 馬力が違うんだ馬力が──! このまま青天晒してしまいな!」
重量も含めれば負けるはずが無い。米山は得意顔で力を入れ続けるが押し倒すことができずその表情は少しずつ崩れ始める。むしろ押されてさえいる──スペック差を覆す現実に戸惑いを隠せなくなっていた。
「馬力が……何だって? こいつは初体験だが思った以上に生身の技術ってのは再現されるらしいな。となればもっとできることが多そうだ!」
「くっ──!! テクニックなら私も負けておらんわ!!」
アテナの左腕、組み合った状態のまま生成機を起動させUCIを発生させる。それは粘菌のように伸びてルプトゥーラの腕部に纏わりつこうとした。その狙いを理解した加藤はすぐに押し合いを切り上げ距離を取る。
「そのまま固めたかったがまぁいい。このまま次を生成すればいいだけだ!」
地面にUCIを振り積ませ歪な球体から始まり、出来の悪い歪なガラス細工を思わせる大型の塊が完成する。精々メイスといえる無骨な武器。
見てくれはともかくスーツを大きく超えるそれはまごうことなき凶器の圧力。
「なんて酷いデザインだ……健朴さんが見たら呆れてぶっ倒れることになるんじゃないか? 機能の可能性に対して使用者の頭が足りていない──」
「その減らず口もここまで、威力さえ足りれば充分、これでしまいだぁっ!!」
人では持てずともパワードスーツなら可能。
機体の高さを優に超える大塊を大きく振りかぶり、唸るような風の音を鳴らしながら振り下ろされる。
対してルプトゥーラ、回避に移行せず左腕を緩く前に出し右腕を引く。それは空手の構えパワードスーツながらも伝わってきた。
右腕の発射口、そこにUCIが溜め込まれある形を形成した。
完成した物は太くて長い、筒の先端から尖った一部がはみ出ていた。
それで対応できるのか? そう頭に過ぎる程に質量差は歴然。
迫り来る大塊に向かって拳を放つ──と同時に発射口がスパークし。
「ファイアッ──」
杭が発射された──鳥肌が立ちそうな押しつぶされて砕かれる高音が鳴ると同時に大塊に食い込むと一方的に破壊した。
周囲には細かく割れたガラス片のようなUCIがばら撒かれ光を乱反射させた。
「まさか──パイルバンカー……!」
米山は余りの破壊力に呆気にとられた。
使いきりUCI製の巨大杭。それを電気的な加速により打ち出す。
しかし、高速で打ち出せばその分崩壊速度も跳ね上がる。故に強度と威力を保持できるのは1mが限界の超近距離兵器。対人においてはもちろん使用不可である。
それぐらいのことは知識として知っていたし動画でも見た。それでも、間近で体験しスーツ越しにでも伝わる衝撃と音が規格外の威力だと理解させられた。生は違う、身体の奥底にまで響くものだと。
「コイツが直撃すれば一撃ダウンだ! さぁ、どうする教官さん?」
「ふん……当たればの話だろう──」
声が震えた、それは両方共だった。
使う方も躊躇するレベル、当て所を間違えればパワードスーツ越しでも命を奪いかねないのではないか? それだけの圧があった。
数秒の停滞──
両名の間で危険だと判断、『敗北』か『死』。スポーツの範疇で収まらない可能性が隣り合わせ。
だが、次弾は生成済み。勝利するためにはコレが必須だとも本能で理解していた。
「この程度で私は負けるわけにはいかん! 東条さんの期待に応える為にもあの人の右腕で居続ける為にもあの方の害となす者は全て排除する。排除せねばならんのだ──!」
覚悟を口にし己の心を昂らせる。
クールダウンが終わったガトリングが再び回転を始め乱射の唸り声を上げる。その直前──
ルプトゥーラからパイルバンカーが放たれる。射程距離が大きく離れていると米山は理解していても右腕を向けられた時点で恐怖が刺激され、攻撃よりも回避が優先される。
発射された杭は1mを超えても形を保っている。山なりに飛び迫って来る。速度が明らかに落ちている。
それは米山の恐怖が、決死の状況が生み出した走馬灯の一瞬では無い。
当たったら終わりだと警戒が身体を動かしてしまった。
「フェイクだ──」
加藤は冷静に事を運んだ。
アテナの移動先に先回りするかのように一気に加速し距離を詰める。
左腕で右腕を掴み、右手を腹部に当てる。
金属がぶつかり合い、内部機器が軋む悲鳴が響く。
そして、放った杭は緩やかに川原に着弾し無作為に跳ねて水の中へ落ちて流れていく。
「まさか……速度を著しく落として放ったな!? あたかも遠距離攻撃が可能だと見せつけるかのように!?」
「そして、これで終わりだ──」
寸勁──達也には放つことは無かった妙技。
パワードスーツは人体の動きをトレースして動く、気や筋肉が存在しない金属の身体。人体を流動的に動かし威力を作り出す機構は再現できていない。
それは一オフィシャルの機体に当てはまる常識──接触状態で放たれる拳、それは事故を起こしたかのような大きな音を立ててパワードスーツを吹き飛ばす。
「ば、バカなぁあああああ!?」
アテナの耐久値が一気に0となり川原の石を巻き上げるようにダウンし青天井を見上げてしまう。
「動け──! 動くんだアテナ! まだ負けてはいない! 立つんだ! 立ち上がれ! 期待を裏切ってはならない!」
悲痛な叫びが辺りに響く。
どれだけ力を入れて操作をしてもピクリとも動かない、肉体動けども機体はそのまま不動を貫きアイライトも力無く消灯し機能停止のアラームが無慈悲にも機内に響いた。
「バカ……な……特別なアテナが……市販に毛が生えた程度の装備のパワードスーツに負けるなんて……」
特別な武装ではなく素手、さらに操縦者の技術力が勝敗を決したと言えるだろう。
パワードスーツではなく人の差で決着が付くという言い訳の効かない敗北が身に染みて理解してしまった。
だが、ルプトゥーラも無傷では終わらなかった。
右腕からはエラー表示が鳴り止まない。力なくダランと垂れ下がり、修理を余儀なくされたのが第三者の目からも明らかになっていた。
「勝負アリ! 勝者──ルプトゥーラ!!」
それでも、達成感に満ちた顔で勝者の証として左腕を天に上げた。
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