表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/33

第十四話 敵? 味方? 来たぞWWP委員会

 ようやく目当ての少女に近づくことができた。

 正直言って状況で判断したとしか言いようが無かったがギャルの少女が「はっちゃん」つまり八のあだ名を言っているからおそらく正解だろう。

 東雲さんがハッキングに成功しリストのコピーに成功、顔写真も入手しそれを頼りに早朝動いていたがまるで見当たらなかった。それもそのはずだ、同じ所は髪色と輪郭程度──顔色、表情、化粧、何よりオーラも違っていた。断じて年の所為ではない彼女の変化が大きかったと認めるしかない。

 そして、騒ぎの音を聞いて何とかここまでやってこられた。機関銃の異音が聞こえなかったらまだ俺は見当違いな所を走っていただろう。

 ──さて、この感動して良いかわからない空気の中に入るのは相当躊躇してしまう。

 年頃の女の子とは俺の理解に及ばない行為で納得するのかと困惑してしまう。東雲さんにもあのような時期があったのかと考えてしまうが、それを本人聞いたら冷たい眼で睨みつけられるだろう。

 しかし、居場所がバレてしまえば元の子も無いのだからと覚悟を決めて庭へと踏み入れる。


「いいや、そこまでにしとくべきだ。ここから先は俺達が引き継ごう──」

「誰だ!?」


 反応が早いな。ほのぼのした空気に微塵も酔っていない鋭い視線ですぐにスレイプニルを構えて俺を捉えてやがる。この顔は何時でも撃つ男の顔。非殺傷のトイだからか迷いがないのか? まぁいい──


「俺はWWP委員会だ。その子、鬼灯八を保護するように言われている」

「WWPって……さっきオニーサンが言ってたヤツ? それに保護……? もしかしてあの予想がマジだってこと?」


 ギャルは口に手を当てて目を見開いてわかりやすく驚いているポーズをとっているな。

 どうやら、何かしら予想はしていたらしい。

 ただ、青年はトイを下すことをせず敵意を向けた瞳は変わらない。何がそこまで俺を敵視するのだろうか?


「保護だなんて口にしたけど油断はしない方が良い……そもそも本物なのか? クソ暑い中黒いラバースーツみたいなの来て怪しさしかないぞ!」

「ああ……こんな格好をしているが本物さ。今は任務の服ってことだ」


 納得した……確かにWWP委員会として活動する時は基本的にスーツ。場所によってはわかりやすさ重視で委員会のロゴマークが入ったジャージを着ている。

 こんなステレオタイプなスパイ映画みたいな格好はしない──


「それにWWP委員会は公的な組織のはず、何かしら身分を証明する証があるんじゃないのか?」

「一理ある。ちょっと待ってろ──あれ……? こっちか──あっ!?」


 癖となった動きで内ポケットから手帳を取り出そうとしたが入っていない。尻ポケットに入れていたかと探すがどこにも入っていない。「始末書」「処分」その二つが頭に過りどこかに落としてしまったかと一瞬頭の中が真っ白になる。

 最後に見たのは……って──着替えやら脱出やらで宿泊している部屋に置きっぱなしじゃねえか!?

 落としてバレる事態を防ぐためとはいえ完全に頭から抜け落ちてた──


「その慌てよう……やっぱりな──逃げようレイさん。出口はあそこだけなのか?」

「塀を乗り越えれば出ようと思えばどこからでも行けるっしょ」

「何とか少しは時間を稼ぐ、その間に逃げてくれ。見てくれはともかくこの人只者じゃない──」

「……わかった。死亡フラグにならないことを祈っとく」


 判断が早い──

 迷わず動き出したな。しかし、俺だって流石にはいそうですかと見送るバカじゃない。

 とりあえずケガをさせない程度に抑えて──


「……」


 おっ、この男……一丁前に右手一本でスレイプニル構えて──言うだけあって良い目をしてこっちを狙ってやがる。

 だが悪いな青年、こちとら修羅の世界で生きてきたんだ。本物の銃弾を相手に避けることだって求められている。メジャー程度な腕前じゃかすりも──

 いや、何だこの身体の芯からゲッソリしていくような感覚は!? まるで外したら自分の命が消えるかのような覚悟や執念が伝わってくる──当たる!? 体重移動、力配分、フェイントだって入れてるのに未来予知しているのかってレベルで俺が踏み込もうとした先にスレイプニルのが完全に俺を捉えてる!? なんだこのプレッシャー、堅気の人間が出せるのか!? このままじゃヘッドショットもされかねん!?

 意識をこの男に向けないと万が一がある。

 来る──!

 放たれる銃弾、意識の隙間を縫うかのような射撃──回避が間に合わない。

 完璧に前に伸びる瞬間の右足に直撃する──正確に的確に俺の動きを止める一撃。見事だと言わざるを得ない。

 だが──俺達を相手にそれは意味は無い。弾は服に当たると同時に吸い込まれるように溶ける。足に込めた力を一気に解放し狙いを男に切り替える。

 二、三と肩と腹部にも直撃するが効かない。だが──本当に恐ろしいなこの男、ここまで当ててくる奴は記憶に無い。


「見事だ青年」


 素直に称賛の言葉が洩れた。


「ぐっ!? 直撃させたのに──!?」

「そして、足を止めろ二人共っ! この男がどうなってもいいのか?」

「お兄さん!?」


 男の右腕を左手で抑え右拳は腹に添える。

 俺がWWP委員会である以上一般流通レベルのUCIは通用はしない。

 ただ、二人を止めるよりもこの男を抑えることを優先してしまうとは……それも酒の味に慣れてないような若者に有言実行させられるなんて。もしも特別製で撃たれていたら完全に負けていた。

 このまま抵抗しないでくれよ……拳を通すような真似はしたくない。


「まさか、対UCIスーツ──こんなのが用意できるなんて本物のWWP委員会──なのか?」

「モノホンなん……?」

「証明する物を忘れたのは俺の落ち度だがな。とにかく俺は話し合いに来た、これは不本意でしかない」


 なんとか塀を飛び越える寸前で止まってくれた。

 その様子に攻撃の構えを解いて解放する。ただ少女達の警戒は解けておらず塀の前で待機している。

 ふぅ……さっきよりかはまし、とにかくこれで交渉ができる。


「どうしてはっちゃんを追っかけるし!」

「……鬼灯八さん、取引をしませんか? 貴方の願いを叶える対価としてめぶき園の裏の顔、ワープリ訓練兵だったことを話してください」

「ムシすんなし~!」


 地団太踏むまでとは賑やかな子だ。

 とにかく今は時間が惜しい、ここに来るまでの間のどかな田舎町に似つかわしくない殺気立った連中が首をふっていた。逃がすためとはいえあの煙は他の連中にとっても位置を知らせる狼煙となったはずだ、何時めぶき園の連中がここに押し寄せてくるのかわからない。


「わたしの願い!?」

「はい、あなたの家出には恐らく理由がある。突発的ではない強い理由が──だから大人二人が力を貸している。違うか?」

「ぐぅの音も出ないっしょ……」


 二人は確かにという表情で頷く。


「……わたしは、お母さんに会うために家出しました。訓練でトップの成績を沢山取っても会いに行くことも電話をかけることも許されないんです。このままじゃずっと会えないまま別の家族に引き取られるかもしれないって思ったら……もう無理矢理にでも会いに行くしか無いって」


 少女ながらも中々の行動派だ。それに決意に満ちた瞳。絶対にやりきるのが想像できる。

 恐らくは突発的で杜撰な家出計画がこっちのギャルによって補完された。昨晩全く見つからなかったのもこのギャルが力を貸したから。こんなちょっと派手な子がいたら見つからない訳がないからな。


「わかった。その願いを叶えるのに力を貸そう。ただし、こちらの願いを叶える事ができるか質問させてもらう」

「はい──!」

「君はあのめぶき園でワープリで勝利するための訓練兵であったか? そして、大勢がワープリを励めるような訓練場の場所を知っているか?」


 言葉を選ぶように少し考え込む仕草をすると。


「さっきも訓練兵って言ってましたけどわたしは訓練生です。ワープリで勝つためなのは合っています。後、訓練場は知っていますよ外からじゃわかりませんけど、めぶき園よりも大きいです」

「充分だ──力を貸すに値する情報だ」


 安堵の溜息が小さく口が零れる。どうやら健朴さんの予想は大当たりと言ったところだ。

 彼女は俺達の求める情報を全て知っているとみて間違いない! この子の証言で介入することができる。


「やったねはっちゃん! これで確実にお母さんに会えるね!」


 ギャルの方は喜んだ様子を見せているが八は複雑そうな顔をしている。


「一ついいですか? WWP委員会はどうしてめぶき園に来たのですか?」

「我々WWP委員会が来たのは『子供兵士計画』を止めるため。以前よりマークはしていたが状況証拠しか得られておらず、確実な証拠が必要だった。「兵士を育成する訓練場のような施設」もしくは「兵士となった児童の証言」これらが無ければかわされるだけだからな」


 嘘は吐いていない。

 この計画を止めることは最重要。


「やりぃっ! やっぱ、正義の集団だったんだ──!」

「──ちょっと待ってください! どうしてWWP委員会は止めようとするんですか? もしそれを止めたらわたし達はどうなっちゃうんですか!? わたしは、お母さんの援助をしてくれるって条件があって訓練を受けてきました! もし消えたら──それにめぶき園の運営だって……例えお母さんに会わせてくれるといってもわたしは証言できません」

「はっちゃん……」


 思った以上にこの子は聡い。俺達がこの任務を完璧に達成させた後のことを聞いてくるとは。しかし、これは悪い方向に流れ始めているな……この子だけでなく多くの子供が自分の意志であったり誰かの為で訓練生となった可能性。

 だからこそ計画を止めた瞬間に全てが壊れることを危惧している。

 となればこの子にとって俺達は敵のように見えるはずだ。


「WWP委員会はめぶき園の運営を止めるためにやってきたわけじゃない。保護した児童に対し過剰なまでの訓練行為を止めるために来たんだ。誰かを捕まえたり罰するために来たのではなく軌道を修正するために来た」

「なるほど……WWP委員会は警察組織とは違う。犯罪行為を見たからって逮捕できるわけじゃない。というよりその計画はどんな罪に当たるのかもわからないな……とにかく計画を止めることが成功したとしても、めぶき園の運営自体に変化は無いってことですか?」

「その通りだ。ワープリ部分のコンサルティングだと思ってくれていい。訓練場だって正しく使えるようになれば強みになる。今の形は大きく歪んでいるんだ」

「でも、はっちゃんのお母さんの問題は解決した訳じゃないっしょ? ひょっとしたら似たような条件の子供も何人かいるんじゃない? はっちゃん的には無視できないことでしょ?」


 ギャルながらしっかりと八の求める部分を突いて来る!


「……そうです。今のままなら皆が幸せでいられるなら協力はできません」

「八さん……」


 青年は複雑そうな顔している。彼女の置かれている状況が良くないことだとわかってはいるが、口に出せないこともわかっている。そんな顔だ。

 この「()()」自体が嘘。つまり相手そもそも存在しない、必要が無いとすれば憂いは解決する。ただ本当だった場合はその補填をどうするかになる。

 そのままめぶき園に押し付けたいが、恐らく計画が止まった瞬間にスポンサー的な連中は消えるだろう。最終目的を知っている連中にとってはこの計画は保険みたいなものだから。

 どれだけ費用がかかっているかは不明、だが──


「──約束しよう。仮に援助が打ち切られた場合WWP委員会が責任を持って引き継ぐと」

「それは、わたしだけじゃなくて他の皆も助けてくれるってことですよね?」

「もちろんだ」

「はぇ~結構お金持ちな組織なんだね」

「そりゃ世界を股にかける委員会だからな。太っ腹なんだろう」


 ようやく八の表情も明るくなった。やはり踏み込むしか選択肢は無かったか──

 保護者二人はうんうん頷いているかもしれないが余裕綽々じゃあない。金だけを持って不老不死や安心安全を求める連中にとって、俺達は敵に見られる。

 悲しいかな? 世界にとって公平な立場で動くということは生まれた国に対して弓を引くことがあってしまうなんて。

本作を読んでいただきありがとうございます!

「続きが気になる」「興味を惹かれた」と思われたら


ブックマークの追加や【★★★★★】の評価

感想等をお送り頂けると非常に喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ