第2次ラペルリ攻防戦 第3章 サブマリン・キラー対海狼(U-ボート)
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
蒼い海の中を鉄の狼がゆっくりと進み、群島諸国に向かっている。
U-3532は浅瀬でできる限りの深度をとり、航行していた。
主力部隊はすでに、ラペルリ連合王国に向かって出港している。
潜水艦隊は、その主力部隊を支援し、群島諸国の艦船を叩く第2次ラペルリ連合王国侵攻軍に組み込まれた。
ラペルリ連合王国が戦場になれば、群島諸国連合軍は兵員、物資を満載した輸送船団を派遣するだろう。
その船団を1隻残らず沈め、海上補給路をたつのが、潜水艦隊に与えられた任務だ。
ドイツ海軍のお家芸であるウルフ・パック(群狼作戦)を行うのである。
ウルフ・パックとは、3隻以上の潜水艦が獲物である輸送船団を包囲し、魚雷を一斉射する作戦だ。第2次大戦時ドイツ海軍はこのウルフ・パックで数1000隻以上の輸送船を海の藻屑にした。
ウルフ・パックは、アメリカ海軍も採用し、日本の輸送船を次々に撃沈し、補給路を叩いた。
そのため、作戦ではなく、群狼戦術と呼ばれ、かなり評価されたし、恐れられた。
この世界の海軍力では、潜水艦を撃沈する能力はない。ここでウルフ・パックを行われれば群島諸国連合軍は大打撃を受けただろう。しかし、世の中はそううまく行かない。彼らを狩る者たちが作戦を開始するのだ。
「ソナー。反応はないか?」
U-3532の艦長(大尉)がナンと言う果物にかぶりつきながら、ソナー員に問うた。
「今のところ、ソナーには何の反応もありません」
「そうか・・・」
艦長は天井を見上げながら、ナンにかぶりつく。
「群島諸国につく、日本海軍は我々の想像を絶する対潜探知と兵器を持っているそうだ。今、発見されたら、一たまりもないぞ」
「とにかく、この浅瀬を抜けなければ、狙いの的です」
副長が心配そうにつぶやいた。
「そうだな。仕方ないこの海域を一刻も早く抜ける。副長、機関の速度を上げろ」
「はっ!」
副長が復唱し、機関の速度を上げた。
UボートXXI型は第2次大戦中のUボート中では最新鋭の高速潜水艦だ。当時としては驚愕するぐらいの速度で、なんと潜航時でも17ノットもでるのだ。
さらにバッテリーも長持ちし、潜航時では速力6ノットで航行した場合、48時間も潜っていられるそうだ。
いくら水中速度が速いと言っても、それでいい訳がない。海水を掻き回す以上は、その分、スクリュー音が大きくなる。
だが、浅瀬に長くいるのはそれこそ潜水艦にとっては命取りだ。発見される確率が高まる。
この艦長も、そういった事から、危険をおかしても速度を上げる事にした。
「浅瀬を通過後、深度100まで潜航」
「ヤー(はい)」
その時、ソナー員が悲鳴を上げた。
「着水音!」
「爆雷か?」
艦長が問う。
「いえ。ソナー音を捕捉。魚雷です!」
「艦長。日本海軍の新型対潜魚雷です!」
副長が悲鳴を上げる。
「機関全開!右舵一杯!」
艦長の指示に、U-3532は出せる最大速度で右へ舵をきる。
U-3532に接近するのは07式垂直発射魚雷投射ロケット・12式魚雷であることは彼らにわかるはずがない。
12式魚雷の最大速度の前に第2次大戦中の潜水艦が回避できるはずがない。
「命中します。艦長!」
ソナー員の報告に艦長は死を覚悟し、目を閉じた。
次の瞬間U-3532の艦体にすさまじい衝撃が襲い、艦は真っ二つになった。乗員たちのほとんどは衝撃波等で身体を引き裂かれ、絶命した。
海面が盛り上がったかと思うと、巨大な水柱が上がった。潜水艦の残骸が一緒に飛び散った。
12式魚雷の直撃で、潜水艦に乗る乗員のほとんどは衝撃波で即死しただろう。
原子力潜水艦を一撃で轟沈させるほどの威力があるのだから、第2次大戦中の潜水艦など一たまりもないだろう。
爆心地付近の海上は悲惨な光景だった。
潜水艦の浮遊物が海上に広がっている。
「・・・・・・」
ヘリ搭載護衛艦[ふそう]から発艦したSH-60Kのパイロットたちは無言で見ていた。
第2統合任務隊のSH-60K[ホワイトバード2]は、非武装の状態で撃墜された。
同僚の、無念の死に復讐心に駆られるなというほうが無理というものだろう。
相手が、Uボートなら躊躇いを感じない。
彼らの目には、冷たい殺意が宿っていた。
「航空士、敵の動きは?まだもう1隻がいたはずだ」
その中でもっとも冷たい口調で問うた機長の月川1等海尉に、隣にいる副操縦士は背中に冷たい汗が流れた。
「爆発の雑音が激しく今はほとんど探知不能です」
航空士の1人である2等海曹がソナーを調整しながら答えた。
月川のSH-60Kはアスロックの爆心地から少し離れた海域で、ディッピグ・ソナーを海中に下ろして対潜捜索していた。
SH-60Kは、ディッピグ・ソナーという吊り下げ式の小型ソナーを装備している。ディッピグ・ソナーとは、ヘリが海上でホバリングしながら、ソナーを海中に沈め、潜水艦を探知、捜索するものだ。
探知距離が短いのが難点だが、自在に空を移動できるのと複数のヘリで捜索するため、その難点を補う事ができる。
最新の防音素材で建造されている元の世界の原子力潜水艦や潜水艦に比べて、第2次世界大戦中の潜水艦等を発見するのは難しくない。
[ふそう]から発艦したSH-60Kは3機、爆心地の海域を囲むように対潜捜索をしている。
潜水艦を発見すれば、ただちに[ふそう]に連絡し、アスロックが発射される事になっている。
「やや雑音が晴れてきました・・・」
航空士が全神経を耳に集中させる。
「目標探知!」
航空士が位置、深度、速度を報告する。
「よし、[ふそう]に連絡!」
月川の指示で、副操縦士が[ふそう]に報告する。
(沢野。たぶんお前は望んでいないだろうが、仇は必ずとる)
彼は心の中で、死んだ友人に言った。
「機長。[ふそう]より、アスロック発射、まもなく到着するとの事です」
副操縦士からの報告に月川は顔を向けた、アスロックが来る方を見た。
飛翔中のアスロックが見えた。人としての意思のない殺戮の矢が、いっさいの躊躇なく目標の海域上空へと向かっていく。
目標海域上空へと着くと、ロケットエンジンが切り離され、パラシュートが開傘される。そのまま、落下し、海上に着水する。
魚雷が起動し、アクティブ・ソナーかパッシヴ・ソナーを使用し、目標を追跡する。
潜水艦のソナー員が悲鳴を上げている事が想像つく。
魚雷が潜水艦に突撃すると、装甲を貫き大爆発した。
また、海上に巨大な水柱が立ち上がり、潜水艦の乗組員の命を奪った。
2つ目の爆心地に潜水艦の浮遊物が浮く。
その光景を見た後、月川はディッピグ・ソナーを引き上げ、別の海域を捜索する事に決めた。
情報ではナチス・ドイツ海軍の潜水艦は3隻以上の艦隊編成で行動している。ということはまだ近くにもう1隻がいる事になる。
爆発の影響でソナーがしばらく使えないから、磁気探知機で捜索するしかない。
「航空士。わずかな反応も逃すなよ」
「任せてください」
月川の機は2度目の爆心地からさほど離れていない海域を捜索することにした。恐らく3隻目の潜水艦は見つからないように機関を止め、鮃のように海底にへばりついているだろう。彼はそう予測した。
「機長。磁気探知機に反応」
「よし!」
月川はにやりと笑った。
絶好の、獲物、だ。
彼のSH-60Kには12式魚雷を装備している。
「魚雷投下用意」
月川の指示で航空士が敵潜のデータを入力する。
「データ入力完了。投下用意よし」
航空士の報告に月川は一瞬だけ、敵潜が潜んでいる海上を見た。
「投下!」
「投下!」
SH-60Kから12式魚雷が切り離され、海上に着水した。
魚雷が起動し、鮃状態の潜水艦を襲う
3つ目の水柱が立ち上った。
[ふそう]のCICでは、ソナー員が耳をすませて、海中を探っていた。
「ソナー。敵潜を探知したか?」
艦長の高上直良1等海佐はスクリーンを見ながら、問うた。
「いえ、艦長」
ソナー員である真杉1等海曹は静かに答えた。
「しかし、艦長。本当に敵潜は来るのですか?」
副長の浅生2等海佐が尋ねる。
「来る、敵潜は必ず、ここを通る」
高上は100パーセントの確信があるように言った。
もともと彼は汎用護衛艦の艦長であり、環太平洋合同演習、派米演習でも次々に潜水艦、原潜を見つけ、撃沈判定を出した。
真杉も高上が汎用護衛艦の艦長だった時もソナー員だった。彼も90パーセント以上の確率で原潜、潜水艦を発見した。
「艦長!」
真杉が声を上げた。
「見つけたか?」
「はい。潜水艦1、まっすぐこちらに向かってきます」
真杉からの報告に高上は砲雷長に振り向き、告げた。
「砲雷長。アスロック発射用意!」
「しかし、艦長」
砲雷長の飯崎夏美3等海佐は躊躇いの声を漏らす。
「彼らは安全な海溝に避難しているだけです。もはや戦意もないでしょう。降伏を進めてはいかがですか?」
高上はスクリーンに顔を戻した。
「降伏を進めるために、潜水艦に近づけば間違いなく魚雷を撃たれる。敵潜はまだ潜航中だ。つまり戦う意思があるとういことだ」
「ま、まさか・・・」
高上は彼女に向き、続けた。
「一瞬の同情は、100人の仲間の命が消える。戦場の掟を忘れるな、殺れる時には徹底的に殺る」
高上の脳裏に、米海軍軍人の言葉が過ぎる。彼も飯崎のように考えていた時があった。しかし、その米海軍軍人はこう言った。
「それは平時のモラルだ」
高上は再度命じた。
「アスロック発射用意!」
「りょ、了解!アスロック発射用意」
飯崎が叫ぶと、水雷長が応じた。
「目標敵潜水艦。発射弾数1つ、データ入力開始」
「目標データ入力」
水雷を担当する海曹がデータを入力する。
「目標のデータ入力完了!発射用意よし」
「発射を許可する」
高上の許可に水雷長が発射命令を出す。
「アスロック発射用意。撃ェェェ!」
[ふそう]の後部甲板に設置されている垂直式ミサイル発射装置(VLS)が開放され、セル内に収容されている07式垂直発射魚雷投射ロケットの轟音と衝撃を出しながら、空高く飛翔した。
目標上空までロケットブースターで飛翔し、その後はロケットエンジンを切り離し、海上に着水し、敵潜に突っ込む。
魚雷は前型の97式魚雷と同様、ポンプジェット推進方式のため、一般的な魚雷とは大きく違う。生物に例えるなら烏賊と同じである。
高度な追尾・索敵システムと高速推進であるため、1度捕捉されれば逃げる事等、不可能。
「目標命中まで10秒!・・・後5、4、3、2、1、スタンバイ」
水雷士が本来の職種である樹村3尉が、カウントダウンを行う。
「激発、今!」
弾頭の12式魚雷は敵潜水艦に直撃し、血祭りに上げる。
12式魚雷の爆発により、その海上は巨大な水柱が上がった。
その光景を艦橋横のウィングで見張り員たちが確認した。
「魚雷の爆発を確認!」
中年の海曹長が双眼鏡を覗きながら報告した。
「海上の状況は?」
CICの問いに、海曹長は息を呑んだ。
「多数の浮遊物を確認!生存者は確認できません」
「「「・・・・・・」」」
艦橋の見張り員たちは言葉を失った。
たった1回の魚雷攻撃で、60人ぐらい乗る潜水艦を仕留めた。彼らにとっては死は一瞬の事だろう。
「戦争というのは惨いものだな・・・」
海曹長がぽつりとつぶやく。
シャランク島近海に闇に紛れて、砂浜に近づく、小舟が数隻。
彼らはミレニアム帝国軍のコマンド部隊に相当する部隊に所属する者たちだ。
彼らの姿を見れば、人でない事がわかる。
獣人、エルフといった種族で編成された混成部隊だった。
この島に投入された理由は、シャランク島は群島諸国連合軍の戦略拠点であるからだ。各種破壊工作を行い群島諸国連合軍を混乱させるためだ。
「まもなく、島に上陸する。いいか、忘れるな上陸したら船は破壊する」
混成部隊の指揮官であるダークエルフの若い男・・・若いと言っても50歳は過ぎている彼はフィン。3等臣民である彼らに苗字はない。
「お兄様。まもなく上陸です」
彼の妹であるダークエルフの少女、ミナが上陸地点を慎重に観察しながら、言った。
フィンは部下たちの顔を見回した。
部下たちは、いままで以上にやる気のある目をしていた。
それもそのはずだ。この作戦が成功すれば彼らの部族は全員2等臣民(平民階級)に上げられることになっている。
彼らの船が砂浜に乗り上げると、彼らは背を低くし、船を分解して、砂の中に隠蔽した。
「よし、行くぞ」
フィンが手で合図を出したと同時に、乾いた音が響いた。
「ぐわっ!?」
エルフの男が額から血を噴き出しながら、絶命した。
「レギオン・クーパーだ!伏せろ!」
フィンが妹を庇いながら身をひそめる。
部下たちも伏せるが、レギオン・クーパーは正確な狙いで部下たちの命を奪っていく。
フィンは音のする方に顔を上げる。
前方の森から光が見えた。
次の瞬間、とてつもない苦痛と共に、頭の中が破裂した感覚に襲われた。
フィンは即死した。ミナの悲鳴が砂浜に響くが、彼には聞こえる事はなかった・・・
「射撃やめ」
狙撃小隊長の指示を受けて、高井直哉3等陸尉は部下たちに射撃中止の指示を出した。
「こちら第1班。目標が沈黙した事を確認するが、かまわないか?」
高井の具申に、小隊長は一瞬黙った。
「第1班。許可する。十分に注意しろ」
小隊長から許可を受けると、高井は手で合図を出し、砂浜に前進した。
暗視装置JGVS-V8を装着した高井たちがそれぞれの自動小銃を構えて慎重に進む。
それを、ぶち壊すように非武装で堂々とついてくる1人。
「なんでついてくる?」
高井は傍らにいる少女・・・もとい大年増・・・に尋ねた。
「妾はお主の側妻なのだから、当然であろう。正妻のためにもお主を守らねばならぬ」
「誰が、正妻だって?」
「紫苑じゃ。お主とて、彼女の気持ちに気づいておろうに・・・野暮な事を申すでない」
「はいはい」
諦め半分で応じた。
コマンド部隊の亡骸のもとへ行くと、1人の少女が短剣を持って、覆い被さった死体を跳ね除けて、襲い掛かってきた。
「遅いわ」
カーラが目にも止まらない速さで、少女に鉄拳をお見舞いし、気絶させる。
つ、強えぇぇぇ、高井以外の隊員たちが唖然となる。
「疲れた・・・」
ガブッ、カーラが高井の首に噛みつき、血を吸った。
「な、なんでだぁぁぁ!」
高井は絶叫する。
「うむ。お主の血が一番元気が出る」
カーラは満足しながら、うなずく。
「俺の血は健康ドリンクか!!」
その光景を見た隊員たちの顔から音をたてて血の気が引いた。
指定された撤収ポイントで、ヘリの迎えを待ちながら高井は煙草を口に咥えた。
「あれ・・・ライターは・・・」
どうやら落としたらしい。
カチッ、という音で火が差し出された。
「・・・多聞?」
来島3曹がいつものいい笑顔で立っていた。
「悪い、助かる」
火をつけながら、礼を言った。
「どうだ、1本」
「本当は吸いませんが、頂きます」
来島は笑顔で受け取った。
第2次ラペルリ攻防戦第3章をお読みいただき、ありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は12月10日までを予定しています。




