第2次ラペルリ攻防戦 序章 終わりの始まり
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
某洋。
アメリカ海軍艦隊総軍所属の[オハイオ]級原子力弾道ミサイル潜水艦[アラスカ]は司令部からの指令を受信するため、通信ブイを浮上させていた。
「艦長!新たな緊急行動命令受信!世界緊急事態コード5!繰り返します、世界緊急事態コード5!巨大生物及び危険種が蹂躙している国へ、全面核攻撃指令です」
通信士官からの緊張した報告が響く。
「了解。・・・各先任士官は発令所へ、命令を確認する」
壮年の艦長が落ち着いた口調で指示を出す。
艦長以下各先任士官たちは命令文をすばやく黙読した。
「・・・副長、確認したか?」
艦長の言葉に副長は冷や汗をかきながら、うなずく。
先任士官たちの命令文の確認を終えると、艦長は艦内マイクを持った。
「艦長より、達する!大統領命令は最終的に確認された!これより本艦は巨大生物、危険種が蹂躙する国へ、核攻撃を実施する!」
そう言うと艦長はマイクをもとの場所に戻し、ミサイル発射を行う装置に艦のナンバー1とナンバー2。2人しか持たない発射キ―を差し込んだ。
「艦長、やはりもう一度確認されたほうが・・・?」
「・・・ダブルチェックは終了している。これは決定事項だ」
艦長はその後、軍人としての責務と人間としての良心の相反する感情に苛まれるように表情を歪めた。
1990年代まで、潜水艦搭載の核ミサイルの発射権限は各潜水艦の艦長も持っていたが、現在では合衆国大統領のみに委ねられている。
別々の通信で、同時に確認されたのだ。間違いはない。
「・・・我々が攻撃の引き金を引けば、核を保有している全ての国がそれに倣うでしょう・・・もはや、映画や小説の世界の話ではなくなる・・・」
副長の言葉に艦長は神に許しの言葉を述べた。
「神よ、我らの罪を許し給え」
そう言った後、艦長は唇を噛んだ。
どれほど祈っても許されない事はわかっている。それでも祈らずにはいられなかった。
これは、むしろ神が人間に降した罰なのかも知れない・・・傲慢な人類を自分たち自身の手で滅びへと向かわせるための。
「1番発射!!」
艦長の号令で、2つの発射キーを回し、安全装置を解除した。
弾頭ミサイル発射管制室にいる先任士官が発射ボタンを押す。
訓練では何度も体験している。手順は身体が覚えている。
しかし、これは訓練では無い。
艦長は、自分の不運を呪いたかった。
[アラスカ]のトレイデント(DSSLBM)発射管が開放され、トレイデントが撃ち出された。
終わりの始まりだった・・・
中東某国、雲1つ無い青空の下、荒れた大地をゆっくりと数台のトラックが進んで行く。
荷台には大勢の人々が身を寄せ合って座っていた。
ほとんどが女性、子供、老人たちであった。
トラックの周囲を武装した男たちが徒歩で歩いていく。全員が疲れた顔をしていた。
その周辺を警戒しながら、小銃を手にした男女が同行していた。
彼らは服装も装備もバラバラだった。
国連軍、政府軍、民兵、反政府組織、今となっては自分たちがどこに所属していたかは、どうでもいい事だ。
彼らの目的はただ1つ、自分たちが保護した避難民たちを少しでも安全な所へ連れて行くことだ。
そこには、思想の違い、民族の違い、宗教の違いなど関係なかった。
生き抜くためには、そんな下らない事にとらわれる必要はない。
この数ヶ月で、その事を思い知った。
「・・・空はこんなにきれいなのにな・・・」
国連軍のブルーヘルメットを被った兵士がつぶやいた。
地上は地獄だ。
突然現れた怪物の群れに、多くの都市が壊滅した。それが世界規模で起こっている。
すでに国連は空中分解したようなものだ。
「うん・・・?」
空に白い筋が何条も見えた。
「ま・・・まさか!?」
その正体に思い当たった時、周囲は光る闇に包まれた。
抑止の言葉が崩れた・・・
ある人物の言った言葉がある。
あの日の空は、雲1つ無い青だった。あの雲を見るまでは・・・と。
空襲で焼かれた故郷から、親戚の所へ疎開しようとしていた彼は1日の違いで生き残った。
後年、その話を聞いていた彼の娘は、2001年のあの事件の光景をテレビで見た時、周囲が映画のようだと感想をもらす中、こう述べた。
「1945年8月6日の、父の見た空の色も同じだったのだろう」と。
日本国自衛隊第1統合任務艦隊が消滅してから1年が過ぎようとしていた。
第2次ラペルリ攻防戦序章をお読みいただき、ありがとうございます。
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次回の投稿は11月26日を予定しています。




