世界の真実 終章 華燭の典
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
今回の話は1つの出発の話です。
世界の真実篇はこれで終わりです。楽しんでいただきありがとうございます。亡国のレギオンはまだ続きます。
純白のドレスに身を包んだ、ケイリ―はその時を待っていた。
Rimpacで出会った日本人と恋に落ち、人生の伴侶となる事を誓い合った。
自衛官、アメリカ軍、異世界人たちに祝福してもらえるのは何より喜ばしいことだが、心残りは今日の式に1番参列して欲しかった彼女の両親と兄、そして、新郎となる高上直良1等海佐の家族がいない事だ。
ケイリ―は同室にいる、同じく純白のドレスに身を包んだ少女を一瞥した。
オレンジ色がかかった明るい茶髪、名前はハンナだったかな。
そんな事を考えていると、控室のドアからノック音がした。
「どうぞ」
ケイリ―がそう言うと、正装した2人の男が入ってきた。
「艦長。時間です」
「ハンナ。行こうか」
ヴァージンロードで、エスコート役を務めるクリストファー・ロジャース中佐とペトラの父親だ。
ヴァージンロードをケイリ―はクリストファーと腕を組み、ゆっくりと聖壇前まで進んだ。その後ろをハンナと父親が続く。
新郎の横に立つと、4人は聖壇前まで進む、列席している日本人、アメリカ人は讃美歌を斉唱する。
日本語と英語が混ざった讃美歌はなんとも言えないものだ。
アメリカ海軍の牧師は誓いの言葉を読み上げた。
「ナオヨシ・タカガミ、あなたはこの女性と結婚し、夫婦となろうとしております。あなたは、健康なときも、そうでないときも、この人を愛し、この人を敬い、この人を慰め、この人を助け、その命の限りかたく節操を守る事を誓いますか?」
「はい、誓います」
高上の誓いの言葉を聞くと、牧師はケイリ―に向いた。
「ケイリ―・エヴァンズ、あなたはこの男性と結婚し、夫婦となろうとしています。あなたは、健康なときも、そうでないときも、この人を愛し、この人を敬い、この人を慰め、この人を助け、その命の限りかたく節操を守る事を誓いますか?」
「はい、誓います」
ケイリ―は海軍軍人らしい力強い口調で誓った。
続いて、もう1組の浦安賢1等陸尉とハンナの番だ。
ハンナも見た事も聞いた事もない結婚式をケイリ―を手本に、誓いの言葉を言った。
浦安とハンナの誓いを終えると、牧師は次に進み、指輪交換、そして次に。
「ではベールをあげてください。誓いのキスを」
2人の新郎は新婦のベールをめくり、接吻した。
式はつつがなく終了し、高上、ケイリ―、浦安、ハンナは庭に出る。
晴れ渡った空の下、庭には式の参列者と、入りきれなかった者たちが集まっていた。
「「「高上艦長。おめでとうございます!!」」」
ヘリ搭載護衛艦[ふそう]の乗組員たちが祝福する。
「「「キャプテン・エヴァンズ。ご結婚おめでとうございます!!」」」
[フロリダ]の乗組員たちも[ふそう]の乗組員たちに負けずに祝福の声を上げる。
「「「ハンナ。おめでとう!!」」」
ハンナの同僚である女性騎士たちが合唱する。
陸自隊員たちも、「結婚おめでとう」と合唱する。
「キャプテン・エヴァンズ、ハンナさん。ブーケ、ブーケ!」
女性自衛官が2人の新婦に向かって手を振りながら叫ぶ。
彼女たちの目的はただ1つ。
「え?」
意味がわからず、きょとんとするハンナに、ケイリ―が彼女の耳元で理由を教える。
「・・・へえ、そんな言い伝えがあるんですか。それじゃ・・・えいっ!」
ハンナが後ろに向くと、手に持っていたブーケを空に放り投げる。
わぁと女性自衛官、女性アメリカ兵たちが歓声を上げる。駐屯騎士団、異世界人は意味がわからない顔をしている。
放物線を描いたブーケは、流れについていけてない女性騎士の手の中にぽんと収まる。
「おめでとうございます!」
日本人、アメリカ人が黒髪の眼鏡をかけた女性騎士に祝いの言葉を贈る。
「えっ?な、なんのことでしょう?」
彼女は困った表情でつぶやく。
「あら、ご存じないのですか?」
アルシアである。
王女は投げられたブーケの意味を説明する。結婚式で新婦が投げたブーケを受け取った女性は、次の結婚のチャンスが巡ってくるという。
いつも、大人びた表情を崩さないアルシアも今日は歳相応の表情で、ちゃっかりブーケ争奪戦に参加している。
「・・・!?いえ、私は、そんな・・・!!」
たちまちブーケを受け取った女性騎士は頬を赤く染める。
「さあ、皆さん!ブーケはもう1つありますよ!」
女性自衛官の言葉に独身の女性たちがケイリ―に向く。
彼女たちの、ある意味獲物を狙う猛禽類のような表情に、男性自衛官、米兵、騎士たちは全力で引いていた。
ケイリ―はすでに後ろに向いており、ブーケを大きく投げた。
大きく投げられたブーケは女性たちの手をすり抜け、1番起きてはならない事が起きた。
「あ」
初老の男が声を上げた。
投げられたブーケは板垣の手にあった。
場が静まり返る。
「と、父さん!」
板垣都子2等海尉が声を上げる。
「どうして取るの!」
「すまん、つい・・・」
板垣はブーケを娘に差し出す。
「やる」
都子は父からブーケを受け取ると、つぶやいた。
「今度は、私がここで式をあげるのね」
都子の言葉に、1人の海自の士官が顔を赤くした。
「?・・・どういうこと?」
板垣は娘の言った意味がわからず、尋ねた。
「ふふふ」
都子は笑うのであった。
喧噪から少し離れた場所で、3人の女性自衛官が佇んでいた。
3人が3人とも、予想される乱戦に巻き込まれるのを避け、早々に戦術的退却を果たしていた。
「周もブーケ争奪戦に加わればよかったのに・・・」
悪戯っぽい微笑を浮かべて、三枝が言う。
「その前に、お前が結婚しろ。理子」
「あら、有能な首席幕僚がいなくなったら困るのでは?」
「言ってろ」
姉とその友人のいつもの言い合いをしり目に、妹は無表情だった。
「私は結婚する気はありませんから・・・」
「やれやれ・・・エルンスト、といったか・・・けっこういい男じゃないか」
「彼も佐藤と同じで、いい友人です」
相変わらずの妹に姉は肩をすくめた。
世界の真実終章をお読みいただき、ありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
世界の真実篇はこれで終了です。次回からは第2次ラペルリ攻防戦になりますが、その前に番外編と閑話です。
次回もよろしくお願いします。