世界の真実 番外編 ある休日の出来事
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
「来てくださったのですね。ナオユキ様」
夏島の桟橋に降り立った笠谷はそこで彼を待っていた薄い褐色の肌の少女が声をかけた。
「レティシアさんですね?」
長い金髪をポニーテールにし、灰色の瞳、佐藤から聞かされた通りの特徴だった。
「待たせたね、すまない」
笠谷はレティシアに頭を下げた。
「いえ、恐れ多い事です」
彼女は恐縮する。
「では、行きましょう」
レティシアは彼の手を引き、砂浜に向かった。
笠谷とレティシアのデートが始まるのであった。
砂浜には綺麗な蒼い海を眺めるカップルたちがいた。
私服姿の自衛官、女性自衛官が笠谷に気づく。
「おい、ハーレム幕僚だぞ」
「ん?あの褐色のお嬢さんは誰だ?」
「松野ちゃんがいながら、また、女性を作るなんて・・・」
「さっすが、ハーレム幕僚だわ」
男性自衛官は羨ましそうな視線で眺め、女性自衛官は刺すような視線を向ける。
「・・・・・・」
女性警務官(MP)が一瞥する。
「どういうこと?」
笠谷は小声でつぶやく。
「?何か言いました?」
レティシアが首を傾げて、尋ねた。
「いえ、なんでもないよ」
笠谷は笑って答えた。
「そうですか・・・」
レティシアはそう言った後、少し間をあけて、小さな声で言った。
「あの、私、ナオユキ様と一緒に砂浜を歩きたいと思っていたんです」
レティシアは笠谷の腕に絡んでくる。
「あっ!レティシアお姉ちゃんだ」
「本当だ」
「お姉ちゃーん」
小さな子供たちはダークエルフ、獣人、エルフ、ヒト等いろんな種族だった。
夏島の孤児院で暮らしている孤児たちであろう。
シーレーン確保のため、自衛隊と米軍はいくつかの海賊島を制圧した。
その時、海賊たちによって身柄を拘束されていた男女が多数いた。
制圧された後、彼ら、彼女たちは解放されたが、帰る場所のない者たちを全員、フリーダム諸島に受け入れた。
その数、1500。そのうち、4割は15歳未満の子供たちであった。
ノインバス王国とマレーニア女王国は共同出資で運営する孤児院が作られた。
レティシアは飲食店の看板娘と孤児院で子供たちの面倒を見ている。
「レティシアお姉ちゃん!」
白い犬耳と犬耳と同じ色の尻尾を左右に振りながら獣人の幼児が彼女に抱き着いた。
レティシアは優しく微笑みながら受け止めた。
子供たちは笠谷に気づくと、彼女に尋ねた。
「お姉ちゃん。この人だあれ?」
「この方はね、レギオン・クーパーの竜騎士様よ」
レティシアの説明に、子供たちは大はしゃぎした。
「あの、ゴオオオ、ていう、竜に乗る人」
「本物だ、本物だ!」
「騎士さま、僕も、あの、ゴオオオ、ていう、竜に乗れる?」
笠谷は膝をついて、子供たちと目線の高さに合わせて、優しい笑みを浮かべて、告げた。
「しっかり勉強すれば、きっとなれるよ」
笠谷は子供の頭を撫でる。
「んー」
子供は嬉しそうに目を細める。
「騎士さまって、お姉ちゃんの恋人?」
10代のエルフの少女が笠谷とレティシアを交互に見ながら、言った。
「「え?」」
2人の驚きの声が重なる。
「あー、息がぴったりー恋人だ」
子供たちの言葉にレティシアは頬を赤く染め、笠谷は、笑うしかなかった。
[ふそう]の食堂では曹士たちの間で、ある噂が広まっていた。
「・・・樹村3尉に彼女が出来たって、マジ?」
「あの変人の3尉に・・・ウソだろ?」
「俺見た。ダークエルフのお姉さん。しかも、超美人・・・褐色の肌に腰まで伸びた銀髪・・・極め付けはボン、キュ、ボンのナイスバディ!!」
「「「何だとォォォ!!!」」」
彼らが、何故他人の噂話に花を咲かせているのか・・・単に暇なのである。
艦内上映会のDVDも見飽きた今となっては。
「どうやって、そんな美人さんとお知り合いになったんだ?」
「どうやら、来島3佐の紹介らしい」
「え・・・あの人と?そもそもあの人と、どうやって仲良くなったの?」
「変人同士、磁石みたいに引き合ったんじゃない」
等々、勝手に噂されているのを知ってか知らずか、ウキウキと冬島に上陸した樹村を出迎えたのは、エルンストの弟子カガリだった。
「ルクティアは今、取り込み中。だから、代わりに迎えに来た」
「・・・アリガトね・・・」
非常に残念そうな表情で樹村は、礼を言った。
「でも、今日は休日だって聞いてたけど・・・」
「マレーニアの海軍の提督が、来た。だから・・・」
「・・・・・・」
この時、樹村が会った事の無い提督とやらに、食事の邪魔をした奴に感じる以上に殺意を感じたのはここだけの話だ。
「ここは、秘密の塊のような場所。ジエイタイであっても、自由に出入り出来ない」
「・・・わかってるって、エルンストさんのおかげってことはね・・・」
ここ冬島は、元々石油を精製するための施設が作られていたのだが、そのために派遣されてきていた錬金術師たちのうち、幾人かは勝手に定住してしまった。
それらの人々を総括して、エルンストが小規模ながら、工業施設のようなものを作ってしまった(しかも、勝手に)。
造船廠、兵器廠等を中心に何やら怪しげな発明品を製作する工房等々。
オタクの気がある樹村には、けっこう興味深かったりする。
カガリの言葉通り、機密性の高い錬金術の技術を守るため冬島への出入りは許可がいる。
樹村が、ほぼ顔パスで上陸できるのは、弟から事情を聞いた来島が、施設の責任者といっていいエルンストに頼み込んだためだった。
丁度、兵器廠に着いた時に数人の男たちとすれ違った。
「あれ?確かあの人・・・」
一目で軍人とわかる雰囲気の集団の中の1人に見覚えがあった。
ケ“号作戦の時に、観戦武官の1人として[ふそう]に乗艦していた人物だ。
一瞬、その黒髪黒目の人物と目があったが、それだけだった。
「ヨシヒコ殿」
「あ、ルクティアさん、お仕事は終わったんですか?」
「はい、お迎えに行けなくてごめんなさい」
ルクティアを見たとたんに、樹村の機嫌は好転した。
「よかったら、お昼を食べにいきます?スイーツが女性自衛官に人気の店があるんですよ」
「行く!!」
なぜか、カガリが賛成した。
「・・・・・・」
ルクティアとオマケ付きのデートに出かけるちょっぴり不幸な樹村だった。
ちなみに樹村が、この時出会った軍人の名を知るのはもう少したってからの事である。
世界の真実番外編をお読みいただき、ありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回は閑話になりますので、ご了承ください。
次回の投稿は今月の16日を予定しています。




