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亡国のレギオン  作者: 高井高雄
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逆襲 第7章 軍隊と自衛隊

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

[ながと]のパイロット待機室では、スクランブルを報せる赤いランプが点灯し、ブザー音が鳴り響く。

 パイロット待機室で待機していた海自のパイロットが待機室を飛び出し、飛行甲板に出た。

 飛行甲板で駐機していたAV-8J[ハリアー2]に飛び乗った。

[ながと]の艦載機は海自が運用するAV-8Jである。

 これまで海自の固定翼機の護衛は空自に頼っていた。しかし、近年では海自だけの出動が多くなり、その際に空自機の護衛ができず、丸腰で出動しなければならなくなった。さらに陸自との共同作戦も増えた。

 そこで、海自はAV-8B[ハリアー2]を調達し、国産化したのがAV-8Jだ。

 AV-8Jの導入により、航空護衛艦を洋上基地として、内陸部に侵入し、陸上部隊の近接航空支援を行たり、空自が出動できない状況下でも、海自の固定翼機の護衛を可能にした。

 しかし、性能上では空自の戦闘機には及ばない。

 2機のAV-8Jは[ながと]を発艦し、空高く飛翔していった。

 2機のAV-8Jを指揮するのは木曾(きそ)(かわ)()(おり)3等海佐だ。

 彼女は航学を首席卒業し、P-3Cのパイロットになった後、海自がAV-8Bを導入する話を耳にすると、すぐにヘリパイの資格を取った。

 海自がAV-8Bを導入すると、彼女が1番にテストパイロットとして選抜された。

 彼女の実力はかなりのもので、空自との合同演習では飛行教導隊のF-15J1機を撃墜判定にした。

 木曾川の空戦能力は海自1である。

「シースネーク1(ワン)より、[ながと]へ、現在、シースネーク2(ツー)と共に目標へ接近中。目標島上空の状況を知らせよ」

 木曾川は[ながと]の管制官に尋ねる。

 ちなみにシースネーク1が木曾川のコール・サインだ。

「[ながと]より、シースネーク1へこちらの対空レーダーには10機のアンノウン(国籍不明機)を捕捉している。司令から許可が出た。アンノウンを敵性と判断する。攻撃及び破壊措置行動を許可する」

「ラジャ。アンノウンを撃墜する。・・・シースネーク2、聞いていたわね、高度そのままでAAM(空対空ミサイル)を発射するわ。ついてきなさい」

「ラジャ。ホワイトバード2の仇を討ちましょう」

 シースネーク2から緊張した声で応答があった。



「・・・ホワイトバード2、応答せよ!ホワイトバード2、応答せよ!」

 海自の管制官が何度目かわからない通信をしていた。

 SH-60Kがレーダーからロストして数分が経とうとしていた。

 CICにいる者にとって1分が無限に思える長さであった。

「首席幕僚。戦闘救難隊出動準備完了!」

 通信士が報告する。

「駄目よ、危険すぎます」

 三枝は首を左右に振った。

「なぜですか?ヘリが墜落したのですよ!いっこくも早く、彼らを救出するべきでしょう!」

 声を上げたのは防衛省の文官であった。

 三枝は振り返り、文官の顔を見て言った。

「ただの事故で墜落したのであれば、そうするのですが、これはあきらかに組織的な行動です。これだけではすまないでしょう。恐らく敵の地上部隊が墜落地点に向かっているでしょう」

「では、なおのこと救難隊を送るべきでしょう!戦闘救難隊は敵地で墜落され、脱出したパイロットの救出のため、戦闘訓練を積んでいるのではないですか?」

[ながと]のCICの士官、海曹たちが三枝を振り返る。

「確かに、貴方の言う通り、戦闘救難隊はそれなりの戦闘訓練を積んでいます。しかし、戦闘救難を行う場合、事前の情報収集が不可欠です。敵の勢力、装備等です」

「それなら、航空支援を行えばいいじゃないですか、AV-8Jは対地攻撃が可能なはず、それをすれば救出は可能なはず!」

 文官の提案に、三枝は航空幕僚と顔を見合わせた。

「文官。AV-8Jは対地攻撃は可能です。ですが、こんな事態を想定していなかったので、AV-8Jには対地兵装など装備しておりません」

「対地兵装の装備にどのくらいかかる?それに、対空兵器の使用が確認されている、陸自の空挺団の支援が必要だ」

 水島が口を開いた。

「20分・・・いえ、30分はかかります」

 航空幕僚が腕時計を見ながら言った。

「司令、このような事態を想定していなかったので、今から陸自の空挺団の出動準備をしていては・・・」

 想定していなかった・・・これでは、ただの言い訳だ。今さらながら、水島は自分の判断の甘さに唇を噛んだ。

 CICにいる者たちは、ホワイトバード2の搭乗員たちは絶望的である、と思った。

「し、司令!首席幕僚!」

 突然、通信士が声を上げた。

「なんですか?」

 三枝が問うと、通信士が答える。

「米海軍強襲揚陸艦[ボノム・リシャール]から通信です。至急との事です」

「繋いでくれ」

 水島はそう言うと立ち上がった。

 スクリーンの1つに[ボノム・リシャール]のCICの映像が現れた。そして、米海軍のデジタル迷彩服の男と森林用迷彩服を着た黒人の男が映った。

 短距離限定ではあるが、直通通信回線を使ったテレビ通信である。

 森林迷彩服の男は米海兵隊らしくジャーヘッドの髪型をした中年だ。彼は第33海兵遠征隊指揮官ブライス・ロング大佐(カーネル)である。

 デジタル迷彩服の男の方は第7遠征打撃群司令ジャン・フリードマン少将(リア・アドミラル・ロウアー・ハーフ)だ。

「アドミラル・ミズシマ。我々はすでに出動準備を整えています。貴官からの要請があれば墜落したヘリのパイロットの救出も可能です」

 ジャンが告げる。

「すぐに行けるのですか?」

 三枝が通信に割り込んだ。

「ああ、貴官たちが島の偵察飛行をすると言った時点で歩兵大隊C(チャーリー)中隊に準備をさせていた。[シーナイト]4機、護衛ヘリとして[ヴァイパー]2機をつける。さらに1stSFOD-D(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)も参加する。救出作戦には十分だ」

 最初から、こうなる事を予想していたようだ。

 さすがはアメリカ軍と言ったところか。

 特にブライスは、湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争にも参戦し、多くの実績を残している。

 だからこそ新編成された第33海兵遠征隊の指揮官に任命された。

 三枝は上官に振り向いた。

「司令。米海兵隊にホワイトバード2の捜索、着陸地点及び墜落地点の確保、警戒にあたってもらう事を具申します」

 水島は目を閉じた。

 今まで対応が、全て後手に回った。ならば今すべき事は、最善と思える事を即実行に移す事だ。

 そして、はっきりとうなずいた。

少将(リア・アドミラル・ロウァー・ハーフ)、部下をよろしくお願いします」

 映像に向かって頭を下げる。

 少将(リア・アドミラル・ロウァー・ハーフ)は、まさか自分より上位者である水島海将補(米軍では2つ星少将と同等)が、頭を下げてまで要請するとは思わなかったのか、少し驚いた表情になったが、うなずいて了解の意を示した。

 頭を上げると、水島は幕僚全員を見回し、指示を出す。

「AV-8Jに連絡、制空権を確保し海兵隊の救出作戦を支援させろ。増援として対地兵装を装備させたAV-8Jをスクランブル準備させ待機!米軍から要請があればすぐに発艦できるようにしておけ」

「水島司令・・・それは・・・」

 文官が、思わず声を上げかけた。

「今、我々がすべき事は、我々の代わりに敵地に赴く海兵隊に、できる限り最大の支援を行う事だ、違うか?」

「・・・・・・」

「三枝、陸自に支援要請!空挺部隊を出動待機させろ!!」

「わかりました」

「私が責任をとる!!必要な時に、必要な事を、必要に応じて行え!!」

 この時、水島は自衛官としてではなく、軍人としての選択をした。



[ボノム・リシャール]の飛行甲板で第33海兵遠征隊歩兵大隊所属のC中隊の兵士たちが整列していた。

「アルファ島に墜落した自衛隊ヘリ搭乗員の救出作戦である。いいか!アメリカ軍は決して友軍を見捨てない!救出ポイントで武装勢力との遭遇の際には武力の使用を許可する!」

「「「サー、イエス・サー」」」

 中隊長の訓示にM4A1、M16A5、MINIMI等を武装した海兵隊員が声を上げる。

「総員搭乗!」

 中隊長の号令でC中隊の海兵たちがCH-46Eに乗り込んでいた。

「第2小隊搭乗しました」

 小隊付2等軍曹(スタッフ・サージャント)の報告を受けると、小隊長のカズオ・キノシタ少尉(セカンド・ルテナント)はうなずき、座席に腰掛けた。

 いつもの事だから、不安は心の底に仕舞っておく。

「いったい、どうなってるのでしょう・・・あのドラゴンみたいな生き物は・・・」

 震える声で、2等兵(プライベート)が話かけてきた。

「わからん、今は余計な事を考えずに、任務に集中しろ」

 キノシタがそう言った時、彼の乗るCH-46Eが浮き上がった。

 4機のCH-46Eと2機のAH-1Zが[ボノム・リシャール]から発艦し、すぐにMH-60L(DAP)が飛び上がる。

 カズオは窓から海上を眺めながら、中隊長の説明を思い出していた。

 自衛隊側も制空権確保のためにAV-8Jを出動させ、戦闘救難隊を乗せたUH-60Jも待機させているそうだ。

 カズオは心中で微笑んだ。

 アメリカ人でも同じ民族を助けにいくのは悪い感じはしない。

 生まれた国は違えど、日本人である事には変わりない。



 いったい、どのくらい気を失っていたのだろうか。

 身体のあちこちが痛みに襲われ、一気に意識が戻ってきた。

 長瀬川は苦痛に顔をしかめながら、目を開けた。

 視界に入ったのはそこらじゅうにひびや割れた液晶画面や、ガラスが割れた正面キャノピーだ。

 ヘリは、コックピットを地面にめり込ませるように墜落していた。

 彼女の脳裏に、ヘリを必死に操縦していた機長の顔が浮かぶ。

 自分が助かったのは奇跡であるが、その奇跡を起こしたのは沢野の技能だ。

「き、機長・・・」

 長瀬川は機長席に振り向く。

「ひぃっ!?」

 そこには変わり果てた機長の姿があった。

 割れた、風防ガラスの破片をもろに浴びたのか、血みどろの凄惨な姿に、息を飲む。

 長瀬川は少し身体を動かそうとしたが、・・・

「うっ」

 右足から激痛が走る。

 彼女は痛みに耐えて、シートベルトを外す。

 沢野の脈を確認する。脈はなかった。

「そ、そんな・・・」

 長瀬川は絶望した。

「だ、誰か!?」

 彼女は叫んだ。

「・・・・・・」

 答える者はいない。

 長瀬川はキャビンを見る。しかし、キャビン内には2人の死体が転がっているだけだ。

「あ、あ・・・」

 生存者は自分1人だけのようだ。

 長瀬川はフライトヘルメットを脱ぐと、空を見上げた。

 上空には自分たちをこんな姿にした怪物が数匹、旋回している。

「・・・ザザッ・・・ザ・・・ザッ・・・」

 雑音が聞こえる。

「こちらホワイトバード2!聞こえますか!?応答してください!」

 長瀬川がコックピットに設置されている通信マイクを持って叫んだ。

「・・・・・・」

 雑音しか聞こえなかった。

 長瀬川はなんども呼びかけるが、応答する事はなかった。

 完全に故障していた。

 その時、銃声が響いた。

 ヘリが銃弾を弾き返す金属音が響く。

「ひぃぃぃ!」

 長瀬川は頭を低めた。

 そして、プラスチック製の黒い箱を取り出し、中から9ミリ拳銃を取った。

 敵地での飛行任務が多くなる海自パイロットの護身のために最近では9ミリ拳銃が装備されるようになった。

 長瀬川は慌てて9ミリ拳銃の遊底を引き、初弾を薬室に装填する。

 彼女は顔を上げて、銃声がする方に視線を向けた。

 そこには木影から数10人の人影が見えた。

 灰色の鉄帽、黒色の軍服、そして旧式の小銃。

 長瀬川は9ミリ拳銃を構えて、引き金に指をかけた。

「う、うああああ!」

 彼女は叫びながら目をそらし、引き金を絞る。

 当然当たる訳がない。長瀬川にとって、初めてになる人に向けての発砲なのだから。

「うあぁぁぁ!」

 長瀬川は引き金を引き、9ミリ拳銃を発砲し続ける。

 9ミリ拳銃の装弾数は9発。こんな撃ち方じゃ、すぐに尽きる。

 案の定、彼女の拳銃は敵を1人も倒すこともなく、弾が尽きた。

「だ、駄目、私には人を撃てない・・・」

 そう言いながら、長瀬川は拳銃を下ろした。

 その時、上空で複数の爆発音が響いた。

 長瀬川が上空を見上げると、次々と怪物が火の塊と化して墜ちていく。

 遅れて、聞き覚えのある轟音が響く。

 視界に入ったのは、[ながと]に乗艦してからずっと見てきた艦載機が通り過ぎる。

「AV-8J」

 長瀬川は小声でつぶやく。



「サイクロン11(ワンワン)。こちらシースネーク1、上空にいる敵機は排除した。そのまま、突入せよ」

 シースネーク1のコール・サインを持つAV-8Jからの報告を受けて、サイクロン11(ワンワン)のコール・サインを持つAH-1Zの機長は答えた。

「了解。突入する」

 先行するAV-8Jからの情報により、機首をその方向に向けた。

 前方赤外線監視カメラが捉えた画像を見ながら、墜落地点周辺の状況を把握した。

「墜落機周辺に多数の敵兵!交戦許可を!」

「サイクロン11(ワンワン)、12(ワンツー)交戦を許可する!」

[ボノム・リシャール]からの許可を受けると、2機のAH-1Zの機首下に装備されているM197機関砲が火を噴いた。

 コンピューターの自動修正された20ミリM56焼夷榴弾が1個小隊程度の敵兵に浴びせる。

 AH-1ZはAH-64Dには1歩劣るものの、攻撃ヘリとしての能力は高い。

 精密射撃により、武装勢力は沈黙した。

 2機のAH-1Zは墜落地点上空を何度も旋回し、周辺の安全確認を行った。

 4機のCH-46Eは墜落地点の手前で着陸し、海兵たちを吐き出した。

 2機のブラックホークは墜落地点の近くでホバリングし、1stSFOD-Dの隊員たちはファストロープ降下した。

 海兵たちは、ACOG、赤外線レーザーサイト(AN/PEQ2)、フラシュライト、フォアグリップ等を装着したM16A5やM4A1等を武装して展開した。



 森林用迷彩服にボディアーマーを着込んだ第33海兵遠征隊歩兵大隊C中隊の先遣隊と1stSFOD-Dの隊員たちは墜落地点に敵影の姿がない事を確認すると、墜落したSH-60Kを囲むように配置についた。

「海兵隊だ」

 カズオは訛りのない日本語でコックピットにいる生存者の女性パイロットに声をかけた。

「助けに来てくれたのね、よかった」

 若い女性パイロットは安堵した表情を浮かべた。

「生きていてくれて、俺も嬉しいよ。で、状態は?」

「足が折れているみたいで、背中も違和感を感じるわ」

「よし、わかった」

 そう言うとカズオは部下たちに言った。

「彼女をヘリから出す!全周警戒を怠るな!」

「「「サー」」」

 カズオは彼女に手を貸し、コックピットから出した。

 そのまま地面に下ろすと、彼は叫んだ。

「メディック(衛生兵)!メディック(衛生兵)!」

 メディックの腕章をつけた海兵が駆け寄り、救急キットを取り出した。

 報告のためにカズオがその場を離れようとした時、彼女に腕を掴まれた。

「あ、あの、名前を教えて」

「木ノ(キノシタ)一男(カズオ)だ」

「木ノ下さん。私は長瀬川」

 そう言うと、長瀬川は腕を放した。

 カズオはその場を離れ、状況報告した。

「C中隊のセカンド・ルテナント・キノシタ。状況を報告します。パイロット1名死亡、搭乗員2名死亡。生存者1名、現在応急処置中、救急ヘリを要請します」

 そう言って、カズオは墜落したヘリを見る。

 機内から3人の遺体が運び出され、遺体袋に入れられていた。

 そして墜落機にC-4爆薬をセットしていた。

 墜落したSH-60Kは回収が困難であり、敵に鹵獲されないようにするために爆破処理する。

「了解。自衛隊から救難ヘリが向かっている。もうすぐ着く」

「了解」

 司令部からのそう返ってくると通信を終了した。



 空自のUH-60J救難ヘリが着陸し、89式5.56ミリ小銃(折曲式銃床)を装備した戦闘救難隊員たちが負傷した長瀬川を担架に乗せていた頃、周辺を警戒していた1stSFOD-Dの隊員4名が何かを発見した。

「ん?」

 周囲に敵兵の姿はないはずだったが、何かの気配を感じる。

 そう、あの茂みの向こうだ。

「・・・・・・・」

 M4A1を構えて、1等軍曹(サージャント・ファースト・クラス)はゆっくりと茂みに近づいた。

「うおぉぉぉ・・・!!」

 叫び声と共に小さな影が、飛びかかってきた。

「!!」

 とっさに引き金を引きかけて、相手が子供だとわかると躊躇した。

 ザスッという音とともに、太ももに痛みを感じた。

 「き・・・大尉(キャプテン)!」

 1等軍曹(サージャント・ファースト・クラス)が叫び全員が、即座にM4A1を構える。

 しかし、相手が15歳未満の子供とわかると1stSFOD-Dの1人の隊員が突っ込んできた少年の短剣を、M4A1で弾き飛ばし、近接戦闘術で組み伏せた。

「チクショウ!!放せ!!」

 叫び声をあげて、もがく少年は身体中傷だらけだった。

大尉(キャプテン)!人が倒れています!!」

 グレイアム・フォスター大尉(キャプテン)は、理解した。近くにはAV-8Jに撃墜されたであろう、怪物の残骸がある。おそらく、奇跡的に助かったそれの、騎乗者だろう。

「そういう事か・・・」

 1つつぶやいて、少年に向き直る。

「隊長に手をだすな!悪魔め!!」

 まだ幼さの残る少年に、目線を合わせる。

「我々は、悪魔ではない。アメリカ軍だ。君と君の隊長を助けたい・・・おとなしくしてくれないか?」

「あめりか・・・なんだそれは・・・お前たちは、竜騎士団を全滅させた、悪魔の仲間と同じ魔道具を持ってるじゃないか!?」

「・・・竜騎士?・・・魔道具?」

 少年の言う意味がわからないが、このまま押し問答をしていては、もう1人の容態が心配だ。

 大尉(キャプテン)は、1等軍曹サージャント・ファーストクラスの手当てをしていた、衛生兵(メディック)に目配せをした。

 衛生兵(メディック)はそれを理解し、救急キットから注射器を取り出すと、少年の腕に有無を言わさず突き立てた。

「・・・・・・」

 強制的に少年を眠らせて、倒れている人物の元へ向かう。

 20代と思われる青年で、少年と同じ皮製の防具をつけている。

「いったい、ここはどこなんだ?」

 どう考えても、今時、映画の世界でもない限り、こんな格好はしないだろう。

 それに、AH-1Zが殲滅した敵は、第2次大戦時のドイツ軍だった。

「・・・・・・・」

 自分たちは、映画の世界に迷い込んだのか・・・それとも・・・

 今は考えても仕方がない。

大尉(キャプテン)は部下に指示を出し、青年と少年を担架に乗せて空自のUH-60Jに搬送した。

「おい!重傷者が2人いる!」

 日本語が話せる1stSFOD-Dの曹長(マスターサージャント)が叫んだ。

 戦闘救難隊の指揮官がその重傷者を見た時、冷たい表情になった。

 彼の部下たちも冷ややかなものであった。中には殺意のこもった視線を向ける者もいた。

「我々の仲間を殺した連中ですよ!」

 指揮官はそう冷たく英語で言った。

「だからなんだ。負傷兵だぞ!負傷兵に敵も味方もない!」

 曹長(マスター・サージャント)は怒鳴るように叫んだ。

「貴方がたは仲間を失った事などがないから、そういう事が言えるんです!」

 指揮官は負けじと言い返した。

「なっ!」

「貴様!」

 指揮官の聞き捨てならない言葉に、1stSFOD-Dの隊員たちの頭のネジが飛んだ。

「待て」

 グレイアムが手を上げて、部下たちを止めた。

「いいか、平和ボケども」

 グレイアムは威勢のある声で静かに吐き捨てた。

「仲間を失って、辛いなど悲しいなど、それは苦痛でもなんでもない」

 空自の隊員たちの視線が大尉(キャプテン)に集中する。

「本当の苦痛はな、大切な者を失ってもなんとも思わなくなることだ」

「・・・・・・」

 この言葉に指揮官たちは言葉を失った。

「軍人なら、戦う事ができない敵兵士を救うことも軍人として当然の事だ。それができないというのならお前たちは殺人犯よりも劣る!」

 これが、戦争をしている軍隊と戦争をしてない軍隊の差というものだ。戦場は合法的な組織殺戮を行い合うところだ。兵士たちの心には、人を殺したという事が刻まれる。だからこそ、人命を救う事も躊躇わない。

 それを偽善と呼ぶ者もいる事は確かだが・・・

「・・・わかりました。その負傷兵を搬送します」

 指揮官はそう言って、UH-60Jのキャビンに収容した。

 この行動をどうとるかは人それぞれであろう。

 逆襲第7章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は今月の20日までを予定しています。

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