ラペルリ奪還 番外編 軍人と兵士
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
[しれとこ]後部の通称、暴露甲板と呼ばれる通路で高井はいた。
高井は沈みゆく太陽を眺めながら、胸ポケットをまさぐる。
胸ポケットから1枚の写真を取り出す。
写真には、ハンヴィーをバックに4人の米海兵隊員と高井が写っていた。
「1人で夕陽を眺めているなんて、寂しいね」
背後からの声に高井は振り返ることなく、彼女の名を呼んだ。
「南場1尉」
「これ飲む?」
南場の言葉に高井は振り返った。彼女の両手には2本の缶コーヒーがあった。
「いただこう」
高井は彼女からブラックコーヒーを受け取り、「ありがとう」と礼を言った。
南場は彼の隣に立つと、砂糖とミルクが入った缶コーヒーのプルタブを開ける。
「珍しいな」
「何が?」
「いつもはブラックコーヒーを飲んでいるのに、今は甘いコーヒーを飲んでいる」
高井の言葉に南場は苦笑した。
「今日は悩み相談が多くて、ちょっと疲れたの」
彼女の言葉に高井は納得した。
南場1尉は連隊内では女性自衛官の姉のような存在で、かなり慕われている。そのため、よく相談を持ち掛けられるのだ。
「高井君なら、なんて答えた?」
高井は南場に顔を向けた。
「ある女性自衛官がね。人を撃った事をとても後悔しているの。人の命を救うはずの私たちが、どうして人を殺すのか、て」
高井は一瞬噴き出しそうになった、が耐えた。
「なんて答える?」
「それが俺たちの仕事だからだ・・・人を殺すのが兵士と軍人の責務だからだ」
高井の解答に南場は「割り切れ、て言うの?」と聞いた。
「そうだな。1尉だって、人を撃っただろう。その時、心の奥底では、やった、と仕事の達成感があったはず」
「・・・・・・」
高井はコーヒーを飲み、本音を口にした。
「俺からすれば、その悩みが理解できない。兵士や軍人は人を殺すのが仕事だ、その覚悟もなく制服を着ているのか。自分が殺した事に後悔する暇があったら、殺した相手の顔をしっかり覚える事だ。なぜなら、殺された者は決して殺した相手の顔を忘れないと思え」
「厳しい言葉ね」
南場は高井の顔を見ながら言った。
「1つ聞いていい?」
「なんだ?」
「兵士と軍人の違いって何?」
南場の言葉に、高井は目を伏せた。そして、説明した。
久松にも来島にも説明しなかった事だが自衛官として模範的な2人には多分答えは出せないかもしれないと、心の隅では思っていた。
答えを見つけるには実戦を元に自分で考えて出すしかない。
高井の説明に南場は黙って聞いていた。
「高井君は、どっちなの?」
高井は苦笑した。
「軍人だろうな・・・」
「そう」
南場は缶コーヒーを飲む。
「1尉はどっちだ?」
「私?・・・私は、自衛官よ」
南場の解答に高井は納得したかのようにうなずいた。
「先輩、コーヒー買って来ました・・・て、あっ!?」
来島3曹が両手に缶コーヒーを持って現れた、南場1尉の姿を認め慌てて敬礼をする。
「そんなにきっちりしなくていいわよ、今は・・・」
「お~ま~え~、何べん言えばわかるんだ~、敬語は使うなと言ってるだろうが!!」
ゴツッ!!という音とともに高井の鉄拳が炸裂した。
「イッタ~!!だから、先輩って言ってますよ、後輩が先輩に敬語を使うのは当然じゃないですか」
「ド阿呆!!ここが戦場なら俺は今頃、敵のスナイパーに的にされとるわ!!」
「これ以上は無理なんです。本当は自分としては、3尉を先輩って呼ぶのもかなり
キツ゚いんです」
「だから階級を言うな!!!」
2人の会話に南場は吹き出しそうになるのを抑えながら、心中で思う。
なんだかんだで、この2人は最高のコンビなのかもと。
ラペルリ奪還番外編をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回は救出篇です。よろしくお願いします。