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亡国のレギオン  作者: 高井高雄
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救出 序章 残された者たち

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 ラペルリ奪還篇をお読みいただき、誠にありがとうございます。

 新章突入です。お楽しみください。

 本序章は変更修正いたしました。

  第1統合任務艦隊が謎の消滅をしてから、1ヶ月が経とうとしていた。



「なぜです!!?」

 ダンッと、机を叩き怒りと焦燥感を全身ににじませて、練習艦隊首席幕僚の水島要みずしまかなめ1等海佐は、自分の上官である司令官の海将補を睨んだ。

「何度も言わせないでくれ・・・今回の件は最重要機密だ。君もそれは理解しているはずだ」

「・・・家族にすら、伏せなければならない程の機密ですか・・・それで、納得する者が何人います?・・・某国からの核攻撃?・・・そんなアホな理由を信じるバカがどこにいます?」

 水島の言葉に海将補は半ば、うんざりするように、ため息をついた。

 彼女の気持ちはわからないでもない。しかし、組織というもの・・・特に国家というものに属している以上、そういう個人的感情を踏み潰さなければならない事もあるのだ。

「とにかく、この話はこれで終わりだ。それに、再来週から南米への遠洋練習航海の実施が予定されている、その準備もある、こんな些細な事にかまっている暇などない・・・第1統合任務艦隊については、海自と米海軍、海保が合同で捜索を行っている、それに任せるしかあるまい」

「・・・些細な・・・事ですか・・・」

 水島の声にこもった、殺気に一瞬海将補はたじろいだ。

 それは、ほんの一瞬だった。1つ息をついて水島は、姿勢を正し10度の敬礼をした。

「失礼しました。職務に戻ります」

 司令室を出て行こうとする水島を呼び止めた。

「言っておくが、これ以上問題を起こすと庇いきれんぞ。下手をすれば懲戒免職もありうる・・・忘れるな」

 心配しての言葉だと、わかっていても答える気にはなれなかった。



 廊下を歩きながら、個人用の携帯の画面を見る。あれから、これが癖になってしまった。

「・・・・・・?」

 最近、めったに入る事のない新着メールが入っていた。

 1言、「連絡をください」と書いてあった。

 差出人の名前には記憶があった。

[松野奈美]・・・あの日横須賀基地で会った少女だ。

 彼女の姉が第1統合任務艦隊の旗艦[やまと]に乗艦していると言っていた。

「すまない・・・私にも何もわからないんだ・・・」

 小さな声で、画面に詫びるしか出来なかった。

 


 大西洋。

 アメリカ海軍艦隊総軍所属の[オハイオ]級巡航ミサイル原子力潜水艦3番艦[フロリダ]は目的地に向かい航行中であった。

[フロリダ]から前方3000には、[バージニア]級攻撃型原子力潜水艦[ノースダコタ]がいる。

[フロリダ]の士官公室では士官全員が集まり、会食していた。

[オハイオ]級はその特性上他の原潜と違い、艦長は中佐ではなく、空母等の艦長同様の大佐があてられる。

 この[フロリダ]も例外はない。しかし、他の[オハイオ]級とはあきらかに異なる事がある。

 それはこの艦の艦長が女性であることだ。

 さらに驚くべきことはその年齢だ。なんと36歳という若さだ。

 男性でさえ[オハイオ]級の艦長になるには40過ぎが普通である。

 その若さで艦長になったのは、彼女の家系が影響しているのだろう。祖父はベトナム戦争で戦いぬいた海軍航空隊の士官。父親は湾岸戦争を経験し、海軍中将で退役し、現副大統領兼上院議長。兄は現役海軍少将、第2艦隊空母打撃群司令。

 彼女はそんな家系に恥じる事もない成績を残した。

 彼女の名はケイリ―・エヴァンズ大佐である。

 ケイリ―はビーフシチューをスプーンにすくい口に入れた。

 一言も喋らず、ただ食事を楽しんでいた。

「ソナーより艦長へ、移動物体を探知しました」

 ソナー室から緊迫した声が士官公室に報告が上がった。

 ソナー担当員は4人いるが、いま当直しているのはもっとも信頼の厚いベテランのコリンズ兵曹長だ。

「鯨か?」

 副長のクリストファー・ロジャース中佐が問う。

 クリストファーはケイリ―と逆に、階級のわりには歳をとりすぎている。海軍上層部からは「仮に大佐に昇進することはあってもそれは定年祝いに昇進させてもらうようなもの」と言われている。

「ネガティブ(いいえ)」

 コリンズが即答する。

「発令所に行くわ。詳しい事はそこで聞くから」

 ケイリ―が立ち上がり、アメリカ海軍のデジタル迷彩柄のハットを被り、士官公室を出た。

 副長と当直士官たちがそれに続く。

 発令所に着くとケイリ―はマイクを持ち、ソナー室に言った。

「目標は?」

「鯨にしては速すぎます」

「もっとはっきり報告しなさい。コリンズ!」

 はっきりしない報告に、ケイリ―は叫ぶ。

「100ノット以上は出ています。本艦まで5マイルを切りました」

 ソナー室からの報告にケイリ―とクリストファーは顔を見合わせた。

 あり得ない。

 100ノットといえばキロで計算すれば185キロである。

 水の抵抗は空気とは比較にならないほど大きい。そんな水中を100ノットで進むなど地球上に存在するものには存在しない。

 魚雷ですら最大速力50ノットが限度である。

「今、[ノースダコタ]の真横を通過!」

 コリンズが報告したその時だった。ケイリ―たちにあり得ない報告があがった。

「なっ!?[ノースダコタ]が消滅!」

 ケイリ―たちは耳を疑った。

 一瞬、ソナーの故障か、コリンズの勘違いかと思ったが、すぐに打消し彼女が最優先すべき事をした。

「回避行動!機関全速、アップトリム最大、面舵一杯!!」

「機関全速!アップトリム最大、面舵一杯!!」

 クリストファーが復唱し、操舵員が操作する。

「間に合いません!!」

 コリンズの悲鳴が響く。

「衝撃に備えろ!」

 クリストファーの指示がとぶ。

 ただちに艦内全域に警報ブザーが鳴り響く。

「150、100、50、通過します!」

 ソナーからの報告の後、[フロリダ]がぐらりと揺れた。

 水中排水量1万8750トンの巨体を揺らすことができるのは海底火山の爆発によるものなどきわめて大きな衝撃波に限られる。

 だが、[フロリダ]はそれだけでは済まなかった。

 突然、原子炉以外の電子機器がすべて停止した。

 ケイリ―は何かを感じた。まるで音速を超えたような・・・


 救出序章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は8月2日を予定しています。

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