第16話 忘れられていたあいつが
すっかり忘れ去っていた。
今日、オニグリの干し貝柱が届いた。むしろ、送りつけられて来た、と言うべきか。送料が潮干狩り委員会持ちだったので助かったけれども、5つのダンボールに分けられた重量54キログラムが、帰宅した僕を待っていた。そして、当然のように隣のチェリコ先輩に送られて来た20キロの干し貝柱も僕の元にやって来た。総重量74キログラム。
どうしよう、これ。
去年は確かオニグリの大きさが全体的に小振りだったし、チェリコ先輩はもらわなかったので30キロくらいだったが、記憶にある限り、知っている限りの人間に配りまくって、二ヶ月くらい干し貝柱のだしの味のごはんしか食べなかったような気がする。
はっきり言って、かなり迷惑だ。お祭りの興奮状態も手伝ってありがたくいただいてしまったが、こんな時間経って忘れた頃にこんな大量に送りつけられてくるなんて。
会社のみんなも、たぶん少しくらいはもらってくれるだろうけれども、去年の惨劇を覚えているはずなので一人頭5キロはもらってもらいたいが、難しいだろう。
とりあえず早速ひじきと油揚げと貝柱の炊き込みごはんを作ってみた。わかめとねぎを浮かべたお吸い物も。まあ、そりゃあ、おいしいけれども。少なくとも残り73キロと800グラムも残っている。
体格のいい成人男性まるまる一人分の肉塊が僕の部屋にダンボールに詰められて転がっている。ご丁寧に一個200グラムくらいの拳大の比較的使いやすい大きさにカットしてあったのがせめてもの救いか。もしこれが貝柱の姿そのまんまだったら、どうやって解体すればよかったのだろうか。ほんの少し、バラバラ殺人事件の犯人の気持ちが理解できた。でも、単純に考えて、塊があと369個ある。1日1個使ったとして、おそらく来年の潮干狩りも参加するだろうから、これから僕の人生で貝柱を欠かす日はないのかもしれない。
なんとなく部屋が貝柱臭くなってきたような気さえする。
会社のみんなになんとか一人2キロをノルマにもらってもらったとして、残り57キロと800グラム。貝柱の料理はチェリコ先輩にも強制的に消費してもらうとしても、何日かかるんだ、この貝柱が消えてなくなるまで。
とにかくまず会社のみんなには強制的に分配するとして、アパートの他の住人、蒸気飛行愛好会のみんな、「からから」のマリカマナカ姉妹、フウさんにも送りつけてみよう。
あとは母さんにも送ってみるか。元気しているのかな、あの人は。いや、そもそも、今はどこの森の中にいるのだろうか?




