第二章 九月一日
九月は、まだ夏の名残を捨てきれない雨の気配とともにやってくる。新しい教室、新しい席、まだ名前も知らない隣人。けれどその日、隣に座ったのは、茶楼の雨音の中で一度だけ出会った、金髪の少年だった。二人はまだ知らない。この席がこれから長く続くこと、そして、すぐ隣にいるということが、いちばん近くて、いちばん遠い距離になることを。
九月一日。
林慕斯は鞄を背負い、渋々といった足取りで教室へ入っていった。九月の初めの曇天が窓辺に広がり、教室の灯りはまだついていない。灰色がかった光が机の上に落ちて、乾ききっていない水の膜のようだった。彼は窓際の席を選んで座った。窓の隙間から風が入り込み、彼は身震いした。制服の上着のファスナーが開いていたことに、ようやく気づいた。彼はゆっくりとファスナーを閉め、さっきまで空を見ていたことを誰にも気づかれないようにした。昨夜はあまり眠れなかった。夢の中ではずっと茶楼の雨音がしていた。目が覚めたときには、雨が止んだことだけを覚えていた。どうして急にあの人の夢を見たのか、彼にはわからなかった。
教室はだんだん埋まっていったが、隣の席はずっと空いていた。彼は気もそぞろで、新しい本のページの端を指でいじり、角を巻いては伸ばした。扉がもう一度鳴り、湿った土の匂いを運ぶ風が入ってきた。彼は思わず顔を上げ、鞄を背負った人がこちらへ歩いてくるのを見た。
金髪で、自分より少し背が高い。二人の視線が宙でぶつかった。
齐然は足を止めた。ここで彼に会うとは思っていなかったようだった。彼はミネラルウォーターのボトルを片手に持ち、一瞬立ち止まり、それから靴の先でそっと慕斯の机の脚を叩いた。
「Anyone sitting here?」(ここ、誰か座ってる?)
慕斯は首を振った。齐然は彼の隣に座った。肘は少し距離を置いていて、触れてはいないのに、温度だけが伝わってくるようだった。
「你怎麼會在這間學校?」(どうしてこの学校に?)
「My dad got transferred to the branch here. 你呢?」(父がここの支社に転任になったんだ。君は?)
「我一直在這間學校啊。」(僕はずっとこの学校だよ。)
慕斯は思わず口にした。すぐに、自分が少し急ぎすぎたと思って、頬が熱くなった。彼は慌ててうつむき、机の中を整理するふりをした。
齐然は何も言わなかった。数秒してから、低く笑った。とても短く、一枚の葉が水に落ちて、ごく小さな波紋だけを残したような笑い方だった。慕斯の耳はさらに熱くなった。
後ろの席で二人の女子生徒がずっと小声で話していた。そのうちの一人が急に話を止め、肘で隣を突いて、前の方を顎で示した。もう一人が顔を上げてちらりと見て、口元を押さえて笑った。何も言わなかった。慕斯は気づかなかった。齐然は気づいたようだったが、ただ鞄を机の端に寄せて、慕斯に少し近づいただけだった。
担任が入ってきて出席を取った。眼鏡をかけたイギリス人男性で、「齐然」と読むときの発音がひどく変だった。「齐」を「クイ」、「然」を「ラン」と読んだ。後ろの席の誰かが小声で繰り返して笑った。
齐然は手を挙げた。「Here.」(はい。)
慕斯はうつむいて、肩を震わせていた。齐然が横目で彼を見て、低い声で訊いた。「笑什麼?」(何笑ってる?)
「奎蘭。」(クイラン。)
「你再笑,我就跟老師說我的名字是林慕斯。」(これ以上笑ったら、先生に名前は林慕斯だって言うからな。)
慕斯はすぐに笑うのをやめ、彼を睨んだ。齐然は口元を少し曲げて、視線を戻した。二人の距離はさっきまでとても近かった。慕斯が彼の体から漂う、紅茶のような、洗剤のような、ごく淡い匂いを感じ取れるほどに。彼は少し横にずれた。椅子の脚が床で小さく鳴った。
さっきの女子生徒二人はまた目配せをした。一人がノートに何かを書き、もう一人に押しやった。もう一人は読み終えると、ペンのキャップで彼女をつつき、二人で一緒に笑いをこらえた。
先生が席順を調整した。齐然の鞄が慕斯の隣に移され、二人の机が並べられた。間には細い隙間だけが残った。齐然が座ったとき、膝がうっかり慕斯の膝に触れた。二人とも一瞬止まった。齐然はすぐには離れなかった。制服のズボン越しに、その温度がはっきりと伝わってきた。慕斯も動かなかった。彼は鉛筆を探すふりをして、机の中をしばらく探ったが、何も見つからなかった。結局、齐然がそのミネラルウォーターのボトルを二人の机の間に置いた。ボトルの水滴が慕斯の手の甲に触れた。
「Yours.」(君の。)
「I didn't say I wanted it.」(欲しいなんて言ってない。)
「Your lips are dry.」(唇、乾いてる。)
慕斯は思わず唇を舐め、耳の付け根がまた熱くなった。彼はボトルを少し押し戻し、齐然はまた少し押し返した。ボトルの底が机の上を静かに擦り、ごく小さな音を立てた。最後に慕斯はそれを机の中にしまい、小声で言った。「哪有這種說法。」(そんなのありかよ。)
齐然には彼の口癖がわからず、首をかしげて彼を見た。慕斯は彼を見ず、耳だけを彼に向けていた。齐然は面白いと思ったようで、それ以上追及しなかった。
さっきの女子生徒二人がまた寄り集まった。一人が息だけで何かを言い、もう一人が首を振って「シー」の仕草をした。慕斯は「cute」という言葉をかすかに聞き、振り返った。彼女たちはすぐにうつむいて本をめくり、とても真剣にめくった。
一時間目は数学だった。先生が黒板に問題を書き連ね、教室にはチョークの音だけが残った。慕斯は問題を見つめたが、頭はあまり働かなかった。彼はこっそり横目を使い、齐然が片手で顎を支え、もう片方の手でペンを回しているのを見た。金髪が少し垂れて、眉と目の半分を隠していた。齐然が急に振り向き、ちょうど彼の視線を捕らえた。
慕斯は勢いよくうつむき、ペン先が紙の上で歪んだ線を引いた。
「Stuck?」(詰まった?)
「Who says.」(誰が。)
「Then write.」(じゃあ書いて。)
慕斯はペンのキャップを噛み、二歩書いて止まった。齐然は笑わず、自分の下書き用紙を二人の間に押しやり、指先で三歩目のところを指した。彼の指は長く、爪はきれいに整えられていた。慕斯は問題を見て、その指を見て、最後に小声で言った。「我知道了。」(わかった。)
齐然は紙を引き戻し、手の甲が慕斯の手の甲をかすめた。とても軽く、偶然のように。慕斯はしかし、手を机の下に引っ込めて、ぎゅっと握った。
前に座る男子生徒が振り返って消しゴムを借りた。慕斯は消しゴムを渡した。その男子は「Thanks」と言い、それから齐然をちらりと見て、慕斯に訊いた。「You two know each other?」(二人、知り合い?)
慕斯が口を開く前に、齐然が先に答えた。「We speak Chinese.」(僕ら、中国語を話すんだ。)
その男子は「ああ」と言って、前を向いた。慕斯は齐然を見た。齐然も彼を見て、低い声で言った。「這樣他們就聽不懂了。」(これなら聞かれないだろ。)
「你故意的?」(わざと?)
「你不覺得方便嗎。」(便利だと思わない?)
慕斯は何も言わなかったが、否定もしなかった。消しゴムを借りた男子は前を向いた後、隣の席の者に小声で何かを言った。隣の者はこちらをちらりと見て、笑った。齐然が目を上げると、その二人はすぐに姿勢を正した。
休み時間、廊下は人でいっぱいだった。慕斯は水を汲みに行き、齐然がその後ろについた。給水機の前は混んでいて、二人は肩が触れ合うほどに押された。そばで数人の男子生徒が話していた。話すのが速く、慕斯は半分聞いたところで意識が逸れた。齐然が急に身をかがめ、彼の耳元に近づいて言った。「They're saying you're short.」(君のこと、チビって言ってる。)
慕斯は一瞬固まり、顔を上げた。「Really?」(本当?)
「No. But they are looking at you.」(嘘。でも本当に見てる。)
慕斯は彼を踏みつけようとしたが、齐然は一歩先に避けた。慕斯は背が低く、人にぶつかりそうになった。齐然が手を伸ばして彼の肩を支えた。手のひらが制服の上着越しに押さえられ、とても穩やかだった。慕斯が顔を上げ、齐然がちょうど見下ろし、二人の距離が一気に近くなった。
「看路。」(前、見ろよ。)
「我看路了。」(見てる。)
「你剛才差點撞到人。」(さっき人にぶつかりそうだった。)
「那是別人撞我。」(ぶつかってきたんだよ。)
齐然は言い争わず、ただ手を彼の肩から離した。離れるとき、指先が彼の肩の線に沿って少しだけ滑った。まるでうまくコントロールできなかったかのように。慕斯は肩の半分が固くなり、齐然が離れてから、ようやくゆっくり息を吐いた。コップの水が溢れ、指にかかった。彼は慌てて蛇口を閉めた。
廊下の向こうから、さっきの女子生徒二人がちょうど通りかかった。一人が肘で隣を突き、二人は足を緩めて、掲示板を見るふりをした。慕斯と齐然が通り過ぎてから、彼女たちは寄り集まり、一人が口を押さえて笑い、一人が小声で言った。「ほらね、やっぱり」
昼休み、教室のカーテンが引かれた。机に伏せて寝る者もいれば、こっそりスマホを見る者もいた。慕斯は眠れず、机に伏せて、顔を窓の外に向けていた。齐然は彼の隣で、借りてきた漫画をめくっていた。ページをめくる音はとても静かだった。慕斯は目を閉じ、紙の擦れる音を聞いているうちに、不思議と安心してきた。
しばらくして、その音が止んだ。彼は齐然が少しこちらに寄ってきたのを感じた。それから、とても軽い重みが彼の肩に落ちた。慕斯が目を開け、横を向くと、齐然がいつの間にか伏せていて、額を彼の肩に預けていた。金髪が彼の制服の上に流れていた。齐然の呼吸は浅く、本当に眠っているようだった。
慕斯は固まったまま、少しも動けなかった。前に座る誰かが寝返りを打ち、彼はすぐに目を閉じて寝たふりをした。そちらが静まってから、ようやくもう一度目を開け、うつむいて齐然を見た。齐然のまつ毛は長く、伏せると目元をとても静かに隠した。慕斯は数秒見て、それから彼を押しのけなければと思い出した。手を半分まで上げたが、宙で止まった。最後に手を下ろし、そっと自分の服の裾を握った。齐然の額が服越しに彼の肩に触れ、その温度がゆっくりと染み込んできた。慕斯は自分の心臓の音が聞こえた。あまりに大きくて、齐然を起こしてしまいそうだった。
彼は小声で言った。「你倒是睡得挺舒服。」(よく眠れるな。)
齐然は起きなかった。数秒して、彼は曖昧に「うん」と答え、顔を慕斯の肩の窪みに擦り寄せた。慕斯は全身が固くなり、耳は血の流れる音が聞こえるほど熱かった。彼は顔を背け、カーテンの隙間の空を見るふりをした。長いことしてから、ようやく低い声で付け加えた。「就這一次。」(今回だけだから。)
教室の斜め後ろで、誰かがそっとスマホを掲げ、また下ろした。一人の女子生徒が息だけで言った。「撮る?」もう一人が首を振り、小声で返した。「だめだめ、バレすぎる」二人は頭を腕に埋め、肩を震わせていた。
午後の最後の授業は体育だった。校庭の風は教室より強く、慕斯の上着のファスナーがまた緩んだ。彼はうつむいて閉めようとしたが、指が凍えてうまく動かなかった。齐然がそばから歩いてきて、彼の前に立ち、何も言わずに手を伸ばしてファスナーの金具を掴み、一気に上まで上げた。ファスナーが閉まる音はとても軽かったが、齐然の指の関節が彼の顎をかすめた。
慕斯は後ろに引いた。「我自己會。」(自分でできる。)
「你拉了兩次都沒拉上。」(二回も失敗してたじゃん。)
「那是風。」(風のせいだ。)
齐然は彼を見て、目にごく淡い笑みを浮かべた。「嗯,風。」(うん、風。)
そばでクラスメートが集合をかけた。齐然は返事をし、振り返って低い声で言った。「Don't fall behind.」(遅れるなよ。)
「Who's following who.」(誰が誰についてくんだよ。)
「You're following me.」(君が僕についてくるんだ。)
慕斯は反論しようとしたが、言葉が喉元で消えた。齐然はもう向きを変えて校庭へ歩き出し、二歩進んでまた振り返り、顎でトラックの方向を示した。「Run?」(走る?)
「Run.」(走る。)
「Loser buys tea.」(負けた方が紅茶おごり。)
慕斯はすぐについていった。「誰說我要跟你比。」(誰が勝負するって言った。)
「那你跑什麼?」(じゃあ何で走るんだ?)
「我熱身。」(準備運動。)
齐然が笑った。慕斯はそれを聞いて、思わず口元が緩みそうになり、慌てて押さえた。
走っているうちに、二人はいつの間にか列の最後尾に来ていた。前の者たちは遠く離れ、齐然は速度を落として慕斯と並んだ。風が彼らの制服を膨らませ、慕斯は息を切らしながら、齐然が隣で言うのを聞いた。「Your stamina sucks.」(体力ないな。)
「Yours does.」(そっちこそ。)
「I can still talk. You can only pant.」(僕はまだ話せる。君は息だけ。)
慕斯は反論しようとして、口を開けたらまた息が上がった。齐然が手を伸ばし、彼の背中をそっと叩いた。「調整呼吸,兩步一吸,兩步一呼。」(呼吸を整えて、二歩で吸って、二歩で吐く。)
慕斯はその通りに何度かやってみて、確かに少し楽になった。彼は横目で齐然を見た。齐然も彼を見ていて、額の金髪が風に分けられ、目が露わになっていた。
「看什麼?」(何見てる?)
「看你話多。」(おしゃべりだなって。)
齐然は笑い、それ以上は何も言わなかった。二人の腕は走るたびに時々触れ、触れては離れ、また触れた。慕斯は避けなかった。齐然も避けなかった。
トラックのそばで、先に走り終えたクラスメートがストレッチをしていた。一人が肘で隣を突き、トラックの方を顎で示した。隣の者がちらりと見て、眉を上げ、二人は「わかってるだろ」という表情を交わし、それから示し合わせたように何も言わなかった。
下校時、雨はまだ降っていなかったが、空はさらに重くなっていた。慕斯は荷物をまとめるのが遅く、齐然は隣で待っていた。教室の人はほとんど帰り、日直が椅子を動かす音だけがしていた。慕斯が最後の本を鞄に詰め、ファスナーが引っかかり、力任せに引くと、数学の練習帳が落ちて床に開いた。齐然がかがんで拾い、慕斯も同時に手を伸ばした。二人の手が同じ本の上に重なり、指の関節が重なった。
慕斯が先に手を引っ込めた。火に触れたように。齐然は練習帳を拾い、表紙を払って彼に渡した。慕斯が受け取るとき、齐然はすぐには手を離さなかった。本は二人の手の中で一瞬止まった。
「Same seat tomorrow?」(明日も同じ席?)
慕斯は顔を上げた。「座位是老師排的。」(席は先生が決める。)
「I'm asking you.」(君に聞いてる。)
慕斯は本を引き抜き、うつむいて鞄に押し込み、声を限りなく小さくして言った。「……隨你。」(……好きにすれば。)
齐然は立ち上がり、鞄を背負い、二歩外へ歩いて、また止まった。振り返ると、慕斯がまだ鞄のベルトと格闘していたので、戻ってきて、絡まったベルトをほどいてやった。動作はとても自然で、何度もやったことのあるようだった。慕斯はぼんやりと彼の手を見ていた。齐然はもう手を引っ込め、言った。「走了。」(行くぞ。)
慕斯はついていった。二人は前後して階段を下り、廊下の端の窓が開いていて、風が雨の匂いを運んできた。齐然は急に半歩遅れ、慕斯を自分の隣に来させた。二人の腕は歩くたびに時々触れ、誰も避けなかった。
階段の曲がり角で、二人の女子生徒が下りていた。振り返って彼らを見ると、一人がすぐにもう一人の袖を引っ張り、二人は足を速めて下へ逃げ、角を曲がってからようやく笑い声を漏らした。一人が言った。「歩くのもこんなに近いなんて」もう一人が言った。「声、小さくして」
校門のところで、齐然は朝に飲み残したミネラルウォーターのボトルを慕斯の手に押し込んだ。
「Here again?」(またこれ?)
「Bring me one tomorrow.」(明日一本返して。)
「Why?」(なんで。)
「You drank.」(飲んだから。)
慕斯はうつむいてボトルを見た。一口しか飲んでいないのに。彼は唇を結び、ボトルを胸に抱え、小声で言った。「哪有這種說法。」(そんなのありかよ。)
齐然には聞こえず、首をかしげて訊いた。「什麼?」(何?)
「沒什麼。」(何でもない。)
齐然は彼を二秒見て、それから急に手を上げ、ごく軽く彼の髪を撫でた。手のひらが頭の上で一瞬止まり、何かを確かめるように、それから引っ込んだ。慕斯はその場に立ち尽くし、髪を少し乱され、顔はゆっくりと赤くなった。
「See you tomorrow, Muse.」(また明日、慕斯。)
齐然はそう言って、雨の前の風の中へ向きを変えて歩いていった。
慕斯は校門に立ち、あのボトルを抱えて、しばらくしてからようやく手を上げ、撫でられた髪を押さえた。風が上着の裾を膨らませ、彼はうつむいてファスナーをもう一度閉め、それでも口元をどうしても押さえきれなかった。
彼の後ろの少し離れたところで、二人の女子生徒が腕を組んで通り過ぎた。一人が振り返って彼をちらりと見、それから齐然の遠ざかる方向を見て、小声で何かを言った。もう一人が笑いながら彼女を押した。「もう見ないで、行くよ」
九月一日。彼らはまだ知らなかった。この隣の席に、これから長く長く座ることになるとは。しかし彼らはもう、この人が座ったときに運んできた風の中に、ごく淡い紅茶の匂いがしたことを、覚え始めていた。
第二章が描いたのは「距離」だ。
席は並んでいるのに、間にはまだ細い隙間が残っている。二人は時々中国語で話し、時々英語で話す。そうすることで、満員の教室の中で自分たちだけの小さな場所を囲い込めるような気がしている。慕斯は気にしていることを認めないし、齐然もそれを口に出さない。ただ周りの者が先に見つけてしまった——こっそり交わされる視線、笑いをこらえた口元、言いかけてやめた「ほらね」。
この章では、二人はまだ何にもなっていない。膝が一度触れて、肩が少し寄りかかって、髪を軽く撫でられただけ。それでも九月一日の風には、もう紅茶の匂いがしていた。
次の章はたぶん、宿題と、試験と、それからどちらが先に紅茶を奢るか、だろう。




