第一章 午後の雨沫
この土地の天気はいつもそうだ。湿った息が車窓から滲み込んでくる。まだ昼過ぎだというのに、空は暗く、今にも雨が降り出しそうだった。父が車を中華街の茶楼の前に停めた頃には、雨沫が細かく細かく降り始めていた。まるで誰かが半空に薄絹を掛けたかのように。薄絹というものは留めておけないものだ。雨が急になれば、道端の薄い苔はすぐに乱されてしまう。
林 慕斯はこういう天気が好きではなかった。いろんなことを思い出させるからだ。曇った窓硝子のこと、終わらない夏休みの宿題のこと。だが大人は子供の気持ちを考えたりはしない。父は彼を一つの個室に連れて行き、頭を撫でて「いい子にして、ここで少し待っていなさい」と言うと、隣の賑やかな大広間へと消えていった。
扉が閉まった瞬間、雨音はくぐもった一片に隔てられた。
個室にはもう一人の少年が座っていた。金髪で、彼より半頭ほど背が高い。背筋を伸ばして座っているのに、なぜか冷たく見えた。まるで氷山のように。彼は静かに視線を向けてくる。悪意も笑みもない。ただ値踏みするように——見知らぬ子供を確かめるように。
林慕斯は無意識に唇を結び、一番遠い席に歩いて行って座り、茶を一杯手に取ってゆっくり飲み始めた。
卓上には几帳面に並べられた茶菓子があった。雨粒が窓硝子を滑り落ち、細長い水の跡を引いていく。すぐに窓枠の端から消えてしまう。何も書かれなかった手紙のように。空気にはうっすらと紅茶の香りが漂っていた。二人の間には、丸い卓一台分の距離と、どちらも先に口を開くまいとする沈黙が横たわっていた。
林慕斯は外を見ているふりをしていた。だが頭の中ではずっと考えていた。彼も私を見ているのかな。彼は私のこと、嫌いだったりしないかな。
そんな問いは退屈だった。彼はこの静けさが嫌いだった。二人ともどうすればいいのか分からないまま、お互いを探り合っているこの空気が嫌いだった。だが自分から先に話すのはもっと嫌だった。何と言えばいい?——こんにちは?
こっそりと視線を流した瞬間、金髪の少年の目とぶつかった。彼は慌てて顔を逸らした。
相手も少し戸惑ったようだった。それから不器用に口を開いた。「こんにちは。」
「こんにちは……僕はイギリス系なんだ。Muskeって呼んでくれればいい。」林慕斯は顔を逸らしたまま、声は思ったより小さくなった。「君は?」——言い終えてから思った。この薄汚れた灰色の髪、変だと思われてないかな。
「僕はロシア系だ。R-A-N-E。Eは発音しない。齐然だ。」彼は少し間を置き、言葉を探すようにして、付け加えた。「大丈夫、食べたりしないよ。未開人じゃないから。」
この言葉はちっとも面白くなかった。それなのに林慕斯は口元が緩みそうになるのを感じた。彼はこらえて、仏頂面を作った。「誰が怖がるもんか。」
「……なら、いい。」
齊然はそう言って、再び静かになった。だがその静けさは、さっきまでとは違っていた。先ほどの沈黙は空っぽで、どこに置いていいのか分からなかった。今の沈黙は、誰かが一緒にぼんやりしてくれているようで、不思議と落ち着く場所があった。まるで雨に濡れて、振り返ったら雨宿りの駅がすぐ後ろにあったような。雨宿りの時間は長くないのに、雨を待つ人のことは、なぜか長く覚えているものだ。
雨音は次第に密になっていった。個室の窓硝子は水蒸気で覆われ、外の街並みは溶けて灰色の塊のようになった。世界はまるで琥珀色の水滴に閉じ込められたようで、静かで、そして明るかった。ただ、水滴というものはいつかは転がり落ちる。窓の外は車の流れだけで、言葉は一つもなかった。
林慕斯は窓硝子を伝う雨粒の軌跡を眺めながら、ふと思いついて訊いた。「何のゲームしてる?Discord持ってる?」
齊然の目が一瞬だけ輝いた。話題が見つかった喜びを帯びて。だが声は相変わらず平たく抑えられていた。「やってる。」
「僕も。」林慕斯は言い終えてから、自分の声が少し速かったのに気づき、咳払いを一つして、声を潜めた。「……たまに、コミュニティを見るだけだけど。」
齊然は彼を見て、ごく淡い弧を口元に浮かべた。彼はそれを指摘しなかった。
やがて二人の話は、開いた隙間から水が溢れ出すように、ぽつぽつと続いていった。好きなゲームの話。それから、この雨はいつまで降り続けるのだろうという話。二人とも、茶楼の小豆の菓子は甘すぎると思っていること。二人とも、真夏の終わらない宿題が嫌いだということ。皿の上の小豆糕は長いこと置かれたままで、誰も手を付けず、灯りの下で甘さが少し静かに滲んでいた。空気はいつの間にか暖かくなり、雨音は遠くから聞こえてくるような気がした。
別れる前に、彼らはDiscordを交換し、週末に一緒にゲームをしようと約束した。
あの頃の彼らは知らなかった。この午後に偶然出会った少年が、やがて毎年秋に、自分が一番勝ちたいと思う相手になることを。何度も小さな喧嘩を繰り返しては、そのたびに心の中でこっそりと仲直りすることを。
だがそれらがまだ訪れる前、夏の雨音は、まだ互いを知らない二人の子供を包んでいた。世界ごと。
車の音がまた響く。人影は水しぶきに何度も邪魔される。だが消えることはなく、むしろ少し濃くなっていった。雨は何度も降る。それでも彼らが覚えているのは、たった一場の雨だけだ。
Maekon-Kun




