魔法で動く人形
かくして、<最前線の街>に到着したレイラは、<新型弩砲>の配備も始まったそこが、想定以上に善戦していることを確認した。
『まさかこれほどとは……人の力も侮れません』
<戦術>に対する研究が進み、前線の戦力のほとんどはレイラ以上の戦闘性能を誇るロボットに置き換えられ、数少ない人間も、徹底した医科学的に合理的で論理的な、効果の高い訓練を受けている、彼女がかつて運用されていた世界の軍に比べても勝るとも劣らない練度を、彼らが発揮していることが改めて伺えた。
確かに、医科学的に合理的な訓練ではないだろうし、あくまで経験則に基づいただけの拙い戦術とは言え、ただの<根性論>や<精神論>ではない、
<この時点での効果的で合理的な戦術>
が、確立されているのである。
問題なのは、あくまで<物量の差>。<魔王>がいる限りいくらでも湧いて出てくるであろうデモニューマが相手では、物量で押し切られてしまう。それに対抗するには高い火力が必要だが、その点は、新型弩砲や新型弩の普及でかなり底上げできるだろう。
だからレイラは、その街での新型弩砲の生産に着手した。と同時に、いわゆる<魔法>を用いるタイプのデモニューマが出現したとなれば自身が対応する。
レーザー光を発振するタイプのデモニューマは油断ならない相手だったが、それさえ、
『当たらなければどうということはない』
ということで、レーザー光が発振される際の挙動を見極め、確実に回避。次の発振まで一秒から三秒ほどのタイムラグがあるとなれば、レイラの敵ではなかった。
『私のようなタイプのロボットが発達しなかった世界の兵器なのでしょうね』
と推測する。おそらくは、<生物兵器>を主流として発展したのだろう。
<魔法>と称される力も、レイラが運用されていた世界では見過ごされてきた、見向きもされてこなかった、<何らかの物理法則>に基づいて実用化された、
<別方向の科学技術>
である可能性が高い。
むしろ、デモニューマを運用していた者達から見れば、レイラこそが、
<魔法で動く人形>
のように見えるかもしれない。<技術>というものは、結局、そういうものなのだろう。
エギナが使う<スタン>さえ、やはりレイラが運用されていた世界では見過ごされてきた見向きもされてこなかった<何か>でしかない可能性もある。
科学者や技術者ならその事実に興奮もするところだとしても、ロボットであるレイラに<知的好奇心>というものもない。
彼女はただ、人間の幸福に資するだけなのだ。




