↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/107

残り三十八日

「シェイナ、あなたは家に帰りたいですか?」


エギナとパティリエカが帰って二人きりになると、レイラは改めてシェイナにそう問い掛けた。けれど、彼女は必死に頭を横に振って、


「帰りたくありません! 私をあそこに帰さないでください! お願いします……!」


体を震わせながら懇願する。


それを再度確認したことで、


「大丈夫です。あなたが望まない限り、私はあなたを家に帰すことはしません。この国には残念ながら他にあなたを保護してくれる機関は存在しないようですので、私があなたを保護します。私が機能を維持できる間は、必ず。


その間に、根本的な解決を探りましょう」


レイラはそう穏やかな表情で告げた。


実際、今のこの国には、シェイナのような被虐待児童を保護する機関も仕組みも存在しないのは確認できてしまった。これはつまり、個人的にシェイナを保護してくれる人物を見付けなければいけないという話でもある。


しかし同時にそれは、


『我が子が何者かに誘拐されても国として対応してくれない。そういう仕組みがない』


という意味だと解釈もできる。シェイナの親が彼女を取り戻す手段もないということだ。


もちろん、<臣民>に対しては手厚く保護もする。けれど、その以外のいわば<賤民>については、


『迫害はしない上に<ベル・ルデニオーラ>領地内で生きることを許す代わりにそれ以上は望むな期待するな』


と言っているのだろう。


同時に、<優秀>な者は臣民として城壁内に住むことを認める制度もあるようだ。


通り掛かった道に、それを示す告示がされていたのを、レイラは見逃さなかった。武官や文官を募る試験の実施を告知するものだった。


これにより、


『自分も臣民になれる可能性がある』


という希望を持たせ、それを励みに努力する者を拾い上げるということか。


それ以外の<賤民>も、大部分が<農業>を営み、その収穫を<臣民>に買い取ってもらうことで収入を得ていることも、


『本日の買取価格』


と書かれた看板に掲げられた主な産品の買取価格から窺える。


こうして<臣民>は、自分達で産出している以上の、農産物をはじめとした各種食料や生活必需品を手に入れ、<賤民>は日銭を得る。わけだ。


この仕組みがどれほどの期間続いてきて、そしてこれからどれだけ維持できるかは未知数ではあるものの、少なくとも現時点では上手くいっているように見える。


それらについても、レイラは関知しない。経済の仕組みについても彼女は並の人間以上の知識を持つものの、そういうものを基にしてこの世界そのものを作り替えるには、時間が決定的に足りないからだ。


『バッテリーの残量、九十八パーセント。一日平均五体のデモニューマに対処すると仮定した場合の実効稼働時間、残り三十八日といったところですか』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。