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佇まい

『おぬしが、たった一人でデモニューマを瞬く間に駆逐したという者か?』


国王の問い掛けに、レイラはさらに頭を下げ、


「はい、畏れながら、陛下のおっしゃる通りでございます」


と応える。すると国王は、僅かに身を乗り出すようにして、


「おぬしは何者だ?」


改めて問い掛けた。


「は! 私めは、この地よりはるか遠い異国にて要人の警護を拝命しておりました者でございます。しかし、神の計らいか悪魔の所業か、一人、この地に置きざりにされた次第にて。母国に帰還する手立ても皆目見当がつきませぬゆえ、デモニューマめらを駆逐する役目を得ることにより、口に糊する糧をお恵みいただければと考え、こうして陛下のご温情を賜りたくお目汚しを願った次第」


実にスムーズにまったく滞りなく端的に用件だけを明らかにしてみせた。


そんなレイラの様子に、


『こやつ、なるほど高貴なる者達に仕える身であったことは確かのようだ』


彼女の気品を感じさせる振る舞いに、国王も納得せざるを得なかった。だから、


「顔を上げよ。一歩前に出て、余におぬしの姿をよく見せるのだ。余が直々におぬしの言に嘘偽りがないかを見極めてやろう」


と口にした。


「陛下……!?」


エギナを諫めようとした人物が声を上げる。この中では、唯一、国王の許しを得ずとも発言できる立場であることがそれで分かる。しかし国王はそれも手をかざして制し、


「よい。この者が不埒を成そうとしても、我が騎士団がそれを掃うであろう?」


重ねて告げ、居並ぶ騎士達が、姿勢は崩さずに自身の体を緊張させ、何が起こっても即座に対応できる気構えを作ってみせた。


それだけでも、非常に練度の高い者達であることが窺える。


そしてレイラは、


「少し、待っていてもらえますか? すぐに終わります」


シェイナにだけ聞こえる小さな声で告げて、ウインクしてみせた。だからシェイナも、従うしなかった。他ならぬレイラの言うことだから。


しっかりと掴んでいた手を放し、すっと立ち上がったレイラの気配を感じつつ、シェイナはその場で体を小さく縮こまらせた。さすがに不安だったからだ。


すると、


「案ずるな。お前に何も危険は及ばない。私が保証する」


ブルーディスも告げた。すごく力強くて、でも労りが込められた言葉でもあった。


レイラもそれを聞き取り、毅然とした態度で真っ直ぐに立ち顔を上げた。


瞬間、その場にいた者達の間に広がる動揺。美しいことは見れば分かるが、それ以上に、彼女の佇まいに圧倒されていたのだった。



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