連行
『君主様にお目通り願いたく』
そう願い出たレイラだったものの、髭面の隊長らしき人物は、
「何を…! お前のような得体の知れん輩を陛下に……」
戸惑いながらそう応えた。当然と言えば当然の対応である。実際に<得体の知れない何者か>などを、いきなり。
もちろん、レイラもそれは分かっている。だからすぐにお目通り願えるとは思っていない。あくまでこう告げることで『敵対の意思はない』と示しただけで。
『<陛下>ということは、あの城には<国家元首>がいらっしゃるということですか。とは言え、まだ断定はできませんが』
ここまでの間で補正したことで髭面の隊長が口にした単語を<陛下>と解釈したものの、それが正確かどうかは確かに分からない。城は立派だが、あくまで<大きな勢力を持つ国の有力な貴族>的な立場である可能性も消えてはいない。
相手の立場を誤認した状態で対応すると非常に面倒なことになる場合があるのは事実。ゆえにレイラも慎重だった。その上で、
『明らかに<軍>ですね。軍が警察も兼ねているわけですか』
自分を取り囲んでいる者達の装備や振る舞いを見て、そう判断する。となれば一層、トラブルを起こすわけにはいかない。些細な行き違いで、即、武力行使という事態もありうるのだから。
「とにかく、我々の詰所まで来てもらおう。そこで判断する」
と告げて、レイラの背後に隠れるようにして縋りついている少女についても、
「そいつは、なんだ?」
との問い掛けに、
「私の<ツレ>です。離れることはできませんので、一緒にお願いします」
<嘘>にはならない程度に曖昧にして、応えた。
「ふん、まあいい。子供であろうと油断はならんから、取調べることになるだろうがな」
『<取調べ>ですか』
この種の軍による取調べとなると、拷問まがいの厳しいものが連想されるため、レイラはその場合の対処法についても想定する。
最悪、自身の戦闘力を改めて誇示し、膠着状態を作り出すことで止めることにもなるかもしれない。
できれば取りたくない手段ではあるものの、無辜の少女への<拷問>など認めるわけにはいかないゆえに。
こうして、まずは<詰所>へと赴くことになりおとなしく連行されるレイラは、自身が倒したデモニューマが、何人もの兵士により荷車に乗せられるのを視界に捉えた。さすがにそのまま放置はしないということなのだろう。
リソースが限られているからこそ、無駄なく利用されるのかもしれない。
が、今はまず、
『シェイナを守らなければ』
と考えていたのだった。




