迎撃
さらに、その頭部を、三頭目の獣へと投げつけて牽制し、怯んだところに左の回し蹴り。
彼女の足が獣の首を捉えると同時に頚椎が粉砕され、うめき声を上げる暇さえなく、その獣は絶命した。
それを、獣が発するバイタルサインで確認しつつ、大型弩砲から放たれた投擲体を投げつけた獣に迫り、頭部に刺さった投擲体の尻に掌底を叩きつけ、頭蓋内に押し込んだ。彼女の手に伝わってくる、分厚い頭蓋が砕ける感触。そこから、一発二発命中したところですぐには致命傷に至らない頑強さも窺えた。大型弩砲による一斉射の合理性も判明する。
この間、一秒強。
そして、シェイナにも迫っていた投擲体を、自らの背中で受け止めた。
人間の体なら一撃で致命傷を負わせる威力があるそれが、彼女の、エプロンドレスを思わせる外装には、一ミリたりとも食い込んで行かず、一センチ程度凹んで運動エネルギーを吸収、ただの金属の塊に戻った投擲体がガツンと音を立てながら地面に落ちた。命中した部分にも傷一つ付いていない。
「レイラ様!」
レイラが身を挺して自分を庇ってくれたことを察したシェイナが悲鳴のような声を上げる。けれど、レイラは平然と、
「問題ありません。私には効きませんので」
美しい笑顔を浮かべて見せた。
「レイラ様! レイラ様!!」
立て続けの<命の危機>と、それを難なく退けてくれた麗しくも頼もしい<女性>に、シェイナは感極まって再び縋りつく。
少女のこれまでの人生の中で、こんな人物は存在しなかったのだろう。
まあ、レイラは人間ではなくロボットなので、正確には<人物>とは言えないが。
などと細かいことはさて置いて、途轍もない<美女>がデモニューマを退けた上に大型弩砲の攻撃すら意に介さないという<奇跡>に対し、
「うおおおおおーっっ!!」
歓声が上がる。その場にいた者達全員が、信じられない光景にどよめき、興奮していた。
中には、
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
子供と共にデモニューマに襲われそうになっていた母親が泣きながら跪いたりという姿も。
「いえ、私は自身の役目を果たしただけです」
そう応えたレイラの<言葉>は、イントネーションや発音もすでに他の人間達が話しているそれと大差ないものになっていた。街に入ってからもずっと、周囲の人間達の会話を拾って言語を解析していた結果だった。
これにより、地球の古い英語とラテン語が混ざり合ったかのような言語であることが改めて確認できたのである。
『後の学習によって得たものではなく、これがネイティブのようですね』
人々の賞賛を浴び、笑顔を振りまきながらも、レイラは冷静にそんなことを考えていたのだった。




