パティリエカとシェイナ
「シェイナ! シェイナはどこ!?」
朝、王宮のすぐ傍に建つ屋敷にそんな声が響く。とても活発そうな少女の声だった。
「はい、パティリエカ様! シェイナはここに!」
それに応えたのは、パティリエカと呼ばれた少女に比べると控え目ではあるものの、しっかりとした意思を感じさせる、やはり少女の声だった。
ベル・ルデニオーラ王国の第一王女パティリエカとその侍女であるシェイナだった。
パティリエカは十一歳。シェイナは十三歳。主従の関係ながら、共にとても聡明であると評判で、高潔な人柄とも合わせて、臣民のみならず<賤民>と呼ばれる下賤とされる者達からも慕われている二人であった。
特にシェイナは、賤民の出でありながら、わずか一ヶ月で臣民としての知性と技能と振る舞いを身につけ、第一王女パティリエカに召し抱えられた才女として、彼女をモデルとした絵本まで作られるほどに臣民・賤民問わず少女達の憧れの的となっていた。
そしてパティリエカの方も、王族でありながら身分に囚われない広い見識と大きな器を兼ね備えた<幼き賢人>との評判を得、人々からの信頼を得ている。
そんな二人が今日は、
「<学校>の視察に行くから! 用意なさい!」
パティリエカが告げた通り、王都<ルデニオン>に設立された<学校>の視察に赴くことになっていた。
「はい。ご用意は整っております」
シェイナも心得ており、すでに朝一番からその準備を済ませていた。
「結構。では、レイラ様をお迎えに上がりましょう」
パティリエカがそう告げて歩き出し、シェイナがそれに続く。
<学校>というのは、パティリエカの主導の下に設立された、文字通りの<学校>である。臣民であれば誰でも無償で入れる<学校>と、賤民向けに設立され同じく誰でも無償で通える<予備校>とがあるのだが、それらは合わせて<学校>とも呼ばれていた。
これらは、シェイナに憧れ向上心を見せる者達に知性と見識をもたらし有能な人材を意欲的に作り出すことで国力の底上げを図ろうという目論見の下で運営されており、すでに実績を上げてもいる。<予備校>で優秀な成績を収めた者が臣民と共に<学校>通い、そして十人が新たに臣民として様々な職に就いたのだ。それまでは年に一人、いるかどうかであったにも拘わらずである。
そしてパティリエカは、そんな<学校>に頻繁に視察に訪れ、<生徒>達を鼓舞していた。
彼女が<ベル・ルデニオーラの恩人>と呼ぶ女性、
<レイラ・タリア>
と共に。
シェイナが押す<車椅子>に座った、プラチナブロンドの長い髪を一まとめに編み上げた。この世のものとは思えない美麗な女性が、そのレイラ・タリアであった。




