第5話
「何かお探しですか?」
黄ばんだ白いタオルを頭に巻いた中年の男がエヌラの前に現れた。今、エヌラは露天の武器屋にいる。エヌラは新しいバイト先を見つけたが、そこはボディーガード会社であり、有名な『グスタム・セキュリティー』の下請け会社でもある。この会社がエヌラに支給したものは、社員証とプラスチックのバッジだけであった。会社は、武器は各自で用意しろと言い、エヌラと一緒に面接に来ていた大男は大量のナイフと散弾光線銃を持参していた。一方のエヌラは何も持っていなかった。エヌラと同じく華奢な体型の社員はエヌラに武器を買うように言い、エヌラは格安で手に入る武器屋を探し、やっと露店の武器屋に到着した。
「おやじ、お勧めの品は何だ?」
エヌラが青いビニールシートの上に並べられている武器を眺める。
「お勧めの品ですか…」
武器屋の店主は、いい“カモ”が来たぜ、と思っていた。高値でガラクタを売りつけてやろう。
店主はエヌラの身なりを見た。全身赤タイツ姿のエヌラは、とてもカネを持っているようには見えなかった。それにプロにも見えなかった。
適当なことを言ってガラクタ拳銃を売りつけるか…、いや、その前に礼儀として“カモ”の好みを聞いてみるとするか…。
「お客さんは、どのような武器をお探しですか?」
「そうだな…光線銃が欲しい。できれば、小型の…」
光線銃か、貧乏人のクセにしゃれた物を欲しがる野郎だ。威力の弱い、ご婦人向きのショック銃を500ベルガー(今の値段でいうと5万円ほど)で売りつけよう。
「これはどうでしょうか?」
中年の店主は小さな緑色の水鉄砲のような拳銃をエヌラに渡した。
「500ベルガーでお安いですよ。それに威力も充分です。象も一撃で倒せますよ!」
「なるほど…しかし、私はそこまで金を持っておらんのだ。」
「いくらお持ちですか?」
「15ベルガーだ。」
15ベルガー(約1500円)!?それで光線銃を買おうと考えているのか、この野郎は…ショック銃ももったいない。よし、火薬鉄砲を売りつけてやろう。
「その値段では光線銃は難しいです。」
それを聞いたエヌラはショック銃で店主の腕を撃った。