第6話
エヌラはショック銃の性能を知っていたので怯むことはなかった。逆に次は股間を撃ってやろうと、銃口を股間の方に向けた。
「この野郎!」
店主が店の裏に置いてある箱から拳銃型光線銃を取り出し、エヌラに向けて引き金を引いた。が、エヌラの方が早かった。エヌラは店主の股間に向けてショック銃を撃つ。店主は、あひぃ~、と叫びながら倒れた。転倒する途中に店主は自分のテントに複数の穴を開け、最終的に地面に頭をぶつけて気を失った。これによって辺りが騒がしくなった。
この場から逃げなければ。エヌラは適当に武器を掴んで走り出した。
エヌラは人通りが少ない道に入ると、追っ手がいないことを確認して薄暗い路地に滑り込んだ。そこで彼は全身赤タイツを脱ぎ、予め用意して置いた白いタキシードを着た。これからエヌラは5キロ離れた広場で依頼人と会う約束をしている。
白いタキシードを着たエヌラは親戚の披露宴で花畑を渡す子供のようであった。このタキシードは近所の貸し衣装屋から無断で拝借してきたものであるから、依頼人と合流してホテルに連れ込んだら捨てるつもりであった。彼はスクーターを盗んで待ち合わせ場所に急いだ。
しかし、スクーターは失敗であった。多くの人々が白いタキシード姿の男を目撃し、その情報はすぐ貸し衣装屋の耳にも入ったし、エヌラの同棲相手であるアーマ・ナマズーの耳にも届いていた。
広場で依頼人を待つエヌラは、その場で一番浮いた存在になっていた。ここにはSPGGのメンバーが多数いたにも関わらず、人々はエヌラのコスプレに目を奪われた。
注目されることを好むエヌラは目を閉じ、両手をポケットに入れ、広告宣伝板に背をあずけながら少し前屈みになって、俺ってカッコイイ、と思い込んでいた。その合間にエヌラは依頼人がどのような美女か妄想を膨らませていた。
絶対にミニスカートで来るだろう。そして、生足だ。
この男は病的なほどに生足、生足と頭の中で唱えている。また、彼は常に妄想と現実に大きな差があることを知っていながらも、これから出会える人物が美女であるはずだと思いを巡らせた。
「エヌロさんですか?」
可愛らしい女性の声がエヌラの前から聞こえてきた。この時、女性の声を聞いて有頂天になっていたエヌラは、女性が人違いをしていることに気付いていなかった。
来た!と、エヌラは目を開けて女性の身体を見た。まず、彼の目に飛び込んできたのはピンク色のスニーカーと小麦色の細い足であった。エヌラが望んだ通りに女性は生足であり、胸を高鳴らせて視線を上げる。次に見えたのはデニムのミニスカート、さらに視線を上げるとライトグリーンのTシャツ姿であった。
これは可愛いに違いない。とエヌラは確信した。そして、顔へ視線を移動させた。そこにあったものは「カバ」であった。




