第40話「地獄の後の地獄」
【地獄の後の地獄】
疲れた・・・・・
あの後俺は佳奈ちゃんに付き合わされ
工藤を尾行したり罠にはめたりした。
それには森先生が協力したので疲れも倍になった・・・・・
「りゅうも大変だねぇ~」
「本当だよ・・・・・」
今は美希と下校中だ。
なんでかは知らないけど俺は美希と下校することが
多いことに今さら気付いた。
不思議だ・・・・・
「りゅう、コンビニでなんか奢ってよ?」
「はぁ?なんで俺が?」
「いいじゃん!」
「いいじゃん!・・・・じゃねぇよ!!俺は今月厳しいんだよ!!」
「それ大声で言える事じゃないでしょ」
「でも言わないと奢ることになるじゃんか・・・・・」
「まぁね!」
「まぁねじゃないよ・・・・・」
なんで美希はこんなに余裕なんだ?
月末は金が無くて困る時期なのに・・・・・
「りゅうは金欠なのかぁ~」
「わかったなら俺にねだるなよ」
「へ~い」
「ってか、美希が男子に奢ってって頼んだら断る奴いねぇだろ」
「いるよ」
「うっそだぁ~」
美希が頼んで奢らない奴はいないだろう。
それぐらい美希は人気なのに・・・・
「それじゃぁ、聞くけどりゅうは男じゃないの?」
「ん?俺?男に決まってるだろ」
「断ってるじゃん」
「ん?確かにそうだな・・・・・」
まぁ、俺は友達ですからね!!
奢れないときはキッパリ断れますよ。
友達じゃなかったら食費を削っても奢るだろうな・・・・・
「りゅうが私に奢らないということならりゅうは女なのかな?」
「おい、美希。なんかとてつもないこと考えてるだろ」
「うん!!」
「そこはハッキリ認めるのかよ・・・・・ってか、俺は女じゃねぇぞ!!」
「遅っ!!なんか重要な所ツッコムの遅っ!!」
「・・・・逆にツッコまれた・・・・・」
軽くショックだぞ・・・・
「バカなこと言ってないで早くコンビニに行こうよ」
「待て!!なんでコンビニに行くことになってるんだ!?」
「だって、奢らないと男じゃないって言ったじゃん」
「確かに言ったけど奢るなんてことは言ってないぞ!!」
「でも、奢らないとりゅうは女になっちゃうんだよ?」
「なんねぇよ!!絶対になんねぇよ!!」
「ちょっとぐらいいいじゃん・・・・・」
「そんな可愛い顔しても俺は奢らないからな!!」
「・・・・・・・・・」
ん?どうしたんだ?
美希が急に静かになったぞ?
「美希?」
「・・・・・・・」
完全に固まってるよ・・・・・
ってか、なんか顔が赤いんだけど・・・・・
「美希?どうした?」
「・・・・・・・・・」
熱あるなら早く帰らないといけない。
コンビニなんてよってる場合じゃないだろ・・・・・
とりあえず明後日の方向を見ている美希をなんとかしなくては・・・・・
「おぃ、美希、なに固まってるんだ?」
「・・・・・・・バカ」
「なんで俺がバカなんだよ!!」
「五月蝿い・・・・・」
「酷いな!!」
「酷くないもん・・・・・」
「いや、酷いだろ。ってか、早く帰ろうよ」
なんかコンビニの前にずっといるの嫌なんだけど・・・・・
「うん・・・・・・」
なんか素直だな。
美希が俺に言うことを素直に聞くなんて事滅多に無いぞ。
「なにイチャついてるんだよ?」
「た、丈翔!!どうしてここに?」
コンビニから丈翔がいきなり出てきた。
「天下の美希様とイチャついてるんじゃねぇよ!!」
「「イチャついてない!!」」
「イチャついてるでしょ」
「幸平まで!!」
丈翔の後ろには幸平もいた。
「まったく、俺は丈翔と帰ってるのにお前は美希と楽しく下校なんて不公平すぎるだろ!!」
「幸平、それは特定の人物を傷つける発言だぞ」
「いいんだよ」
「酷い!!」
「丈翔は黙れ」
「美希ちゃーん、幸平がいじめるぅー」
丈翔は助けを求めて美希に抱きつこうとしたけど
美希にあっさりかわされてしまった。
「美希ちゃんは味方だと思ってたのに・・・・・」
「ご、ごめんね丈翔」
それでも謝る美希はすごいと思う。
やっぱり男子の中で一番人気があるのは美希だろうな・・・・・
「ってか、二人ともコンビニの前でイチャつきすぎ」
「「だから、イチャついてない!!」」
「まっ、そう言うことにしておくか」
「なんか、その言い方ムカツクなぁ~」
「りゅうは子供みたいだな」
「誰が子供だ!!」
「すぐムキになる」
「幸平のせいだろ!!」
「でも、美希だってりゅうのことからかいたくなるだろ?」
「うん!!」
「即答!?」
しかも、めちゃくちゃ元気よく!?
「俺もりゅうちゃんのことからかいたくなる!!」
「Mのクセに・・・・・・」
「Mでもいじめたくなる時はあるのだっ!!」
こいつ、自分がMだってこと誇りに思ってるんじゃないのか?
「美希、さっさと帰るぞ」
丈翔がいると必要以上に疲れる・・・・・
「帰るのはいいけど・・・・・」
「どうした?」
「せめて十円ガム奢ってよ!」
十円ガムくらい自分で買えよ!!
何でそんなに奢らせたいんだよ!?
「りゅう、お願い!!」
「十円ならいいけど一個だけだぞ」
「えっ?」
「えっ?じゃないよ!!お前、何個奢らせるつもりだよ!?」
「百個」
「千円じゃねぇか!!ガム百個もいらねぇだろ!!」
「じゃぁ、十個で我慢する」
「我慢できてねぇよ!!だいたい、一個って言ってるだろうが!!」
「んじゃ、一個でいいよ・・・・・」
「まったく・・・・・・」
「これで、りゅうも男だね!!」
「どういう意味!?」
俺は美希に奢らないと女になってたわけ!?
こいつの頭はどうなってるだ?
「とりあえずコンビニに出発!!」
「へ~い・・・・・」
結局、コンビニに入るのか・・・・・
「なんか俺達って空気じゃない?」
「幸平、俺はいつも空気として扱われてるんだよ」
「そりゃそうだろ」
「酷い!!」
「おーい!!りゅうと美希」
「もう、店に入ってるよ」
「仕方ない。俺達も入るか」
「えぇー!!俺にそんな勇気は無いぞ!!」
「俺はこれから丈翔と二人っていう状況になる勇気が無いよ」
「酷ッ!!それは、何かトラウマになりそうな感じだよ!!」
「五月蝿い・・・・・」
「なんか瞬殺された感が滅茶苦茶あるんだけど!!」
「・・・・・・・」
「無言は止めてぇぇぇぇ!!」
「じゃっ!!」
「じゃっ!!って、何!?ちょ、先に店に入らないで!!頼むから置いていかないで!!」
何か、丈翔と幸平がギャーギャー騒いでるな・・・・・
「りゅう、コーラ味とソーダ味のどっちがいいと思う?」
「知らねぇよ!!もう、どっちでもいいだろ!!」
「よくないもん!!」
「そうなのっ!?」
絶対、違うでしょ!!
やっぱ、美希の頭おかしいよ!!
「りゅう、決められないよ・・・・・・」
「なんでそこまで深刻そうな顔してるの!?」
どこまで真剣に悩んでるんだよ!!
「だって、深刻だもん・・・・」
違うだろ!!
深刻な要素なんてこれっぽっちもねぇだろ!!
「りゅうがガム二個奢ってくれたら悩まなくて済むのに・・・・・」
「・・・・・・はぁ~」
ガムのためにここまで頑張るか?
って、美希の奴すっげぇ目潤ませてるんだけど!!
どこまで必死なんだよ!!
「二個までな」
「いいの!!」
「じゃないと帰れないだろ?」
「そうだね。ありがと!!」
ガムが二個になっただけど鼻歌歌ってるよ・・・・・
「あっ!幸平!!」
幸平?
「よっ!!」
「丈翔まで・・・・・・」
「りゅうちゃん、何でそんな嫌そうな顔してるの!?」
そりゃ、嫌だよ・・・・・疲れるもん・・・・・・
「りゅう、二十円!!」
「ほいよ」
なんかルンルンだな・・・・・
「りゅう、帰るよ!!」
「わかったぁ~」
やっと帰れる・・・・・
「んじゃ、俺達も帰るか」
「え゛?」
「何その、え゛って?」
「いや、幸平はいいけど・・・・・丈翔は・・・・・・」
「りゅうちゃん、それどういう事!?」
「俺もそう思う!!」
「幸平まで!!」
「「だって、丈翔といると必要以上に疲れるんだもん」」
「酷い!!酷いよ二人とも!!揃って同じ事言わないでよ!!」
「三人とも騒ぎすぎだよ」
「「「はっ!!」」」
なんか客の目線が俺達に・・・・・・
「美希、帰るか」
「うん」
「じゃぁな!丈翔と幸平!!」
「俺に丈翔を押しつけるなぁぁぁぁぁぁ!!!」
「バイバイ」
「美希まで!!俺を置いていかないでぇぇぇぇぇぇ!!」
俺は絶叫する幸平を置いて寮に帰った。
ってか、今日は地獄だ・・・・・
工藤の厄介事に巻きこまれるは
帰りに丈翔に会うはコンビニで目立つは
美希に奢らされるはでホント疲れた・・・・・・