表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界交信 〜元の世界とつながるトランシーバーで異世界を攻略します〜  作者: のる
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/51

51話:魔術実験の跡

 カイルが残骸の前へ屈み、骨のつなぎ目を慎重に確かめた。


カイル「金具や接合材の類は使われていない。折れた骨が治ったように、最初から一つだったかのようにつながっている」


アリア「こういう生物だった可能性は?」


セラ「それはないと思う。脚は岩山にいる角山羊で、翼はたぶん夜梟。頭は……牙狼に近いかな。でも、どれも大きさが合ってない」


 筒の底には、床の溝と同じ黒い結晶が固まっていた。

 リゼットは短い金属棒で粉を掻き取り、魔力灯の光へかざす。


リゼット「魔力を蓄える鉱石の燃えかすね。これだけ残っているなら、使われた量は相当なものよ」


ヒロ「何のために、そんな魔力を?」


 答えは返らなかった。

 五人は広間を調べたが、文字の記録は読めず、施設の名や造った者につながる印も残っていない。

 やがてアリアが、壁の一部に刻まれた絵を見つけた。

 三種類の獣が円の外側に描かれ、それぞれから伸びる線が中央へ集まっている。円の中に刻まれていたのは、角と翼と牙を持つ一体の生物だった。


アリア「さっきの骨と同じだ」


 その絵の下には、人の形をしたものもあった。

 だが、石壁ごと抉られており、その先に何が描かれていたのかは分からない。


カイル「魔力を集める回路、身体を固定する台、そしてこの絵か……」


リゼット「複数の生物へ無理やり同じ魔力を流して、身体同士を結びつけた。たぶん、そういう実験だったのよ」


セラ「じゃあ、九層にいた異形もここで?」


リゼット「そこまでは分からないわ。この場所で造られたのかもしれないし、後から入り込んだだけかもしれない」


アリア「結局、分かったのは一つだけだな」


 何者かがこの場所で、強大な魔力を使い、異なる生物を一つに結合しようとしていた。

 いつ、誰が、何のために行ったのか。

 実験が成功したのか、それとも失敗したから捨てられたのか。

 それ以上の答えは、壊れた施設のどこにも残っていなかった。


カイル「長居は危険だ。先へ進もう」


 広間を抜けた先には、さらに下へ続く階段があった。

 入口には灰色の毛が落ち、鉱石猿の足跡が闇へ続いている。どうやら十層へ下りたらしい。

 五人は階段の手前で水を飲み、短い休息を取った。

 下から魔物が上がってくる気配はない。それがかえって不気味だった。


ヒロ「そういえば、次は十層ですよね。……ボスみたいな、この迷宮の主っていたりするんですか?」


 カイルとセラが顔を見合わせた。


カイル「いると断言はできない。俺たちも、ここまで来たのは初めてだからな」


セラ「でも、古い伝承ならあるよ。この迷宮が黒鉄の迷宮って呼ばれるより前から伝わってる話」


ヒロ「どんな話です?」


カイル「迷宮の最奥には、巨大なハエの魔物が棲んでいる。その名はベルゼブブ。羽音だけで岩を震わせ、あらゆるものを喰らうとされている」


 ヒロは一瞬、聞き間違いかと思った。


ヒロ「今、ベルゼブブって……?」


セラ「うん。ベルゼブブ。どうかした?」


ヒロ「いえ。変わった名前だなと思って」


 そう答えながら、ヒロは胸の奥に冷たいものを感じていた。

 ベルゼブブ。

 元の世界では悪魔の名として知られ、ハエの王とも呼ばれていた。

 巨大なハエという姿まで、元の世界の伝承と重なっている。

 似た魔物がいるだけなら偶然で済む。だが、名前の音までまったく同じなのは、どう考えても不自然だった。

 この施設を造った者と関係があるのか。

 それとも、自分より前に元の世界から来た誰かが、その名を伝えたのか。

 ヒロが黙って階段の闇を見つめた、その時だった。

 遥か下の方から、低く濁った音が響いてくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ