17:サキュバスのリリス。
フレイヤとの通話を切って俺は実家の前に瞬間移動した。
家の前ではエイルさんとサキュバスが家の前で待っていた。
「優斗様!」
俺を見るなり駆け寄ってすごく近くまで来るエイルさん。
「大丈夫ですか!?」
「この通り大丈夫ですよ」
エイルさんはすぐさまヒールをかけてくれるが俺がピンピンなのはすぐに分かってくれた。
「アダムはどうした?」
傷を治されたサキュバスがそう聞いてきた。
「アダムというのはあの侵入者の男のことか?」
「そうだ」
「それなら殺した。ここを脅かすやつは徹底的にやらないといけないからな」
「ふーん、強いんだ。あれでも次のバス王国の王様だったのに」
「なんか自分でそう言っていたな。でもここでは俺が最強だからな」
王様だろうが神様だろうが関係ない。誰が相手だろうがここでは俺が最強で無敵だ。
「……本当に、良かったです。十二魔族の王が相手だと聞いて、どうなることかと……」
サキュバスから聞いたのだろうが、余計な心配をエイルさんにかけやがって。
「心配をかけてすみません」
「……次からは、私も一緒にいさせてくださいね」
「はい、分かりました」
エイルさんを危なくないようにしたが、まあこのチートな箱庭なら問題なくエイルさんを守りながら戦うことはできる。
だからそれに頷いて答える。
「あー、イチャイチャしているところ悪いんだけどあたしのこと忘れないでほしいんだけどー」
俺とエイルさんが至近距離で見つめ合っているとサキュバスがそう声をかけてきたから俺とエイルさんは距離をとった。
「もしかして二人は恋人? いや夫婦みたいなにおいがする」
「ふ!?」
「俺とエイルさんはそういうのではない。エイルさんは俺と一緒に住んでいる人だ」
「ふーん……」
何やらエイルさんの方を見て意味ありげな顔をしているサキュバスだが俺の方からはエイルさんの顔を見えないから分からない。
「ま、いいや。とりあえず助けてくれてありがとう。あたしはリリス、バス王国から追われた元王女」
「王女?」
改めて知ったサキュバスの名前はリリス。名前は知っていたがそのあとのことは全く知らない。
「そ。あのアダムに父親を殺されて国を乗っ取られたってわけ」
「そんなあっさり言うことなのか?」
「別に国に愛着はわいてないし」
「王女なのにか?」
「……王女に生まれたくて生まれた訳じゃない」
少し機嫌が悪くなったから何か悪い思い出があるのだろうな。
「そうか。俺はこの箱庭の主で優斗だ」
「エイルから聞いてる。とりあえず行く宛もないからここに住んでもいい?」
まああの侵入者以外にも狙われているっぽいからここに置いてもいいとは思う。
「エイルさん、いいですか?」
「はい。私は優斗様に従います」
そう言われるのは少し困るものがある。
だってこういうのって二人分の責任を俺が負うことになるんだろ? まあ俺の決定に従ったエイルさんがダメだってことにはなるけど、エイルさんからの信用は落ちるわけで。
話し合って決めた方がまだ全然ましだ。それの方が何かあった時に連帯責任となるのだから。
ただ……こういう場で迷いなくエイルさんを引っ張れたらかっこいいだろうな。
「分かりました。じゃあリリス、ようこそアンエクスプロード・ガーデンへ」
「ま、ようこそされなくてもここにいるつもりだったけどね」
……このサキュバスといい加護を与えている女神に遠慮というものはないのだろうか。
なんだか一仕事終えたような精神的疲労を感じながら俺とエイルさんは家に入り、リリスを招き入れる。
「おじゃましまーす」
リリスもまたこの家を物珍しそうに見ながらもエイルさんとは違って遠慮がない。
性格の違いを感じながらもリビングに招き入れる前にリリスに声をかける。
「お風呂入るか? 体中汚れているだろ」
傷は癒えているが体は汚れているリリス。
「言い方ひどすぎ。でもその通りだから入るよ」
待たせるのもあれだから風呂場に行く前に俺は風呂を一瞬で溜める。
「王女だからこんな小さな風呂は窮屈だと思うが我慢しろ」
「んー? 別にそんなことないじゃん。何ならあたしが使っていたお風呂より広いし」
えっ、異世界のお風呂って狭かったのか? いやそんなはずはないだろ。大きい方が作りやすそうだし便利だろ。
シャンプーとボディソープのことをリリスに教えてから俺はその場から離れようとする。
「どう? 一緒に入る?」
「は?」
リリスを見ればおっぱいを腕で強調するようなことをしてきた。
「傷心の女の子を慰めるチャンスだよ?」
おそらく俺以外の男なら遠慮なくその誘いに乗るのだろうがこれは罠だ。
リリスはこれで俺のことを試そうとしているのだろう。少し会話しただけでそれが嫌いなことは分かっている。
それに俺の死角からエイルさんがこっそりとこちらを見ているから迂闊なことはできない。
だが正直に言えば誘いに乗りたいところはある。
エイルさんと一ヶ月間一緒にいるからいくら抜いてもすぐに装填されるし右手やホールでは満足できないようになってきている。
「バカを言うな。早く入れ」
「はーい」
ふぅ、問題なく切り抜けることができた。
リビングに向かえば椅子に座ってニコニコとしているエイルさんがいた。
「どうしましたか?」
「いえ、何でもありません!」
よかった……選択肢を間違えないで。間違えていたらあやうく二人からの信頼を失っていたところだったぞ。
「リリスのこと、大丈夫だと思いますか?」
許可を出したものの一応エイルさんに聞いておく。
「はい、大丈夫だと思います。リリスさんはおそらくこの生活を気に入るかと」
雰囲気的にはそうだろうが、魔族とは初めて会ったからそういう印象はあてにならないと思っている。
まあそれを言うならエイルさんだって初めて会話した異世界人で俺の常識が通じない可能性だってあったんだ。リリスが魔族だから、ということにはならないか。
「それよりもリリスさんをどこに住まわせるおつもりですか?」
「あー、どうしましょうか」
ぶっちゃけ二階にある父と母の部屋を空にしてもいいとは思っている。
あの部屋は両親の痕跡が残っていてそのままにしようかと思っていた。
だが、俺のチートな箱庭の可能性がそうしなくてもいいんじゃないかと考え始めている。
今日初めて神々が住まう場所を攻撃したわけだが、そこで可能性を見出した。
最初俺の箱庭は異世界の別次元にあるものだと考えていた。だがそれは違っていた。
今日神々が住まう場所を把握した結果、この箱庭は全くの別次元にあると分かった。
神々が住まう場所は確かに異世界の別次元にあったが、ここは全く別の場所にあった。
通じるかは分からない。だがもしかしたら元の世界に行けるのではないかという可能性が出てきたからこう思っているわけだ。
「二階のもう一つの部屋にしますか」
「……いいのですか?」
「何がですか?」
「あの部屋は……大事になさっていたのではありませんか?」
……どうしてバレたんだろうか。俺が無意識のうちにそういう行動をとっていたのかもしれないが全く分からない。
まあさっきまで部屋を少し特別に思っていたから無意識に行動をしていたのかもしれないな。
「大丈夫ですよ。もう解決しましたから」
何なら隣にあるアパートに住んでもらうのもありだし。
「あ、あの! な、何なら私が優斗様の……いえ、その、忘れてください……」
「あっはい」
えっ、なに? ものすごく気になるんだけど!?




