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そして野生児は碧眼の姫に出会い、彼女と瞳に恋をした  作者: 内村一樹
第5章 野生児と人魚姫

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第53話 二階の小窓

 伝承でんしょうのことを話してくれた彼女は、その後、俺達に食事を振舞ふるまってくれた。

 って来たばかりだという魚や貝類かいるいを、見たことのない道具で解体かいたいしてゆく様は、とても興味きょうみぶかい。

 そうして俺達の前に出されたのは、刺身さしみと言う生魚なまざかなの料理だ。

 魚を生で食べるなんて経験けいけんしたことが無かったから、おどろいたけど、これがまた美味うまいんだよなぁ。


 腹ごしらえもしたし、少し休憩きゅうけいしたら、これからのことを皆と話し合おう。

 サンゴに腰かけながら、そんなことを考えていた俺は、同じように休憩きゅうけいしていたロネリーの元にテレサが向かって行くのを目にした。


 何やら短く言葉を交わした彼女たちは、ロネリーを先頭せんとうにして隣の部屋、壁画へきがのある部屋の方に向かってゆく。

 何か2人で話でもするのかな?


 気になるけど、ぬすみ聞きをするのは気が引ける。

 テレサにとって、ウンディーネは旧友きゅうゆうとのつながりを感じる存在のはずだ。

 だとしたら、ウンディーネを継承けいしょうしたロネリーに積もる話が合ってもおかしくない。


「さてと……少し散歩さんぽでもするかなぁ」

「ダレン、散歩に行くチ? なら、アタチ達もついて行くチ」

「僕も行って良いですか? 海の底を見て回るなんて、なかなかできないですし。それに、さっきからガーディもソワソワしてるので」

「サカナ。ウマかった! まだあっちオヨイデル! トリにいく!!」


 立ち上がる俺達を見たペポとサラマンダー、そしてガーディが口々に言った。

 それに対して、ペポの頭の上に寝そべっているシルフィが、気怠けだるそうに口を開く。

散歩さんぽくらいならいいけどぉ、全速力ぜんそくりょくでどこかにけてったりしないでよぉ? ウチの力も、万能ばんのうじゃないんだからね? 海の中にほっぽり出されたら、君らじゃどうしようもないでしょ?」

「そうだった。ガーディ。魚をりに行くのはやめた方が良いみたいだよ」

「ソウカ……ザンネンだ」


 心底しんそこくやしがっているらしいガーディの背中を軽く叩いた俺は、彼をなぐさめた。

「今度、またみんなで魚をりに来よう。その時は、しっかりと準備をしておけばいいだろ」

「またコレルのか?」


 目を見開いてたずねて来るガーディに、頭の上のノームが得意とくいげに話し始めた。

「ガーディ、良いことを教えてやる。オイラは道に迷わないんだ。一度来たことがある場所になら、何度だって行けるんだぜ! すごいだろ」

「スゴイ!! どうやるんだ!?」

「そりゃあもう、心の感じるままに突き進むのさ!!」


 胸元むなもとを右手の親指でし示しながら言ってのけたノーム。

 そんな彼に対して、冷ややかな目を向けるペポが、ボソッとつぶやいた。

「スゴイでたらめ言ってるチ」

「ははは。ノームだから言えることだよね。道に迷わないなんて、僕は言える自信じしんが無いから、うらやましいよ」

「サラマンダーは普通チ。おかしいのはダレンとノームっチ」

「あ~ばぶ」

「ほら、アパルもそうだって言ってるチ」


 そんなことを口々に言いながら、俺達は城の外に向かう。

 ロネリーだけがシルフィから離れることになるけど、彼女にはウンディーネとテレサが付いているし、大丈夫だろう。


「それにしても、綺麗きれいな城だよな」

「お城も綺麗きれいだけど、僕は土台どだいになってる大きなお花? も綺麗きれいだと思ったよ」

「あ、アタチも思ってたチ。これって多分、サンゴだチ。」

「へぇ、この大きなお花はサンゴって言うんだね。知らなかったや」

「俺も知らなかった。海の底には、こんなデカい花がくんだなぁって思ってた」

「アタチも、ここまで大きなサンゴは見たことないチ」

「これも、フェニックスの生命力せいめいりょくのおかげで、ここまで大きくなったとかなんじゃないか?」

「あぁ。それ、ありそうっチ」


 うなずくペポのとなりを歩いていた俺は、竜宮城りゅうぐうじょうの入り口である大きな門を通って、しろの外にみ出した。

 門の前には、サンゴの土台から海底かいていに降りる階段かいだんが続いている。

 そんな階段かいだんわきに広がっている高台たかだいに向かった俺達は、思い思いに周囲の景色けしきを眺め始めた。


 そんなおり、ふと竜宮城りゅうぐうじょうに着いた時の事を思い出した俺は、なんとなく城の方を振り返ってみる。

「どうした? ダレン」

「いや、そう言えば、竜宮城りゅうぐうじょういた時、チラチラと光るあかりが見えた気がしたんだよなぁ」

「あぁ、オイラも見た気がするぜ。でも、それっぽいのは何もなかったな」


 言いながら少し背伸びをした俺は、、改めて竜宮城りゅうぐうじょう全体ぜんたい視線しせんを走らせてみる。

「たしか、城の右の方の壁に……」

「お、ダレン。あれじゃないか? ほら、あの小さな窓」

「あぁ、本当だ。あった」

 ノームの指さした方に目を向けた俺は、すぐに光を見つけた。

 例のごとく、チラチラと明滅めいめつしているその小さなあかりは、城の2階にある小窓こまどかられているらしい。


「なんなんだろうな? あれ」

「どうかしたんですか? ダレン」

「サラマンダー。ほら、あの2階の窓を見てくれよ。何かが光ってるだろ?」

「え? どれですか?」

 俺がゆびさしたまどに目を向けるサラマンダーは、しかし、何も見えないのか頭をかしげてみせる。


 そんな彼にしびれを切らした俺が、サラマンダーを窓の方に向かってきかかえてみせるけど、結局見えないらしい。

 同じように、ペポとシルフィ、そしてガーディにも光のことを話した結果、俺とノーム以外に見えていないことが分かった。

「どういうことだよ? 俺はちゃんと見えてるぞ?」

「オイラも見えてるぜ?」

「アタチには見えないチ。見間違みまちがえじゃないチ?」

「僕もやっぱり見えないですね」

「オデも見えない。スマン」

「いや、あやまる必要はないぞ、ガーディ」


 小さく頭を下げるガーディにやさしく語り掛けた俺は、改めて小窓こまどを見上げた。

「……気になるな」

「何するつもりチ?」

 小さくつぶやいた俺を、怪訝けげんそうに見て来るペポ。

 そんな彼女に向かって肩をすくめて見せた俺は、頭の上のノームに合図あいずを送りながら告げる。

「ちょっと、あの窓を見て来るよ」

「道を作ることなら、オイラにお任せだぜ!!」


 威勢いせいよく頭の上から飛び降りたノームが、海の中をゆらゆらとただよいながら降下こうかしてゆく。

 そして、いつもより時間をかけて俺の足元に降り立ったノームは、一瞬立ち止まった後、城の壁の中にもぐり込んでいった。

「あれ? ノーム、もしかしてサンゴの中にはもぐれないのか?」


 俺のつぶやきに対して、誤魔化ごまかしをするように、ノームが城の外壁がいへき階段かいだんを作り出す。

 その階段かいだんを登って二階まで上がった俺は、目的の小窓こまどから部屋の中をのぞき込んだ。


「お、やっぱりあるじゃん」

 薄暗うすぐらい部屋の中心に、明滅めいめつするあかりを見つけた俺は、そうつぶやきながら小窓こまどを通って部屋の中に入り込む。

 何もないのに、どこか、息苦いきぐるしさを感じるその部屋に入った俺は、まっすぐにあかりの元に向かった。

「これは……?」


 足元にある何かを見下ろしながら言葉をらした俺は、まるで落とし物をひろうように右手を伸ばす。

 そして、温もりを感じそうな黄色い光に俺の手がれた瞬間しゅんかん、辺りが一瞬にしてはなやいだのだった。

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