↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして野生児は碧眼の姫に出会い、彼女と瞳に恋をした  作者: 内村一樹
第5章 野生児と人魚姫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/124

第52話 語り継がれて

 泳《およ》いで、と言うよりも海底《かいてい》を歩いて、テレサについて行った俺達は、紆余曲折《うよきょくせつ》を経《へ》て竜宮城《りゅうぐうじょう》に辿《たど》り着いた。

 とてつもなく巨大な花のような物の上に、磨《みが》かれた岩で作り上げられた竜宮城《りゅうぐうじょう》。

 赤や白、そして青に彩《いろど》られた華《はな》やかな見た目の城からは、遠くからでも見えるチラチラとした灯《あか》りが、時折《ときおり》顔を覗《のぞ》かせていた。


 あの光は何だろう?

 そんな疑問を抱《いだ》きつつ、俺達は竜宮城《りゅうぐうじょう》に続く階段《かいだん》を上がる。


「それにしても、本当に海の底を歩いて来れましたね。流石《さすが》、シルフィさんです」

「まぁね。でも気を付けなよ? ウチから離れすぎたら、空気が切れた時に直してあげられないからねぇ」

「それは怖いなぁ……僕、絶対にシルフィから離れないようにするよ」


 おっかない話をしているシルフィたちを余所《よそ》に、俺の横を走って駆《か》け上がって行ったガーディが、上の方を指《ゆび》さしながら叫《さけ》んだ。

「オイ! あれなんだ!? さっきのサカナってやつとチガウゾ!?」

 彼の指《ゆび》さす先には、何やら大きな布のような生き物が、優雅《ゆうが》に泳いでいる。

 テレサ曰く、それはエイと言う魚らしい。


「興奮《こうふん》しすぎですよ、ガーディ」

 笑いながらガーディに語り掛けるロネリー。そんな彼女を横目に見ながら、俺はガーディをフォローすることにした。

「まぁ、見たことない景色《けしき》だし興奮《こうふん》するだろ。正直、俺も色々と見て回りたいのを抑《おさ》えてるくらいだ」

「気持ちは分かるチ。アタチも海の底を歩いたことは無かったチ」

「ペポに関しては、ずっとシルフィと一緒に居たわけだから、来ようと思えば来れたんだよなぁ?」


 俺の指摘《してき》を聞いたペポは、心外《しんがい》な! とでも言いたそうに目を見開いて、告げた。

「シルフィがこんなことできるなんて、知らなかったチ!」

「そりゃそうだよ~。だって、ペポに言ったら、絶対に連れ回されるに決まってるじゃん。ウチは昼寝したいってのに」

 それもそうかと俺が言おうとしたその時、先導《せんどう》していたテレサが、俺達の方を振り返って言う。

「さぁさぁ、おしゃべりはその辺にして、これを見てごらんよ」


 言われるままにテレサの後について、竜宮城《りゅうぐうじょう》の中に入った俺達は、入り口の広間と思われる場所で、荘厳《そうごん》な壁画《へきが》を目の当たりにした。

「わぁ……これは」

「この壁画《へきが》はね、私達の間でずっと語り継《つ》がれてる伝承《でんしょう》を示してるんだよ」

 彼女の言う通り、この壁画《へきが》は横長《よこなが》で、何やら物語性《ものがたりせい》のありそうな絵が描《えが》かれている。


 思わず感心《かんしん》して壁画《へきが》を見上げていると、不意にサラマンダーが周囲を見渡しながら言った。

「私達って言う割《わり》に、他の人魚《にんぎょ》はいないみたいだけど?」

「……あぁ、うん。そうなんだよねぇ。実は私たち、もう残り少ないんだ」

「そっか。ごめん」

「ううん。良いの」


 少し気まずい空気が、周囲に充満《じゅうまん》した。……ここは海底だし、この場合、充満したのは海水かな?

 なんて、どうでも良いことを考えていると、話題を変えようとするようにペポが口を開く。

「……その伝承《でんしょう》ってどんなものチ?」

「とても古いお話で、この竜宮城《りゅうぐうじょう》にまだ沢山の人魚が住んでた頃のお話なんだ」

「それがこの絵かな? 竜宮城《りゅうぐうじょう》の周りに沢山の人魚が描《えが》かれてるね」

 テレサの話を補足《ほそく》するように、サラマンダーが鼻先で壁画《へきが》を指《さ》し示した。彼の言う通り、壁画《へきが》の左端《ひだりはし》の方に多くの人魚と竜宮城《りゅうぐうじょう》が描《えが》かれている。

 竜宮城《りゅうぐうじょう》の見た目が、今いるこの竜宮城《りゅうぐうじょう》と少し違う気もしたけど、まぁいいだろ。


「そう。そんなある日、この海の上に冷気を纏《まと》った幻獣《げんじゅう》が現れたんだ。名前は、雹幻獣《はくげんじゅう》ネージュ。そのネージュのせいで、このあたりの海が殆《ほとん》ど凍《こお》り付いちゃうんだよ」

「海が凍《こお》り付いたチ!? それはヤバいチ」

「それはこっちの絵だね。この白い鳥《とり》がネージュかな?」

「そう。その当時の人魚たちも慌《あわ》てたけど、ネージュは冷気《れいき》を纏《まと》った鳥型の幻獣《げんじゅう》だったから、手も足も出せないままに、皆次々に氷漬《こおりづけ》けにされてくの」

「ひどい……」


 テレサの話した光景《こうけい》を想像《そうぞう》したのか、ロネリーがぽつりと呟《つぶや》く。

 そんな彼女の様子を見て、小さく笑みを浮かべたテレサは、更《さら》に言葉を続けた。

「海は凍《こお》っちゃって、食べ物の魚も数が減って、人魚たちは全滅《ぜんめつ》寸前《すんぜん》だったらしいんだけど、そんなとき、別の幻獣《げんじゅう》が姿を現すの」

「別の幻獣《げんじゅう》?」

「そう。壁画《へきが》でいう所の、ネージュと対《つい》を成《な》すように描《えが》かれてる赤い鳥だよ。名前は陽幻獣《ひげんじゅう》フェニックス。別の名を不死鳥《ふしちょう》って言うんだって」


 その名を聞いた俺達が、反応しないわけがない。真っ先に声を上げたのは、ペポだった。

「不死鳥《ふしちょう》……さっきも思ったけど、それって、不死《ふし》ってことチ!?」

「私も詳《くわ》しいことは知らないけど、そう言われてるみたいだよ?」

「それで? フェニックスは何をしたんですか?」

 食い気味《ぎみ》に反応するロネリーに圧倒《あっとう》されて、少し戸惑《とまど》いながらもテレサは話を続けた。


「うん。フェニックスがやって来たのを見たネージュは、一目散《いちもくさん》に西に逃げちゃったんだって。そんなネージュを追いかける前に、フェニックスは自分の身体を燃やして、凍《こお》ってた海をとかしたんだ」

「すごい……僕でも、凍《こお》っちゃった海をとかすのは大変そうなのに」


 少しズレた感想《かんそう》を述べるサラマンダーに、苦笑《にがわら》いしながらテレサは語り掛ける。

「サラマンダーもできそうだけどね。そして、ここからが肝心《かんじん》だよ? 海をとかしたフェニックスは、氷漬《こおりづ》けにされてた人魚や魚たちを見て、涙を落としたの。そして、その涙が海に落ちた途端《とたん》、息絶《いきた》えそうだった多くの海の生き物が、一気に元気を取り戻したんだって」


 一息で言ったテレサはそこで一旦言葉を切った。

 聞いていた俺達も、まるで自分の中で何かを噛《か》み締《し》めるように、黙《だま》り込む。

「これが、私達に代々伝わってる伝承《でんしょう》」

「壁画《へきが》でも確かに、フェニックスが涙《なみだ》を落としてるね」

「ってことは、そのフェニックスこそが、莫大《ばくだい》な生命《いのち》を持ってるってことだよな」


 まるで話を整理《せいり》するようにそう言った俺は、自分の中で1つの道筋《みちすじ》が見えた気がした。

 取り敢《あ》えず、フェニックスを探すのが最優先らしい。

 もし見つけることができれば、16年前に失敗した俺達の役目とやらを、完遂《かんすい》できるかもしれない。


「道が見えたな」

 頭の上でそう呟《つぶや》いたノームに、俺は頷《うなず》きながら応《こた》えたのだった。

「あぁ」

書き方を少し変えてみました。

読みにくい等のご意見がありましたら、教えて頂きたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。