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出会いは突然だった……

短編ぽくない短編。短めのやつですが二、三話続けます。よろしければどうぞ。

 


 初夏の事だ。


 それは突然だった。


 こんなクソ熱いにもかかわらず、ダメージジーパンを履き、長袖の赤いパーカーを身に纏い背中には銀と金を基調とした大剣を背負った幼女が大型トラックに轢かれそうになっているところに。


「あっ!」


 声をかけようにも遠すぎるし、ここから猛ダッシュしたとしても到底間に合わない距離。


 死んでしまう……そう、思っていた時期が私にはありました。



 ◇◇◇◇◇◇


「おい、喉が渇いた。コーラを所望する」

「へいへい、分かったよ。んで、何処のがいいんだ?」

「お主はなにを言っているのじゃ。勿論ぺ○シに決まっているだろう」


 可愛らしい顔をしたその幼女……じゃなくて、剣士ちゃんは自らの身長よりもデカイ大剣を背に担ぎ、ギャアギャア騒いでいた。


「もう、なんでこうなったんだ?」


 こうなってしまっては後の祭りだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 時は数時間前に戻る。


 トラックに轢かれそうになった幼女は背中にある大剣を重そうに引き抜き担ぎ上げると、そのまま剣を縦に振り下ろした。


 うそ!!


 大剣がトラックの触れるか触れないかくらいの距離、すれすれを通るように振られた一撃は、その場で爆散し、人では到底受け止めることができぬであろう衝撃が生まれた。


 耳を破壊しかねない爆音、体を宙に浮かせるような衝撃波にも似た空気の塊は見事トラックを中央ですっぱりと切断した。斬られたトラックは車体を左右に倒し、アスファルトをゴリゴリ削り、大量の火花、オイルを撒き散らし数十メートルも引きずったのちようやく止まった。


「いって……クソッ、何しやがるクソ餓鬼ーーお前のせいで俺のトラックが壊れちまったじゃねーか! どう責任とってくれるんだ、あぁ!?」

 車の運転手であろう男は頭から血を流す。


「なんじゃ!? 私を轢き殺そうとした分際でよくもまあそんな事が言えたものじゃな!! よほど死にたいようじゃな、どれ、剣の錆にしてくれようか?」


 妖艶に唇を舐め回し、振り下ろされた大剣をトラックを運転していた男に向ける。

 剣を向けられたことに若干怯む男性。

 男性も負けじと袖をめくり、肩に入っているドクロの刺青をあらわにする。

 その様子に幼女は臆することなく、男に冷たい視線を向けた。


 男性の後ろから小さな爆発音が聞こえた。それと同時にトラックの中から火が立ち上がる。その火はメラメラと勢いを増し燃える。


 どうやらガソリンタンクからガソリンが漏れ先程の火花で引火したのだろう。

「やべっ」

 幼女の顔をチラリと見ると顔を引きつらせているのが見えた。


 数秒後物凄い爆発音とともに、男の姿が掻き消えた。

 わらわらと野次馬たちが集まりだした頃、サイレンの音とともにパトカーが三台ほと現場に到着し、野次馬を裂き俺たちのへとやって来た。

 パトカーから降りて来た警察官の方々は帽子を浅く被りバインダーを片手に俺と剣を持つ幼女の所に赴いた。

「何があったか事情を説明してもらえますか?」

 幼女は顔を膨らませ、目を鋭くするが、大人しくパトカーに乗るようだった。

 一旦その場は警察が持つようで、幼女は警察署へと連行された。

「君も当時の状況を聞きたいから来て入れないか?」

 その場にいた俺も警察に呼ばれパトカーに乗ることになり、その場をあとにした。

 後から聞いた話だが幼女が持っていた大剣は銃刀法違反との事で一時的に取り上げられた。

 それと、爆炎に巻き込まれた男はなんと生きていたそうだ。だが、人一人をひき殺そうとしたんだ。それ相応の処罰は降るらしい。

 俺にはなんら関係もないが。



 警察の車に乗せられる……その事に怒った幼女は、警官たちを次々と殴り飛ばした。なんて事はなく大人しく手錠をかけられ署へと連れていかれた。



 そこでなんやかんや説明を終え、一時的に釈放? みたいな形で返される事になった。


 そして現在に至るわけであるが。



 ◇◇◇◇◇◇



「おい、何をしているのじゃ。早くペプ○を持って来ぬか。喉が渇いたと言っておろうに」


 と、今現在このように使いっ走りにされています。

 俺が何をしたっていうんだ。

 まぁ、可愛いから。その、許す。

 ロリコンが好きな俺。倉本隆二はしみじみと幼女を観察しつつ、冷蔵庫にある○プシをワイングラスに注ぎ幼女へと渡してやった。


「うむ、ありがとう。そう言っておこう」

 一言余計だっつうの。

「それでお前、何処から来たんだ?」

 ワイングラスを優雅に回し、口に含む前にコーラの匂いを嗅ぎ、まるでテイスティングでもしているのか? と感じさせる何かがあった。

「むぅ? なんじゃわしのことを知りたいのか? ふふんっいいじゃろいいじゃろ。教えても良かろう」

 俺の突然の質問になぜか上機嫌になった幼女は警察官から返してもらった大剣(分不相応)を片手で振り回し喜びを表した。

(先程から危ないから閉まってくれと懇願? しているのだが効いてくれる素振りすら見受けられない)


「取り敢えず名前からいこうか。わしの名はクレデリア・フォン・アルトリアス気軽にリアと呼んでくれて構わないぞ! 皆わしのことをそう呼ぶからな」


「へ、へぇ〜そうなんですね。リアさん」(真顔)

「むぅ、なんじゃさん(・・)とは。失礼なやつじゃな。リアと呼べ。特別に許してやろう」

 誰の許可でお前の名前を呼び捨てにしなければならないのだ。全く面倒なお子さんだ。


 俺の言葉が顔に出てしまったのだろうかは知らないが、少し顔を膨らませていた。

「え、えっと……どうされました?」


「いや、何でもない。それでお主の名は」

「僕ですか?倉本隆二僕はと言います。えっと、りゅうじって呼んでください」


「下僕を名で呼ぶなと笑止千万。これからはゴミ。そう名乗れ」


 いやいや、嫌だよ。

 何でゴミなんだよ。

 せめてりゅうたんとかにして欲しかった。(ん? なんだ。俺のネーミングセンスに問題があるなら聞こうじゃーないか)


 文句がありげな顔をすると大剣を顔に近づけられ、「ほれ喜べ、ゴミ」と言ってくる。

 俺の中のSAN値と共に何故か湧き上がってくるこの喜びは何なのだろう。新しい境地がひらけそう!!


 今度病院に行って来なきゃ!


「わ、分かったよ。ゴミ。ゴミでいいよ〜めんどくさいし」


「なんじゃ。この愛しいき幼女様がお主に名を付けてやったというのにその返しは無かろうて」

「いや、でもな」


「ほほぅ、お主。わしの剣の錆になりたいようじゃな。良かろう覚悟し……」

「わ、分かったから。ありがとうございます。リア」



「それで良いのだ。それで、先ほどの続きといこうか」

「続き?」


「ん? もう忘れたのか?自己紹介じゃよゴミ。全く鳥ほどの脳みそしかない男よの〜使えないにも程があるじゃろうて」

 やめて、そんな目で見ないで……。

 何故か心がときめいちゃうから。


「す、すいません。自己紹介でしたねは、ハハ」

 渇いた笑みを浮かべ、興奮する我が身を抑え込み、なんとか理性を整え質問を開始する。

「じゃあ、出身は何処なのですか?」

「そうじゃな〜」

 と、言うとリアはジーパンの後ろポケットから一枚の古びた地図を取り出し、「ここじゃ」といい、指をさした。


 俺が生きて来たこの十八年間、一度も見たことがない地図それに変わった形をした島々、そして見たこともない言葉が使われていた。とても不思議な地図でした。語彙力の無さ……。



 そんな俺を何やら心配そうに見つめるリアは、「どうしたのじゃ?地図が読めぬのか?」と、言ってきたがそもそもそんな問題じゃない。


 これは地球の地図ではないのだから。


「へ、へぇ〜こ、ここに住んでいらっしゃるのですね」


「どうしたのじゃ先程から変じゃぞ?昨日の晩何か変なものでも食べたのではないか?」

 いや、絶賛変な奴と会話してる方が体壊しそうなんだけど。


「い、いえ。なんでもありません」

「そうか?ならいいのじゃが」

 若干のしこりを残しつつ話は進む。


「それで、ゴミお前はどの辺なのじゃ?」


「え、えっと……分かりません」

「なんじゃゴミ生まれ故郷すら分からぬのか? はぁ、先が思いやられるわい」


 いやいや、思いやられてるのはこっちだから!!


 そんな会話をしていると、ドアを叩く音がしたので、リアにそこで大人しくしているようにと頼み、玄関へと向かった。


「はい? 何方ですか?」

 ドンドンドン。


 ドアを叩く音だけが聞こえ、仕方なく覗き穴から見てみることに。


「ん?」

 そこに立っていたのは、リアと同じくゴツい剣を携えた、金髪美少女がいた。


「え?」

 思わず 変な声が出てしまい、心配そうに柱越しにリアが俺のことを見てくるが、いやいや、そんなことではなくこの子はいったい誰だろうと疑問を浮かべていると。


「あの〜すみませーん。ここに、リアって子いませんか?いたら出て来てほしいのですよ〜うふふっ」

 ドア越しに可愛らしい怒声のこもった声が聞こえた。

「うげっ」


 俺の後ろからリアの変な声が聞こえて来た。


 ふと後ろを振り返ると、ベランダのドアを開け飛び出そうとしているリアを見つけた。


「なあ、そのリアって子は小さくて、大きな剣を携えたこの子とか?」


「あらあら、そうですよ〜小さくて、可愛らしくて、とっても意地汚い子ですよ〜」

「だ、誰が意地汚いじゃ! たわけ者」



 ドアを蹴破りその超絶美少女は飛び出して来た。

 唖然とする俺をそっちのけに少女と幼女の口論はまだまだ続く。

「あらあら〜やっぱりここにいらしたのですね〜ささっ、お父様とお母様が心配なさっていますわよ。帰りましょ〜」


 妙に色っぽい声で呼ぶ声が部屋に響く。

 お姉さん属性のない俺には全く効果がないが、どうやらリアには効くようだ。


 再度後ろを振り返ると、そこには大剣を構えたリアの姿が。

 どうやら逃げる事を辞めたらしい。

(後から聞いた話だが逃げたら死よりも恐ろしい事が待っているのだとさ)

 俺には知った事ではないが……。


 おいおい、こんな所で争いなんて辞めてくれよな。

 近所迷惑なんだよ〜とも言えずただ、玄関でへたり込むことしか出来ない俺だった……。


 数秒の睨み合いが続き、先にブチ切れたりお姉さんが大剣を抜く。


「いやぁぁぁぁあ! やめて!」

 俺の必死のやめてコールも虚しく戦闘が開始される。

 蹴破られたドアは一体誰が直してくれるのだろうか?

 そんな検討も付かない事を余所目に、リアとお姉さんは互いに剣を交えていた。





 ◇


 そして、二十分後……。やっと決着が付いた。床にはコーラ、布団のワタが飛び出し、大事な書類はボロボロになり、皿は全て粉々。壁にはいくつもの大きな傷が残る。


「終わった…………」

「ふぅ、終わったわ〜♩」


 そこには絶望し、打ちひしがれた俺と。

 頬を赤く染め、汗をタオルで拭き取るやり切った感を出すお姉さん。

 ボコボコにされ、簀巻き状態のリアというなんとも表現し辛い状況がここに完成されていた。


「あ、あの〜す、すみません……」


「はぁ……俺の私生活が」

「あの〜すみませ〜ん」

「……はい、なんですか……」


 大剣を肩に担ぎ、申し訳なさそうにしているお姉さんはポケットの中をガサゴソと探り、一枚の封筒を取り出してきた。

「つまらないものですけど……これ」

「? なんですかこれは」

「開けて見てください」

 どれどれ?

 開けてみるとそこには変な文字が書かれた紙と、針が備え付けられていた。


「あの? これは?」

「説明が面倒くさいので勝手にやってしまいますね……」

 リアは備え付けてある針を手に取った。そして、私の人差し指を強引に掴み針を突き刺したのだ。

「痛い! なにするんですか!」

「えっと……確か?」


 彼女は出血している指をその手を手紙らしきその紙に押し付けた。


「ふふふ、貴方は選ばれたのです。そう! 私に!」

「はあ? 何が?」

「ともかくです。契約は受理されましたので飛びますね。ほら魔法陣が開きましたのでどうぞこちらに!」



 俺の布団の上に青白く光るサークルが現れる。


「クンカクンカ? なんかイカ臭くありませんか?」


「…………」


 お姉さんが言ってはいけない事を口走る。

 俺は冷や汗を滝のように流し、プルプルと手を震わせる。


「あの……ひょっとして抜いた?」


「やめてください死んでしまいます……それと、その醜い豚を見る目で俺を見ないでください」


 新たな扉が開かれました……!


 はぁ、なんて清々しいのだろう〜。

 これが、Mというやつなのだろうか……。


 フッ、恐れることはない。

 今なら何を言われようとも興奮出来そうだ。


 おめでとう、倉本隆二はドMへと開花を遂げた。もう、何も怖くない!!



「それで、自身の息子を撫で回し挙げ句の果てにその匂いを私に嗅がせるゲス野郎は一体なんでそんなに顔を赤くしているの? 死ぬの?」



「ふへへ、待ってください。俺は変態じゃない」


 いえ、特殊な変態です。


「で、でも。その興奮を彷彿させる息遣いは変態のそれではありませんの?」


「違う、俺は変態じゃない」


 いえ、どこからどう見ても変態です。


「わ、分かったわよ。そんな気持ちの悪い笑みを浮かべながら鼻水を垂らし口からよだれを垂らした状態で、私に抱きつかないで下さい。死んでしまいます」



「ほへ?」


 気がついた時には遅かった……。



 俺の眼前には禍々しく黒い渦を巻く大剣が突きつけられていることに。

 そして、ゆっくりとその剣先を眼孔に刺されようとしていることに……。



「す、すみませんした!!! 俺が悪かったので、どうか、ここは俺の顔に免じて許してください」


「ど、どの顔が言うのよ。変態、ウジ虫、クズ虫、ダンゴムシィィィィイイイ!!!」



「最後違うと思うのですけど……」


 金髪の美少女は大剣を振り回し、駄々をこねた。

「やめて、家が本当に崩壊するから」


 俺の悲痛な叫びは十五分にも及んだ……。




 ◇



 ひとしきり暴れたお姉さんは、自己紹介を唐突に始めた。



「ごほん、先程はお見苦しい所をお見せしましたこと、深くお詫び申し上げます。ま、キモいのには変わりないですけど……と、私の名前は、シルフィー・フォン・アルトリアス。これだと長いのでシルフィーと呼んでください。このゴミ野郎」


「きゃ! 有難うございます」


「うげ、なんで喜んでるのよ〜。はぁ、なんでこんな奴に私惚れたんだろ……」


 後半よく聞こえなかったか、俺はゴミと呼ばれた事に興奮するあまり、倒れてしまった。



 ◇



 目が覚め、あたりを見渡す。


 …………ん? ココドコーー!?


 白塗りの壁、高価そうな壺、薄緑色のベットからはシトラスのような甘い香りがした。


 大きく息を吸い込む。



「…………ここはどこやねん!!!!」



 ガチャリ



「全く朝っぱらからうるさいわね」


「えっと、誰?」


 白いワンピースに赤い紐がついた麦わら帽子。

 顔は幼げで身長小学五年生といった所だろか。ま、背中に大剣を担いでいる時点であの姉妹と何らかの関わりがあるのはわかるのだけれど……一体幾つなんだろ?



「おい、お前。私の年が気になるなら教えてやろうじゃないか」


「え、俺の考えてた事……。どうして?」


「顔を見れば分かる。お主の年、性別、性癖、好きなタイプ、それと考えていることもな」


 さらっと性癖を述べたのはスルーしておこう。


 バレてる……のか? 俺がロリコンでドMで変態のくそやろだって事も。

 生唾を飲み込む。

 妙な緊張感が俺を襲う……。


「それで、そこのロリコンマゾ変態野郎さんはどうしてここで寝ているのかな〜?」


 あ。ダメだバレてる〜!



「えっと、目を覚ましたらここに居て……」


「変わった泥棒さんなんですね……人の家で寝泊まりしていく泥棒なんて聞いたことありませんね」



「ち、違うんです。変態はともかく泥棒ではありませんよ〜。なんか、リアとシルフィーに色々やられて気失って……それで起きたらここに居たんですってば。それと、その醜い豚を見る目で見ないで下さい」


 興奮してしまいます。


「興奮するな戯け」


 あ、バレてる。


「はぁ、もう良い。私の名前はレスト・フォン・アルトリアス。シルフィーとリアの母だ。

 なんじゃ、その目はわしが嘘をつくと思うのか?」


「え……」

 知る訳ね〜初対面なのにそんなことわかるはずね〜どうしてだろう。俺この人嫌いだわ。

 うん、ダメな人だ。罵ってくれるのは良いけど、言葉になんか裏がありそうで……。



 ま、背が小さいのとちっぱいはポイント高いです!


 と言うかお母さんの身長小さいんだな……ふむ。

 俗に言うあれか……忘れたけど。


 そんな事よりもあいさつあいさつ。

「これはご丁寧にありがとうございます」


「うげぇ、変態にやられると一段とキモいわね」


 シルフィーとリアが扉越しにこちらを観察しているようだったが俺のこの形容しがたい醜い態度がどうやらお気に召さなかったようだ。


 酷く変な顔をしている。


「おい、そこの変態。話があるなら聞こうじゃないか!!! あぁ?」


 ガンを付けてくるリアをよそ目に、大剣に手を当てるシルフィーの顔は満面の笑顔だったのを俺はよく覚えている。



 ◇



 なぜか痛い背中をさすりながらテーブルに着く俺とその他の面々。


「あの……なんで俺の背中がこんなにも痛いんでしょうか?」


「・・・」


 なぜか黙り込む面々は、静かに手を合わせ食事に対し祈りを捧げていた。


「おぉ主よ、我らに栄光の祝福と子孫の繁栄を願います。今宵このような食事にあり付けますわ、それは主がいてこそ……永遠の祈りを捧げます」



「いただきます!?」


 俺の言ったいただきますが皆の視線を集めた。

 え……? 俺何か変なことでも言ったのか?


「おいゴミ! 今のはなんじゃ!」

 リアが問い詰めてくる。テーブルから身を乗り出し、眉間にしわを寄せ両手にはフォークとナイフを持ち赤いテーブルクロスにしわをつけていた。


「何って食べる時の挨拶みたいなものだよ?」


 シルフィーは困ったように首を傾げ、レストは無心で牛乳を飲んでいた。


 レストさんそれ以上身長は伸びないと思います。

「何ですか? 変態さん私はまだ成長期ですよ〜?」

 すみません疑問形で言われても俺には返す言葉がありません……?



「そんな事はどうでもいいのじゃー! 何じゃというておろうが」

「いや、だから……」

「あれは勇者達が皆口にする言葉であってお前のような変態で気色悪くてゴミのお前が勇者な訳がない。一体なにを隠しておる」


 ままま、まさかこの俺か勇者だと…………いや、ないな、あるわけがない……うん、たとえ天変地異が起きたとしてもこの俺が勇者になれるわけがない。ラノベじゃあるまいし……な〜……。


 若干期待もしてますが……というかリアの疑ぐりの目が怖い件について。


 女の子がそんな目をしてはいけません!


 今度お話しでもしよう。


「リアよ、俺が勇者に見えるかな〜」

 ダメだ、若干期待しているせいか顔がにやけてしまう。


「なに言ってんの……?」

 リアとシルフィーがかわいそうな人を見る目をしている。


 何故か高揚する俺の心臓よ鎮まれ。

 俺の隠れていないドMをにやけ顔を全力でスルーしリアとシルフィーは自身の食事に戻った。


「あ、そう言えば何ですがここって因みにどの辺なんですか?」


 俺の言葉に三者三様に首を傾げた。

「え?」

「なして?」

「何故じゃ?」



 レストさんシルフィー、リアはまだかと言う目をした。

「あの、いい加減にしてもらえませんか? いま食事中ですよね」

「はい、そうですね」

「ここでの食事のマナーってやつを知らないんですか?」

「はい、全く」

 やれやれとレストは首を振る。

「食事中は押さない、走らない、喋らないの鉄則。そう、おはしを知らないんですか?」

(それ、俺たちの国の災害があった時に使うやつだよな……というか押さないって何だ? バーゲンセールでもやってるのか?)

 どうでもいい事を脳裏に過ぎらせ俺はおとなしく食事に戻ることにした。

 それに満足した様子のレストは使いづらそうにフォークとナイフでどでかいお肉を切っていた。

 まさかあの量を一人で? いやいやまさか……ね。


 ま、俺の食事は……何これ、ドックフードかこれ?

 このコロコロとした固形状の物で色は濃い目の茶色、匂いは無くお皿の上には山盛りに盛ってある。

(ドックフードって……俺は犬か何かか?)

 眉を細め、考察しているとリアが小声でちょっかいを出してきた。


「何をしとるのじゃ? 早く食べぬか!」

「いや、でもこれ」

「あぁ? 何かありましたか?」

 ごめんレストさんその目は怖いです。というか最初の方ヤクザみたいな声してましたけど本当に普通の人ですよね? 大丈夫かな?

「い、いえ。特に何でもないです」

「そうですか……お気に召してくださいませんでしたか? その犬の餌」

(あ、察し)


「え、えぇ、ですがいま俺そんなにお腹空いてなくて……」

 グゥ〜

「お腹の方は正直な様ですけど??」

(…………)

 やっべ逃げ場がねー。


 食べるしかないのか……これを。


 手元に置いてあるスプーンでドックフードを二、三粒取ってみる。


 あ〜思い出すな……実家で飼っていた太郎の事をーー。

 柴犬のコロコロしたやつでいつも俺の鼻を噛んだっけ……毛むくじゃらでごわごわとした毛で……あれ? 俺あいつに噛まれてばっかじゃなかったか?

 ヨクヨク考えたら手とかお尻とかもガブリと行かれたような……そう考えるとなんかムカムカしてきたな……。

「どうしたんですか? 食べないんですか?」


 レストが頬を赤くし興味深々なご様子で俺を見てきた。この人多分心読めるから俺の考えてる事、分かるんだろうな……酷い人だー。

「い、いいいた、だきま、まます」



 スプーンをゆっくりと口に運ぶ。まるで毒味でもしているかの様だ。

 ちょっと涙出てきた……。


 リアとシルフィーは無言で自身のご飯を貪っている。

 時折俺の方をチラリと覗き鼻で笑う。

 こいつらマジで酷でー。


 スプーンが口に当たる。乾燥したクッキーの様な舌触り、ビーフを乾燥させた様な匂い、少し薄味のビーフスープ的な奴の薄めた様な味で悪くはない、寧ろ普段の食生活からしたら美味しい部類である。

「いける……な」


「え?……え!?」

 レストはに度見した。

 見事な二度見だ……完璧までなタイミング反応。


「ど、どうしてそんなもの平気で食べられるのですか? しかもそんなに味わう様に噛み締めて食べてるなんて……ありえない」


 横目でリアが俺を見るがすぐさま自身の食事に戻る。

 ナイフを使いデカデカとした丸太肉を上手に食べている。

 食事のランクとしては天と地の差なのだけれどこれはこれでありである。

 興奮してしまいますな〜。

 レストが難しそうな顔をしていた。


「どうして、こんなものが食べられるの? 犬なの下僕なの奴隷以下のクソ野郎なの?」


 小さな声で俺を罵倒してくるのだが、俺のドMセンサーがその声をキャッチするのだ。くっ!

 地獄耳ならぬドM耳と改名しなくては……。



 くだらない事を頭の片隅に置いておきドックフードを三日間飲み食いしていない獣の様に貪る俺。

 確か前の食事は二日前に食べたポップなコーンだったか?

 味付けに醤油だけと言うなんともシンプルな一品。少し前に一キロ五百円と言う破格な値段で売っていたところを衝動買してしまったものだ。

 貧乏でお金のあまりお金のない俺に取っては天使が手を差し伸べているかの様にも見えたのだー。

 一通り俺が食べ終わる頃には皆一様にドン引きしていたのだが、俺的にはそれもデザートに含まれるので素直にありがとうと賞賛を送りたい。


「全部食べたの? お腹壊せばいいのに」

 シルフィーが出荷される豚を眺めるドSな眼をしていたので声をかけてみることにした。

「どうした? シルフィーも食べるから」

「いらないわよ。そんな家畜にあげる餌なんてわたし達は人間よそんな常識のない事をしないわ」


 大剣で俺の住む部屋を壊滅させたのはどこの姉妹だったか……?

 そんな奴らに常識とか歌われたくない。


 そんな事を考えつつもいつもどおりにへりくだり相手を立てる俺。

「ぐへへ、ありがとうございます」

「おい、ゴミ。それはへりくだるとは違うと思うぞ?」

 リアが的確なツッコミを入れてきたが我関せずで無視をした。


「ほほぉ〜わしを無視するとはいい度胸た。庭に出るがいい!!」

「……え〜嫌だよ。そのご自慢大剣で切られた日には俺は興奮して夜も眠れなくなってしまう。それでもいいならお願します。寧ろやって下さい」

「うげぇ、そうだったこのゴミはこう言う奴だった……」



 お腹を抑え気持ち悪そうにしているリアを見捨てると、レストが話しかけてきた。


「それで、あなたはどこから来たの?」






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