第29話 ときそら病院
「ここは、、。」
「起きたか、ここはときそら病院。
昨日の晩、お前さん、町中で気を失ってここに運ばれてきた。」
「昨日、、、。
あの生意気で妙なメイド女に何かされて、そら恐ろしいものを見た、、、その後は、覚えていない。
変な薬でも盛られたのかもしれない。
俺はあれから、ずっと気を失っていたのか。」
「命の恩人に、そんなことを言うものではない。
このバチ当たりが。
お前さんの体、元気そうに装っても、内臓はあちこちボロボロだ。
あの方がここに連れてこなければ、お前さん、どっちみち、生き倒れになってあの世行きになるところだったぞ。」
医者は、いくつかのMRI写真を見せて説明した。
「その女性は、むしろ、お前さんにとって最後の幸運の女神だ。
ありがたく思え。」
「しかし、あの女、俺1人だけなのに団体さんとか言いがかりつけやがって。
それに、あいつ、俺に何かして、ひどい幻覚まで見せやがった。」
「1人だけ、、か。
あれは幻覚ではない、真実だ。
大人だけじゃない、子供もたくさんいたようだ。
お前さんも、薄々気づいてるのだろう。
認めたくはないだろうがな。」
「上の命令に従っただけだ。
命令は絶対だ、疑問や反論は許されない。
俺は、AIを駆使して候補を選んだだけ。
最後のボタンは押していない。」
「それで、自分には責任が無いと、、、。
まあいい、死にたくなければその仕事は止めることだな。
診断書と写真は渡す。
それを見せれば、とりあえずは長い休みを貰えるだろう。
その間に、ゆっくり考えてみるがいい。」
「俺と一緒にいたという団体とやらは?」
「ああ、あの方が話して、そして歌って去ってもらった。
難儀なことだ。
帰るべき所に帰ったんだろう。」
「じゃ、もう誰もいないのか?」
「いや、1人だけいるな。
うむ、この国の老人に見える。
お前さんを心配しているようだ。
感謝するがいい。
お前が完全に喰われるのを、必死で守ってくれた人だ。
あの方も、この老人の為にと、お前さんを助けたんだろう。」
「この国の老人、、。」
「ああ、お前さんをやさしい目で見守っている。」
その夜、男は懐かしい夢をみた。
小さな川のほとりで、いつもの通り2人は釣りをしていた。
思い悩む少年にじいちゃんは言った。
「お天道様はいつも見ておる。
お前が、正しいと信じることをしろ。
自分の頭と心で考えてな。」




