第26話 キラキラ星
「さてさて、どんな装置かな。わくわく!」
「仕事よりもカラオケ命、時空を超えるカラオケマスターと称される、エージェントピンクの協力で実地試験済みです。
この1〜10のつまみを調整することで、下手くそレベルを自在に変えられます。
天女様は、基本の歌唱力が、人間の生命活動停止レベルに高いので、安全第一でつまみを9にしてっと。
ちなみに、エージェントピンクはつまみ5で、死んでもマイクを離さない、近所の酔っ払いおじレベルになりました。
まずは、このヘッドセットマイクを付けてください。
そして、ささやくように歌ってください。
地声が漏れると、人間にとって極めて危険ですので。」
「よし、分かった。
ヘッドセットマイクを付けてっと。
試しに何か歌ってみるか。
さて、いい練習曲はあるかな。
ひろし殿、何かおすすめはないかの。」
「うーん。ヘタうま、ヘタかわ、女性歌手。
、、そうだ、あの人はいかがでしょう。
日本の歌謡界に燦然と輝く、ヘタかわの金字塔。
可愛くて、癒し系で、ほのぼのした飾らない笑顔が魅力のあの方。
動画あるかな。
よし、あった。
そう、この方です。」
「なんと、こ、これは、かわいい!
素晴らしい、、ふむふむ、、だいたい分かったぞ。
渚さん、悪いが、カラオケを流してくれるか。
よし、歌ってみるぞ!
危険だと思ったら、すぐにストップしてくれ。」
「キラキラ、、の星、、キラキラ、、星。
わたしの星をあげる、、、」
「かっ、かっ、かわいい、、。
まさしく、これは、
ホタテの星からやってきた。
ほーみん!」
「キラキラいつまでも。」
〜パチパチパチパチ〜
「うぉ~!」
「みんな無事か。」
「みんな、生きています。
天女様、やりました。大成功です!」
「天女様、凄いですよ。
ほっとけないけど、もう、ほっといて!って感じの、異論を寄せつけない孤高のヘタかわアイドル。
平成以降、こんな崖っぷちの歌を聴いたことないです。」
「ありがとう、まずはみんな無事で安堵したぞ。
それで、これはどんな仕組みなのだ。
まさか、最近流行りのAIとか使って無いだろうな。」
「はい、天女様があまりAIを好まないことは承知しています。
この装置は、言ってみればエレキギターのエフェクターを応用したものです。
清らかな声を歪ませてダミ声にしたり、トーンを調整して鼻声にしたり、ビブラートを平坦にしたり、音程を微妙に外したり、テンポをずらしたり。
そんな様々なエフェクトの組み合わせで、ちょいヘタから、聴くに耐えないどヘタレベルまで調整可能なのです。」
「うむ、素晴らしい!
アナログな感じが、またいいぞ。
これで、ついに、叶わなかった、幼き頃の我が夢が、、。」
天女様の目には、キラキラ星のような涙が光っていた。
天女様は、小さな頃からずっと、みんなの前で歌うことを夢見ていたのだった。
久しく日本から途絶えていた、ヘタかわの輝く系譜。
その復活ののろしが、今、ここ秋葉原から生まれようとしていた。




