第22話 結月
「私と妻の結月は、学生時代から同じ研究室で人工知能について学んでいました。」
「ゆづき、さん?」
「はい、結ぶ月と書きます。
彼女の両親が、人と人、人と月の優しい光を結ぶ、そんな願いを込めて名付けたようです。
名前の通り、結月は優しくて、温かくて、素晴らしい女性でした。
私は、すぐに彼女を愛しプロポーズしたんです。
結月と私は、この研究室で一緒に働いていました。
そう、彼女は窓際のその席に座って。」
「結月さんは?」
「亡くなりました。
それも、あっと言う間に。」
「私は、その後、結月の写真や動画をぼんやり見ていて、ふと思ったんです。
結月の声、話し方、記憶、知識、全てをAIに注ぎ込んだら、ひょっとして、彼女の魂が戻ってくるんじゃないかって。
本気でそう思ったんです。」
「それで、結果は?」
「魂が戻ることはありませんでした。
しかし、それを消去することを、私には出来ませんでした。
そして、そのAIを、子供向けの会話AI、いつでもお友達としてネットに放ったんです。
結月は、いつか、女の子を欲しいと言ってました。
私は、ただ彼女の夢を叶えてあげたかったんです。」
「その後は。」
「そのままです。
管理サーバも含めて、全てを。」
「あのAIソフトに何か問題でも。
関連データやサーバは、そのままで大丈夫でしょうか?」
「いや、、、そのままでかまわない。
あなたにとって、大事なものだろう。
それに、、、もう遅い。」
「、、、ありがとうございます。」
「結月さんの机を拝見しても。」
「はい。」
「このCDは?」
「ムーンライト・セレナーデ。
戦前に作られた名曲です。
結月は、窓際で月を見ながらよく聴いてました。」
「良かったら、そのCD、お持ちになりませんか?
私には、もう聴く勇気はないんです。
泣いてしまうことが、、分かってますから。」
「ムーンライトセレナーデ。
、、懐かしい。
しばらく、お借りします。
熊本教授、何かあったらまた連絡させてください。」
「はい。
懐かしいって、あなた、お若いのにずいぶん昔の音楽をご存知で。」
「はい、この曲で、よく踊りましたから。」




