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65.なりきり師、チートを活用する。

「うわぁ〜!近くで見るとこんな感じだったんだね!」


「蜘蛛の巣って普通こんなギッチギチに詰まってないだろ…」


 ギルマス達に遅れながらもおれたちも白い蜘蛛の巣の前までやってきた。


 一本でも綱引きの綱みたいに太いのに糸と糸が重なり合い、ひっつき、まさに壁のようになっている…。

 このせいで遠くから見たらドームみたいに見えたようだ…。


「ギルマス達はもう中に入ってるみたいだな…おれたちも急ごう。

ホーク蜘蛛の糸に触らないように注意するんだぞ。くっついちゃうからな!」


「わかった!ユウキも気を付けてね!」






 ギルマスかシルバさんが斬ったであろう糸が地面に落ちている。

 その中には木の枝ごと切り落としてる物もあって非常に歩きにくい…。


 森の中は外みたいに重なり合うと言うより糸が張り巡らされている…。

 地面から木へ、木から木へ、木から糸へ、糸から糸へとまさに蜘蛛が移動する為と獲物を捉える為の巨大な蜘蛛の巣だった。



「こんな中で戦うの大変だな…」


「歩きにくいね!どうする?おれたちも斬りながら進む?」


「う〜ん…そうだなぁ…あっ!いい事思い付いた!」


「何するの?」


 おれはおもむろに落ちている糸に手を伸ばす。ベタベタしていて凄く嫌だ。



「ユウキ!?」


「インベントリに収納!」


 おれの手に付いた糸は一瞬で消える。



「あっ、やっぱりうまくいった!これなら足でもいけるかな?」


 足でも触れてみる。触れた状態ならインベントリにしまえるんだから理屈ではいけるはずだ…。


 おれは足で落ちている糸を踏みつけインベントリに収納してみる。

 予想通りインベントリに入れる事を意識すれば足の裏でも触れていればインベントリに入った。



「すっげー!インベントリってそんな使い方もできるんだ!いいなぁ!」


 よし、これなら今よりスピードアップして進めるぞ。



「まさかこんな使い方ができたなんて本当に便利だよなこのスキル。

これなら蜘蛛の糸なんか怖くないな。ホーク、おれが糸をなんとかするから気を付けてついてきてくれ!」


「わかった!」


 前方の糸に注意し落ちている糸をわざと踏みインベントリにしまう。

 一歩一歩それを繰り返し慣れてきた頃に遠くから『バゴーーン』と音が聞こえた。


 どうやら戦闘が始まったようだ…。



「ホーク、マップは見えてるな?もうすぐおれたちも皆に追いつく!戦う準備はしとくんだぞ!?」


「うん!わかった!頑張るよ!」


 とにかく数が多いし多分敵に近い程糸も密集してくるだろう…。

 あの3人は条件の悪いこの場所でちゃんと戦えてるのだろうか?


 この糸をどうにかしないと大きな動きはできない…。

 回避も制限されるだろうし、かと言って切り落としても足場がどんどん無くなってしまう。


 あの3人なら跡形も無く斬り刻んだり吹き飛ばしたりできるだろうけどこの場を作った蜘蛛のモンスターが相手だ。結局すぐにまた元に戻ってしまうだろう…。


 早く追いついて小グモの相手位はおれたちがやらないとな。







 そしてやっと追いついた…。だけどそこにはギルマスしかいなくて前にはバスケットボールのような大きさの小さな?蜘蛛がうじゃうじゃいた…。



「うげぇ気持ち悪い!なんでこのダンジョンこんな虫モンスターばっかりなんだよ!」


 蜘蛛は虫に含まれるのかわからないけどおれにとっては虫だ。

 おれの中ではムカデもサソリもクモもゴキブリも全部虫と同じくくりだ。

 アイアンスコーピオンのように全身メタリックなら平気だったんだけどな…



「ユウキ!ホーク!何故来た!?」


「「えっ?」」


 何故来た?なんだ大喜利か?何故来たって言われても…



「…加勢に来ました!」


「…そうか、すまない。おれとした事が焦っちまったようだ。お前らに待っとくように伝えるのを忘れてしまった…。

今からでもいい引き返せ!この場ではお前達を守りながら戦えない!」


「あっ、やっぱりそうですよね。でもギルマス、おれにいい考えがあるんです!

ただ、マーガレット所長とシルバさんにも教えないと危ないんですけどね…。」


「何をするつもりだ?」


「この糸を消すんです。インベントリに入れればこの糸は無くなります。

ただ急にやると敵がたくさん降って来ちゃいますからね。

だからあの2人にも教えないと危ないんですよね。ガトリングウォーター!」


 あの時思い付いたインベントリで糸を消す方法…実は落ちてなくて重なり合っていなかった木と木で一本だけで繋がっていた糸でも試していた…。

 結果は無事収納可能。どれだけの量が一気に収納できるのかわからないが少なくとも今より戦いやすくはなるだろう…。

 やっぱりインベントリはとんだチート能力だ。



「なに?そんな事ができるのか?頼むやってくれ!ゴロズ達なら自分で対処するはずだ!」


「いいんですか?」


「構わん!」


「…わかりました。」


 おれは近くにあった糸に手を伸ばしインベントリに入れるように集中する。



「あれ?」


 しかし入らない。もう一度集中するが…



「ごめんなさい…できないみたいです…」


 なんでだ?やっぱりできない。量が多すぎるのか?それとも他に理由があるのか?



「そうか、気にするな…。それよりお前達は戻れ。ここは危険だ!」


「…わかりました。ホーク戻ろうか……」


「そうだね。」


 ウインドサイズで触った糸を切りインベントリにしまう。これは問題無くできた。

 う〜ん…なんでできないんだろう?



「それじゃあおれたちは戻ります。気を付けて下さいね…。

あっ、あと鎮静剤を使う場所がボスの前なのでモンスターが少なくなったらまた戻って来ますね。」


「わかった!その時は頼む!行け!」


 そんな話をしていた時に小グモがおれに向かって糸を噴射してきた。

 急な事に対応できずおれは腹に糸を受けてしまった…。



「うわっ!」


 だけど焦る必要はない。何故ならおれにはインベントリがついてるから!

 今おれに張り付いた糸は完全に独立している。他に重なってない糸なら収納できるのは確認済みだ。

 焦らずにインベントリに収納してみる。



「あれ?えっ、なんで?うわっ!」


 これもできない。その上他の小グモ達も糸をおれに噴射してきた。



「「ユウキ!!!」」


 腹だけでなく顔や腕、足など身体全体が糸まみれになった…。



「ウインドサイズ!」


 おれは糸をなんとかウインドサイズで切り少しの自由を確保する。



「うわぁ…ベタベタで気持ち悪い…」


 こんな状態で歩いて戻るのは無理だ。おれはもう一度インベントリにしまう事に集中してみる。



「あれ?今度はできた?」


 なんでだ?一本でもできなかったのに数十本ついてる今ならできた。

 これはおかしいな…理由はなんだ?今やったのはウインドサイズで引っ張られ無いように切っただけだ。


 ん?切っただけ?本当にそうか?おれの中で新たな疑問が生まれた。



「ギルマス!少しホークをお願いします!」


「あっ、待てユウキ!」


「ガトリングウォーター!」


 邪魔な小グモを吹き飛ばしおれは手当たり次第に糸へと手を伸ばす。



「これはダメ!ウインドサイズ!これもダメ!ウインドサイズ…」



 触って収納、失敗して切るを繰り返す。



「これは…できた!やっぱりそうか!」


 インベントリに収納できた事で少しだが糸が周りから無くなった。


 この蜘蛛の巣は収納できる糸とできない糸があるんだ!それは現在どこかでこの張られた糸とクモ本体が出す糸が繋がっているかどうかだ。


 恐らく小グモかデススパイダーが糸を使って繋がっていると収納はできない。

 インベントリでも身体の中の糸までは収納できないんだ。



「ユウキどうなっている?」


「蜘蛛から出てる糸と張られた糸を切り離してください!そうすれば収納できます!

ただここだけの蜘蛛が対象ではありません!この巣の中全体のどれかの蜘蛛と繋がっていれば収納はできません!」


「なるほど、そう言う事か!それなら任せろ!ウェポンチェンジ!」


 片手剣から巨大なフラフープみたいな武器へと変わった。しかも丁寧にもしっかり刃物で丸鋸の超巨大版みたいにギザギザしていた。



「この辺りの糸を一気に切り離す!ユウキ頼んだぞ!」


「えっ?だから…」


 一気に切り離してもダメだぞ?話聞いてたのか?繋がってたら収納できないんだってば!



「おらっ!!!」


 ダメだ聞いてない…投げちゃったよ…



「…ってえぇ!」


 なんだあれ…投げては戻り投げては戻りとヨーヨーみたいに何度も手元に戻ってくる。

 いや、あれヨーヨーだ!最初は気付かなかったけどよく見るとあの刃物2枚あるしギルマスがワイヤーで操ってる…


 どんな武器だよ!本人は危なくないのかあれ?キャッチに失敗したら自分が切り刻まれるだろ……



「ユウキ!頼む!」


「あっ、はい!」


 ギルマスが切り落とした糸に触れてインベントリに入れてみる。

 問題無く入りこの辺りの蜘蛛の糸は無くなった…。



「すっげー!ギルマスカッコいい!!!」


「そうか?この武器は使いどころが少なくてな。あまり使わないんだがおれも気に入ってるんだ。

それよりお前ら戻るのは延期だ!一緒に戦ってもらうぞ!」


「「はい!」」


 どうやら今回は一緒に戦えるようだ。足手まといにだけはならないようにしよう…。

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