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64.なりきり師、天国と地獄。

「あれはなんでしょうか…?」


「さぁ、なんだろうな?」


「なにかしらねぇ〜?」


 階段を降りきる直前に見えてきて十階層に到着した今も上の方だけが少しだけ見えてる白いドームのような塊。

 完全な球体ではなく少し横長の正にドーム型。ハンバーガーの形が想像しやすいかな?そんな感じだ。

 


「あれがこの階層のボスなの?」


「どうなんだろうね…?ユウキ君、君なら鑑定できるんじゃないかい?」


「あっ、そうですね。あの…それならシルバさん、おれを連れて空を飛んでくれますか…?その方が見えやすいですし…」


「あれ?君高い所嫌いなんじゃなかったっけ?」


「別に好きでも嫌いでも無いです。ただ今までのは両方とも急だったのと頼る物がなかっただけです。

今回はシルバさんにしがみついて離しませんから大丈夫です!」


 そうだ1回目はシルバさんがおれとホークを両脇に抱えていたから掴む物が無かった。

 2回目に関してはそもそも一人で空中に向かって投げられたんだ!怖くない方がおかしいんだ…。


 今回はシルバさんにしがみつくつもりだし安全面と精神面も問題無い。


 もちろんあれを鑑定するってのもあるが本当のおれの目的はマップを埋める事だ…。

 マップさえ埋めてしまえばマップ内検索でグレイトワーウルフがいるのか確かめる事ができる。


 へっへーんグレイトワーウルフめ!このフロアの狭さが仇となったな!いたら速攻全員連れて逃げてやるからな!


 物凄くダサいけど死ぬよりましだ。ギルマス達3人に任せようかとも思ったけどやっぱり危険だもんな…。



「そう?それなら行こうか。しっかり捕まっててね。」


「はい!お願いします!」





 シルバさんに前と同じようにシャドーソードを使って空を飛んでもらう。

 空を飛ぶと言うか空を飛ぶ剣に乗ってるんだけどね…。



「ユウキ君この位でいいかい?」


「はい大丈夫です!ついでにマップも埋めちゃうので少しだけ動きますね!」


「わかった。」


 おれは遠目も使ってフロアを隅から隅まで見渡す。



「ふぅ、これでよし!あれ?なんだこれ!?」


「ユウキ君どうしたんだ?」


「いえ、あの白い物体の中にモンスターが一杯いるんです…ここって十階層ですよね?……それに人の反応が一つだけあります!」


 ボスフロアは一体だけじゃ無かったのか?なんだろトレントより密集してブーンビーの巣を見付けた時のようなモンスターの塊が何個もある。

 大量の赤い点の中に一つだけある白い点。だけどその周りにもモンスターが群がり重なっている。



「なんだって!?それは本当かい?」


「はい。間違いありません。下でもホークがギルマス達に教えてるんじゃ無いですか?」


「ユウキ君!急いで降りるよ!」


「えっ、まだ鑑定してないですよ…遠距離鑑てえぇぇぇぇぇ……」


 結局こうなるの?おれは穏やかに降りられない呪いにでもかかってるのか?

 シルバさんは宣言通り猛スピードで下へと向かう。


 ただ今回はシルバさんにしがみつけるので目を瞑って止まるのを待てばいいだけだ。



「ギルマス!」


「シルバ!急いで救出に向かうぞ!増え続けるモンスターかもしれない!早く対処しないと大変な事になるぞ!」


「はい!」


 ギルマス、マーガレット所長、シルバさんは合流してすぐにあの中へと向かおうとする。



「ちょっと待って下さい!」


 グレイトワーウルフをまだ確認していない。そんな状況で行かせられない。それに……



「なりきりチェンジ マッパー マップ内検索 モンスター以外の死体」


 ☆が7個現れた…。



「残念ですがもう……」


 さっきまであった白い点が消えてしまったんだ…。

 それに☆が7個出たと言う事はあそこには7人の死体がいるって事だ。


 おれのマップは生きてる者しか表示されない。さっきみたいにマップ内検索で死体を検索すれば表示されるがさっきの最後の一人がいなければ気付かなかっただろうな……


「ね、ねぇユウキ?この7個の☆ってまさか…」


「あぁ…」


「クソ、遅かったか…恐らく斬魔の炎とエンドレクイエムのパーティーだろう…。

アイツらは合わせて7人だ……。すまない…だが、街には連れて帰る!」


「ギルマス、嫌な事を聞きます。モンスターは人を食べますか?」


「あぁ喰う!種族にもよるが……ってまさか!」


「多分そのまさかです。この階層のボスはデススパイダーと言うモンスターだと思います。

そして多分周りのモンスターの群れはその子供達…。

考えたくは無いですけどモンスターか死体に群がっているんです…」


 遠距離鑑定であの白い物体を鑑定した結果デススパイダーの糸と出た。

 十階層はモンスターが一体のボスエリアのはずだ。これだけモンスターがいるって事は考えられるのはボスから生み出されたモンスターと言う事だ…。

 活性剤によって変わったのかもしれないが蜘蛛は大量に卵を生む。子供と考えるのが一番妥当だろう。

 そして死体からモンスターが離れない理由は多分あの人間達を子供達の餌にしているのだろう。そう考えると全ての辻褄が合う。



「マップ内検索 デススパイダー」


 ☆が一つ現れる。コイツがこの階層のボスなのか確かめる。



「マップ内検索 階層ボス」


 ☆が同じ所に出現した。間違いない。



「マップ内検索 デススパイダーの子供」


 マップ内に☆が無数に重なり合う。いくらなんでも多すぎる。ボスだけでも大変なのに一番モンスターが多い階層になってしまっている…。



「こうしちゃいられねぇ!行くぞゴロズ!シルバ!」


「はい!」「おう!」


 あっ、話してる途中で行くなよ!まだグレイトワーウルフ検索してないんだってば!

 はぁ、仕方無い…ギルマス達は行っちゃったからもう遅いけど今やるしかないか…



「マップ内検索 グレイトワーウルフ…」


 ………セーーーフ!!!よし☆が出ない!


 ふぉぉぉぉ〜!おれは運命に打ち勝ったんだ!あの死亡フラグに負けなかったんだ!



「ユウキ、グレイトワーウルフってシルバさんの過去の話で言ってたモンスターだよ?

このダンジョンじゃ無いしいるわけ無いよ?間違えちゃったの?」


「あっ、そうだったっけ?ごめん間違えた…。」


 間違ってなどいない!これが正解!それが真実!でもこれでボスに集中できるぞ。



「ユウキもそんな事あるんだね。珍しいね。」


「アハハ…気を付けるよ…。それよりおれたちも行こうか。

ボスはともかく子供の相手をして数を少しでも減らさないと!あの数の暴力は3人だと大変だ。」


「そうだね。おれたちもできることをやろう。」


 グレイトワーウルフがいないのならもうこっちのもんだ。なんの心配も無く戦える!

 そうだ別にこのダンジョンのこの階層である必要がない!そんな強敵は後半に出てこなかったら単なるクソゲーだ。

 ゲームだったら誰もクリアできなくてクレーム殺到するところだったぞ!



 あぁプライ様!本当にありがとうございます!!!



「っとその前に、マップ内検索 ダンジョン活性剤が使われた場所!」


 ピコッと☆が現れた場所はさっき確認したデススパイダーがいる位置そのものだった。


「オーマイゴッドプラ〜イ……」



 感謝した途端に天国から地獄に叩きつけられた気分だ…。

 クリアしたと思ったら第二形態突入パターンかよ!思わず話せもしない英語を使ってしまったよ!



「ユウキ本当に大丈夫?やっぱり変だよ?なんか意味不明な言葉喋ってるし…」


「あぁ悪い!大丈夫だよ!つい前世の違う国の言葉が出ちゃっただけだよ…。

全然変じゃないから気にしないでくれ。なりきりチェンジ 鑑定士」


 ダンジョン鎮静剤を使う場所にマーキングをして鑑定士に戻る。

 プライは鎮静剤が反応するっていってたけどボスの前で出して万が一にでも割れてしまったらこれまでの苦労が全て無くなってしまう…。


 出す時はボスを倒しちゃう前の隙ができた時じゃないとな…。



「おまたせ準備はできたよ。今度こそ行こうホーク!」


「うん!」


 ダンジョンを鎮める十階層攻略が始まった。

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