14.なりきり師、毒にやられる。
あれからどれ位歩いただろう?毒が全身に回ってきたのか呼吸も荒くなって震えも止まらない……
ヒールももう何回使ったか覚えていない…。
最初は毒攻撃を受けた左肩だけが熱かったが体内で毒が回ったのか今では全身が焼けるように熱い……
「ホーク…あれからハァ…どの位…時間が経った?ハァハァ…」
「10分位かな?…ユウキ、辛いよね…絶対、絶対にモンスター見付けるからもう少しだけ頑張って!」
まだ10分…もう何時間も歩いてる気分だ……
ゲーム知識のせいで完全に毒を舐めてたな…そういや毒状態で動いてる漫画とかってあんまり見ないよな…
大抵ぶっ倒れて動けないか主要キャラじゃない弱い人間だもんな。
こんなに辛いなら納得だよ…
「心…配するな…ハァ…おれならハァまだ…平気だよ。」
「全然平気そうじゃないよ!おれ嫌だからね!ユウキがいない冒険なんかしたくないからね!」
泣きそうになってるホークをからかう元気もない…。
『今後は死にたくなかったらそうやって自分を特別な存在だなんて思わないことだね。』
プライに言われた言葉はこう言う事だったのかな?…
確かにスキルを沢山持っていて余裕だった事もあってあの時完全に油断した。
ヒーラーを育てればいいと思ったけどモンスターが出てこない…
今の状況は全部自業自得だ…おれが悪い。
「ユウキ!いる……」
「? ハァハァ…ここに…いるだろ?」
何言ってるんだ?まだ死んでないぞ…
確かにホークは前を歩いてくれていたけど何回も戻ってきてペースを合わせてくれていた。
それにさっきまで面と向かって話をしてたじゃないか…
「そうじゃなくてブーンビーが近くにいるんだよ!聞こえない?羽の音が近付いてる!」
そう言われ周りの音に集中する。
〈ブーーーン〉〈ブーーーン〉〈ブーーーン〉
確かに聞こえる…あの蜂独特の嫌な羽音が。ありがたい生き残る為の最期のチャンスだ。
「ユウキ周りには誰もいないよ!早くヒーラーに!」
「なりきり…チェンジ!ヒーラー!!」
ホークのおかげて周りを気にする必要が無かった。だけどまだブーンビーの姿は見えない。
ただ嫌な音だけは確実に大きくなってきている。
「どこだどこだどこだ…」
ホークがかなり焦った様にキョロキョロしてブーンビーを探している。おれは本当にホークと冒険者になってよかった。こんなにも人の為に動けるホークが親友でよかった。
「ヒー…ル…」
ヤバイ息がしにくい…恐らく毒が完全に全身に回ってしまったのだろう。
「見付けた!!!ユウキあっちの高い岩山の方だよ!」
ホークの声は物凄く大きかった。喜んでるな…ありがとうホーク。
「ウイン…ド…サイズ……」
見えたブーンビーは計三体。狙いを付けたウインドサイズを放って一撃で倒したい。
だが毒で狙いがうまく定められずズレてしまった…。
「ナイスユウキ!流石だよ!」
そう言ってホークは走り出した。
おれのウインドサイズは狙いこそ外れたがそのおかげで二体を巻き込む形でブーンビーにダメージを与え撃ち落としていた。
だがまだ倒してはいない。ホークはトドメをさしに行ってくれたのだ。
だがその時、残ったブーンビーがホークに向かって毒の玉を打ってきた。
それなのにホークは構わず受けて落ちてきた二体に向かっていく。
「はぁぁぁ!ダブルスラッシュ!!!」
二本の剣で器用に一体ずつに一撃を入れ二体同時に倒した。
【ヒーラーの熟練度が3に上がりました】
【スキル アンチポイズンを覚えました】
【ヒーラーの熟練度が4に上がりました】
【スキル マジックディバイドを覚えました】
キタ!おれはすかさず新スキルのアンチポイズンを唱える。
「アンチ…ポイズン…」
アンチポイズンを使うと温かい感覚が体中を巡り毒を癒やしてくれた。
アンチポイズンを使った途端に体のダルさや痛み、熱さや息苦しさがスゥーっと無くなった。
「ステータス」
ユウキ 人族
15歳
ヒーラー
レベル1 熟練度4
魔力51/257
攻撃59
防御51
魔攻58
魔防57
俊敏42
幸運58
スキル
なりきりチェンジ 鑑定 インベントリ マップ スラッシュ ヒール 薙ぎ払い 回転斬り 遠目 ファイアーボール ウォーターショット サンダーウィップ ビッグシールド 斬撃波 ウインドサイズ アイスニードル シールドスロー 兜割り バリアー アンチポイズン マジックディバイド
EXスキル
創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇
称号
転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者
「よし治ってる…でも魔力もかなりヤバイかったな…とりあえず全快しとくか…ヒール、ヒール……」
ヒールを限界まで使いおれは万全の状態に戻った。魔力回復や他の事はひとまず後回しだ!さっさと残りのブーンビーを倒さないと…
「よくもあんな目にあわせやがったな!これで終わりだ!ウインドサイズ!!!」
毒も回復したので狙いはもう外さない。ウインドサイズでブーンビーを真っ二つにして無事に戦闘は終了した。
おれはホークに近付くとホークもおれに近付いてきた。
『パーンッ!』
自然とおれたちはハイタッチをして笑い合った。お互い声を出さなくても考える事は同じだな…
「やったねユウキ!」
「おう!」
「ね、ねぇユウキ?あのさ…おれも毒状態になっちゃったんだけど…」
「全く…無茶して突っ込むからだろ!おかげで助かったけどな。ありがとうホーク!」
「えっ?治してよ!?スゲー熱いし、スゲー痛いんだよ……」
「ホーク…これを見てくれ。オープンステータス」
ユウキ 人族
15歳
ヒーラー
レベル1 熟練度4
魔力量6/257
攻撃59
防御51
魔攻58
魔防57
俊敏42
幸運58
スキル
なりきりチェンジ 鑑定 インベントリ マップ スラッシュ ヒール 薙ぎ払い 回転斬り 遠目 ファイアーボール ウォーターショット サンダーウィップ ビッグシールド 斬撃波 ウインドサイズ アイスニードル シールドスロー 兜割り バリアー アンチポイズン マジックディバイド
EXスキル
創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇
称号
転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者
「ステータスなんか出してどうしたんだよ!早く治してよ!」
「気付かないか?魔力が無いんだ…」
「そんな…ま、マジックポーションは?」
「全部使った……」
「えっ…嘘だよね!?」
「まさかホークまで毒になるなんて思って無かったんだ…」
「そんな……」
「ハハハ、嘘だよホーク!マジックポーションは一つも使ってないよ。」
「うーわ最悪だ…早く回復しろバカユウキ!ユウキなんか嫌いだ!」
「まぁそう怒るなって!おれが本当に見せたいのはこっち!異常に抗いし者。」
「なんだよそれ!」
異常に抗いし者…状態異常を十分以上耐えた者
効果:全状態異常耐性50%
「この称号ホークも取ってみないか?」
「それっておれも10分間ユウキみたいに毒で苦しまないといけないって事?」
「多分おれより多少は軽いと思うよ。おれは動き回って毒が巡るのが早かったし自分で体力や魔力の管理もしたりして大変だったからな…
ホークはおれが手厚く介護するしただじっとしとくだけだよ。
かなり役に立つ効果だし取れる内に取っておいた方がいいと思うよ?」
状態異常耐性はとても魅力的だ。それに毒耐性じゃなく全状態異常耐性だ。
なんでこんな破格の設定なのかはわからないが持っているのと持っていないのとでは今後かなりの差が出てくるだろう…。
取得方法もわかっていてホークも今は状態異常中だ。かなり苦しいが今取る方が絶対にいいだろう…。
一番安全そうな眠りの状態異常はどの職業で手に入るスキルかわからないしモンスターに使わせてモンスターの前で眠るなんてのは論外だ。
それに毒がおれの思っていたよりもキツイ性能だったので状態異常眠りが安全とも限らない。
「絶対に安全?」
「どちらかと言えば危険だな…死ぬ気で耐えてやっと手に入る称号だ。
でもおれが絶対に死なせない!約束するよ。」
「簡単に約束してもいいの!?」
「今のおれが簡単に約束すると思うか?」
「「ハハハハハ……」」
おかしくて二人共笑ってしまった。
きっとホークもマーガレット所長の顔が思い浮かんだのだろう。
「わかった!それなら頼むよユウキ!」
「任せろ!」
おれはマジックポーションを飲み魔力を回復してホークの看病にあたった。
でもずっと苦しんでいるホークをみるのは正直辛かった。何度アンチポイズンを使おうと思ったか……
後5分、後4分と一分刻みで残り時間を教えてあげて回復し、励まし、長い10分が経過した所でアンチポイズンを使った。
「オープンステータス」
ホーク 人族
15歳
双剣士
レベル3
魔力58/64
攻撃85
防御66
魔攻28
魔防25
俊敏91
幸運55
スキル
ダブルスラッシュ 双刀斬
称号
なりきり師の仲間 異常に抗いし者
「おぉ〜!称号増えてる!やったよユウキ!」
「よかったぁ…。ちゃんと出た……」
「なっ!出るかわかんないのにやらせたの!?」
「だってしょうがないだろ!おれは転生人でホークは純粋なこの世界の人間なんだぞ。
もしかしたら条件が違うかもしれないじゃないか!」
「考えらんない!そんな不確かな事でおれにそんな提案したの?おれは死にかけたんだぞ!」
「死ななかっただろ!おれが完璧に治療してたんだよ。感謝しないで怒るってどう言う事だよ!」
「ユウキが悪いんでしょ!だいたい……」
〈ブーーーン〉〈ブーーーン〉〈ブーーーン〉
「ホーク!」「ユウキ!」
喧嘩しててもやっぱり親友だな。おれたちの息はピッタリだった。
ブーンビーを倒し今日のダンジョン攻略は終了した。




