13.なりきり師、油断する。
昨日と同じ宿に泊まり今日は二日目。昨日と同じミスはしないためにポーションとマジックポーションを五個ずつ買った。
昼ご飯もちゃんと買ったし準備は万端だ!
「ホークそろそろ手持ちのお金が少なくなってきたんだ。今日は頑張って稼ごう!」
おれのお金とホークのお金は分けて管理している。インベントリにしまってあるけどちゃんと財布は別で基本割り勘だ。
街に来て色々出費があったので最初は10万プライあったのに二人合わせても残り5万プライを切ってしまった。
「うん!昨日のおれたちより強くなったし今日は一杯稼ごうね!」
おれたちはダンジョン一階層を最短距離で突破し昨日回りきれなかった二階層に進んだ。
「今日は昨日とは反対側に行ってみようか!」
「リーダーに任せるよ!マッピングは任せたよ!」
「おし、任された!そうだホークお願いしたい事があるんだけど……」
「ん?なに改まって?」
「おれの職業なんだけどマッパーに転職してもいいかな?」
「えっ?でも見られるとまずいんじゃなかったの?」
「そうなんだ。だから戦闘中だけ転職して経験値を稼ぎたいんだよ。
マッパーって非戦闘職だろ?熟練度を上げるにも敵が強かったら魔法しか使えないと戦闘の幅が狭くなるし、ホークの負担が大きくなるから今の内に上げれるなら上げときたいんだ。」
「おれは構わないけど。ホントに見られない?」
「そこはおれも気を付けるよ。いいか?」
「いいよ!いずれ上げないといけないんだもんね!」
「ありがとう。また鑑定士とか鍛冶士の時も頼むな!?」
「わかった!」
よしこれで非戦闘職も熟練度を上げられる。マッパーはこれからの冒険では絶対に必要だからな…早い内に上げておきたかったんだ…。
そう思ってたのに…
「なんで敵が出てこないんだよ!」
ホークにマッパーに転職する許可を貰ってあれから一時間…全くモンスターが現れなかった。
「昨日はあんなに遭遇したのにね!」
「物欲センサーか?物欲センサーが発揮してるのか?」
「物欲センサー?が、なんだかわかんないけどこれじゃダンジョンに来た意味がないね…」
もうすぐ二階層のマッピングも終わってしまう。モンスターに会うことなく九割程が終わってしまった…。
「隠し部屋らしき所も見付からないしモンスターも現れない。こんなのダンジョンとして破綻してるだろ!」
うまく行かない事についつい文句を言ってしまう。普通ならモンスターが出てこない事は良い事のはずなのに…
「よーし!もう怒っちゃったからな!ホーク二階層なんかさっさと終わらせて三階層に行くぞ!」
「そうだね…このままじゃただ歩いてるだけだもんね…」
今までよりもスピードを上げ二階層のマッピングを終わらせたが結局モンスターとは最後まで出会わなかった…。
「三階層も雰囲気は同じか…」
「ねぇユウキ、ここはどんな敵が出るの?」
昨日買取が終わった後に五階層までのモンスターを調べた。
ダンジョンには五の付く階層に中ボスが十の付く階層にボスがいるようだ。
「三階層はブーンビーって言う蜂のモンスターが出るらしいよ。
コイツもギャザーウルフのように群れを作るらしいからしっかり注意しないとな!」
「蜂って事は空を飛んでくるんだよね?空も警戒しないといけないってのは厄介だね…。」
「そうなんだよ…だからマッパーを育てておきたかったんだけどな……」
「マッパーと空ってなんか関係あるの?」
「あくまでもおれの予想なんだけど日本人の時の知識でモンスターマップってのがあったんだよ。
簡単に言えばモンスターが何処にいるか教えてくれるマップだな!
だからこの世界でもマッパーを上げればスキルとして覚える気がするんだ。」
「へぇ〜!ユウキの過去の知識って凄いんだね。だからユウキは物知りなんだね!」
「あくまでも予想だからな!マッパーを育てても出ないかもしれないし…」
「可能性があるならやった方がいいよ!それにどうせ全部の職業に転職するんでしょ?」
「まぁそれもそうだな…。」
ホークはいつもおれの事を肯定してくれる。本当にありがたい親友だよ。
その後歩いていると〈ブーン〉と言う蜂の嫌な羽音が聞こえてきた…。
「ユウキ!これが三階層の敵だよね!?」
「あぁ間違いない!ブーンビーは毒を持ってる!気を付けて戦おう。」
「わかった!どんどん音が大きくなってる…来るよ!」
おれたち目掛けて三体のブーンビーが空からやってきた。蜂と言うにはサイズが大きすぎる…なんだよあれ…原付バイク位に大きいぞ……
「アイスニードル!」
まずは先制攻撃としてアイスニードルを打ってみたが空を飛んでいて当たらない。
ブーンビー達は氷の棘をかわし速度を落とさず向かってきた。
ただでさえ虫が嫌いなのにここまで大きいと気持ち悪いを通り越してただの恐怖の物体だ。
ファンタジー世界なんだから最悪見た目は可愛かったらよかったのに…
「鑑定」
ブーンビー
レベル4
魔力7/7
攻撃23
防御14
魔攻2
魔防2
俊敏28
幸運3
「ホーク!アイツら攻撃と俊敏が高い!全体に警戒しつつ一体ずつ確実に仕留めるぞ!」
「わかった!ユウキこいつらを地上に降ろせる?」
「やってみる!くらえ斬撃波!」
戦士の熟練度5で覚えたスキル斬撃波。
何も無い場所を斬りその切った見えない斬撃を飛ばすスキル。鎌鼬みたいなものだ。
斬撃波がブーンビーの一体に当たり傷を付けた。
〈ギャアァァ〉
蜂ってあんな鳴き声なのかな?そもそも蜂って鳴かないよな…。
まぁそんな事はどうでもいい。大抵のことは異世界だからで済ます事にする。いちいち気にしてたら異世界なんて生きていけないんだよ!
斬撃波が当たったブーンビーが鳴きながら落ちてきた。
「残りの奴らはおれが警戒する!ホークはトドメを!」
「りょーかい!ほらっ!」
さすが俊敏が高いだけある。落ちてくるポイントに先回りして簡単に切り込んだ。
「させるか!ファイアーボール!」
残りのブーンビーがホークに向かおうと動いた。斬撃波だと見えないのでそのまま動いたかもしれないが目に見えるファイアーボールで牽制して行かせない。
「ユウキ!次ぃ!」
「オッケーいくぞ!斬撃波!」
二人共昨日より全然リラックスして戦えている。正直レベルアップするだけでこんなに戦闘が楽になるとは思わなかった。
斬撃波はほとんど見えない攻撃なのでブーンビーは避けれない。
もっと強い敵なら話は変わってくるだろうがブーンビーならこの戦法で今後もいけそうだな…。
「おらよっ!」
二体目もホークは楽々トドメを刺した。残り一体だ。
おれはもう一度斬撃波を使おうとしたその時…ブーンビーがお尻の針から何かを打ってきた。
「うわっ!」
熱い…痛い…何だよこれ……当たった左肩が焼けるように熱い。
「ユウキ!!」
完全に油断した…あまりにも戦法がうまくいっていたので攻撃なんかされないと思い込んでいた…。
まさか遠距離攻撃があったなんて……
「ス、ステータス」
ユウキ 人族 (毒)
15歳
戦士
レベル1 熟練度7
魔力183/203
攻撃56
防御47
魔攻46
魔防40
俊敏39
幸運40
スキル
なりきりチェンジ 鑑定 インベントリ マップ スラッシュ ヒール 薙ぎ払い 回転斬り 遠目 ファイアーボール ウォーターショット サンダーウィップ ビッグシールド 斬撃波 ウインドサイズ アイスニードル シールドスロー 兜割り
EXスキル
創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇
称号
転生人 なりきり初心者
名前の横に(毒)ってついてる。今までは無かったのでさっきのブーンビーの攻撃はどうやら毒攻撃だったようだ…。
まさかあんな風に飛ばしてくるとは…痛ぇ……
「大丈夫!?ユウキ!」
「状態異常を受けた。悪いホーク…今日は早く帰らないといけなくなったかもしれない。」
「そんなのどうでもいい!ユウキ解毒の方法はあるの!?」
「解毒ポーションまで手が出せなかった…。今ここでできる事があるとしたらヒーラーを上げる位だ。ワンチャン解毒のスキルが出る事を願うしかない。ヒール!」
ヒールを唱え傷は無くなったが肩は熱いままだ…。解毒しない限りこの状態が続くのか…ちょっとヤバイな……
少し高くても解毒ポーションケチらず買えば良かったよ……
「ユウキ待ってて!すぐにアイツを倒してくるから!」
「待ってホーク!」
「なんで!?急いで戻らないと…」
「ホークじゃブーンビーに攻撃が届かないだろ?おれが撃ち落とすからさっきの戦い方でいこう。」
「でもユウキ毒を受けて…」
「大丈夫!大丈夫だから!おれを信じて!」
「ッ…わかった!」
「ありがとうホーク。牽制だけ頼むな!」
とは言え毒か…ゲームならHPが少しずつ減っていくだけだけど実際はめちゃくちゃ痛いじゃないか!
痛いし、熱いし、体がダルイ。毒状態ってこんなに辛いのか……早く解毒しないと本格的にヤバそうだ…。
「なりきりチェンジ!ヒーラー」
ヒーラーに転職して熟練度を上げられるようにする。しかしヒーラーに転職したので、装備の攻撃力は下がってしまった。
そもそもロッドで斬撃波は打てるのか?
ここはまだ使っていないあの魔法を試してみるしかないな…。
「ウインドサイズ!」
狙いを付けた場所…ブーンビーに鎌風がひと凪した。
ブーンビーは胸部と腹部で真っ二つになり斬撃波とは違い一撃で倒してしまった。
「なっ、スゲーよユウキ!一撃じゃん!!」
スタンバイしていたホークも驚いている。もちろんおれも一撃で倒せるなんて思っていなかったので驚いた。
【ヒーラーの熟練度が2に上がりました】
【スキル バリアーを覚えました】
「違う!今必要なのは解毒魔法なのに……」
「解毒魔法覚えなかったの!?」
「覚えたスキルはバリアーだ。防御魔法だった…ぐっ!」
「ユウキ!?どうしたの?毒か?毒が辛いの?」
「ホーク…思ったよりも毒によるダメージが強いみたいなんだ…ッ…悪いんだけど今日は街にかえ──」
いや待てよ…解毒魔法なんてヒーラーなら必須で覚えるはずだ。それも最初の方で。
さっきは違う魔法だったけど次ならきっと出る!そんな気がする。
ソシャゲのガチャみたいな事を言っている気もするけど街に帰るよりも熟練度を上げるほうが早いはずだ。
「ねぇユウキ!どうしたんだよ!?ポーション飲める?ねぇってば!返事してよ!」
「あぁ悪い考え事してた…。ホーク!ブーンビーを探すぞ!」
「何言ってんだよ!早く街に帰って解毒しないとユウキが………」
「死なないさ。それに街に帰るよりもここでブーンビーを探す方が生き残れる可能性が高いんだ。」
「それホント?」
「ヒール。あぁ…ブーンビーは魔法に弱い。鑑定でも魔防の弱さは確認してるしさっきウインドサイズで一撃だったろ!?
あのモンスターならすぐに倒せる。問題は見付けれるかどうかだ。」
「わかった!じゃあ急いで探そう!」
あれだけうるさい羽音がするんだ近付いてきたらわかるだろう…。
たださっきの事もある。ニ階層でモンスターと全く出会わなかったせいですぐにエンカウントするのかどうか不安になる…。
「なりきりチェンジ 戦士」
ヒーラーのまま行きたいが戦士で冒険者登録しているおれがヒーラーの装備をつけているとおかしいからな…
万が一誰かに見られたら後々面倒になりそうだからこんな時でも戦士に戻しておく。
「ホークごめん!おれが油断したばっかりに……なるべく早くモンスターを見つけたいんだ。悪いけど協力してくれ!」
「仲間なんだから当然だよ!それにおれも正直楽勝だと思って油断したんだ。
毒を受けるのはおれだったかもしれないし気にする事ないよ!
ユウキもう少しだけ我慢してね!すぐにモンスターを見付けてあげるからね…。」
おれたちはマッピングもほとんどできていない三階層でモンスターを探し始めた。




