第五十話 母の手紙
「愛へ、
変わりなく元気にしてますか?こっちはみんな元気にしています。
愛はとっても頑張り屋だから無茶してるかもね。でもそういう時は人に助けてもらっていいんだよ。
3年前お父さんが亡くなってから、あなたは引き籠りになって、憂鬱になったよね。幽霊も見えるようになったよね。
悲しいよね、苦しいよね。そんなあなたを見ると私たちも苦しくなります。中学校から高校にかけて友達に馬鹿にされ、人を信用する事をしなくなったよね。一人で頑張ろうとずっとしてきたよね。
そんな愛を私はこよなく愛しているよ。これからもずっと…
でもこれだけは知っておいて。どんなに厭な事があってこれ以上のないどん底に落ちていたとしても 人だけは愛し、愛されるような人になりなさい。 そして人にいっぱい助けてもらって、助けていけるような人になりなさい。それが母さんの願いです。
いつまでもずっと元気で
あなたの母として、一人のファンとしてこれからもよろしくね。
奈々子」
「これって…」
ショーは口にしようとした瞬間、ポケットの中で携帯が生きた魚のように動きだす。
「ショー切っとけよ。音を出すなっていったろ」
「ごめん」
ショーは携帯の電源を長押しし、電話を切った。
「やっぱりアイちゃんわけありだったんだな。自分で背伸びして、頑張っていただけなんだ」
マゴは感慨深く、手紙をたたみ、封筒の中へ入れようとした。その瞬間奥の玄関口からガチャっと音がする。
「隠れろ!!」
二人は反射的にベッドの中へ潜り込んだ。