第四十九話 ドキドキ侵入編⑤
トイレを出ると、寝室へ向かう通路へと出た。電気は消され、カーテンが閉められているのだろうか、辺りは暗く、自分の足元さえ見るのが難しかった。
だが暗闇の中、目が慣れていき、さほど問題はなかった。通路をまっすぐ向かうと、ほどなく寝室に行き着いた。ベッドが2つあり、ソファー1つにテーブルが添えられている。
テレビには布が被されており、まるで外部からの情報を遮断しているかのように見えた。
ベッドに目を移すと、奥側のベッドのシーツがめくられ、昨晩そこでアイが寝ていた様子が伺える。着たであろう白いバスローブはシーツの上できっちりと畳まれていた。その横に猫の絵が載せてあるノートがある。
「これ、怪しいなぁ」
マゴはノートを手に取り、入念に1ページ目から目を通す。それはアイのスケジュール帳であり今日からの予定がカレンダー欄にびっしりと書かれていた。
「意外と几帳面だね」
ショーは後ろから覗き、関心する。
「マネージャーがアイちゃんへ手渡しした可能性も高いぜ。いずれにしろ、これは意味がないな。他をあたろう」
マゴはテレビ付近へ移動し、引き出しの中を捜した。
ショーは改めて部屋中を見回した。部屋は他のホテルと同じで豪勢でもなく、質素でもなく普通だった。でもここに来た時から何かが違った。それは今になって分かる。
異様にローズの匂いが部屋中に漂っている。もし明りを付けたら一部にモヤがかかると思うぐらいに。自分を高貴に見せつけているのか、それとも何かから身を守るように対策を取っているのか…
その時ベッドから何かかスルっと地面に落ちた。マゴは振り返り、音は立てるなよと目で合図を促してくる。ショーは音が鳴った方へとゆっくりと歩み寄った。
おそらく枕元付近に違いない。足元へ置いてあるスリッパに注意しながら行くと、そこには白い封筒があった。ファンからの手紙かなとショーは開いてある封筒の口に手をつっこみ、中の紙を引きずり出す。
照明スタンドのスイッチに明かりを点け、手紙を光で照らした。それはアイの母からの手紙だった。




