助けたい……。
―――――遠い昔に見た光景。
貴方は光だった。
闇の中に輝く光。あなたは闇の中で確かに存在していた。私の前に立って私をいつも守ってくれた。
大きな背中を丸めて吠えていた。
長いしっぽ。鋭い牙。耳は少し伸びて鼻はツンと突き出ていて、まるでオオカミのようだった。
綺麗な毛並み。
そして血のように赤い瞳。
見上げるのは、白い杯。
夜に佇む貴方は、白い月のような姿をしていた。だけど怖くなかった。吠え猛るその姿はどこまでも雄々しく思えた。
ずっと見ていた。
この光景がいつのものかはわからない。
過去なのかも、未来なのかも、そして前世なのかもわからない。
だけど、あなたはここにいる。
ソウマ。
私はずっと……。
「あー。もう死にそうだねぇ」
覗きこむ巨竜ハルトディアの視線の先。地面に突っ伏すソウマがいた。
ドロドロと地面に溢れだす鮮血。
草葉が赤黒く染まっていく中、胸から滲みだすその血は広がり血だまりになり、ハルトディアの足元まで伸びていった。
ハルトディアは表情一つ変えず、地面に突っ伏すソウマの横顔を覗きこむ。
そして、鼻を利かせ、息を吸い込む。
「ふんふんッ……うん、生命活動もかなり微弱。いつ死んでもおかしくないね」
「な、何言ってるんですかハルトディア様!」
「? 実況」
「うるさいですよ!? 邪魔になるから離れてください!」
戸惑うメイアに、ハルトディアはきょとんとした表情を浮かべつつ、擡げた首を持ち上げて、駆けてくる小さなメイドを見下ろした。
「なんで?」
「それを私に聞きますか!?」
「殺したいんじゃなかったの?」
「違います! 私は彼を信じると決めたんです!」
「そう。なら信じてあげなよ」
「それとこれとは話が別です!」
「一緒だよ」
そう言って、駆けてくるメイアの足元をすくい上げるように、長いしっぽを振るうと地面に突っ伏す少女を横目に、ハルトディアはニヤリと笑った。
「いだぁ!」
「大丈夫?」
「王が引っ掛けたんでしょう!?」
「だって近づいちゃだめだもの」
「えええ!?」
「彼は生きてミィアを起こすと言った。その言葉を信じてあげないの?」
「死んでしまったらどうするんですか!?」
「セリスが土に埋めてくれるよ?」
「見殺しに!?」
「まさか」
「おじさま!」
堪りかねて、メイアはフラフラと立ち上がると、振り返ってフェルトナを見上げて叫んだ。
だが、隆々とした初老の男はいたむ手首を押さえながらも、苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべ、僅かにメイアから視線をそらして、無言を貫く。
その様子に、ハルトディアはニコリと笑って、その双眸を細めた。
王は本当にうれしそうで、更にフェルトナの顔が苦悶に歪んだ。
「助けないよね?」
「……」
「君は選択したはずだ。彼があの日この城に来た時点で、託すと」
「……はい」
「でなければ、あの日、オルドラの深淵地帯に来た冒険者と魔獣を、君が助けないわけがない」
「……」
「君は託したんだ。彼ならやれると。全てを任せられると。敵も味方も有象無象なく、彼は我が娘の剣に盾に、そして伴侶になりうると」
「……はい」
「だから助けてはいけない。それは自身の決意と期待だけじゃない。ソウマくん自身の信念を折ることになる」
ドロドロと流れ落ちる大量の血。
鼓動の音がどんどんと小さくなり、そのたびに、溢れだす血の勢いが弱くなっていくのが目に見えて分かる。
体温が冷たくなっていく。
あと五分程の命。
時間はない。
それでもハルトディアは微笑み、息絶えようとするソウマの背中を見下ろし囁いた。
「彼は、獣だ。まるで夜を歩く狼のような孤独と孤高と、それに見合う力がある」
「ハルトディア様お願いですっ、これ以上は!」
「そんな彼が、唯一誓ったんだ。その誓いを僕らが汚しちゃいけない。彼はその魂を一人の主につなげ、その首に輪をつけ、忠誠を誓った」
「王よ!」
そう言うと、巨竜王は静かに首を伸ばすと、居城の入口。巨大な二枚扉の城門を見つめて、満足げに微笑んだ。
そして、嬉しそうに囁く。
「だから彼を助けていいのは、この世界でたった一人だ」
「!? どうして……!」
「ねぇ、ミィア」
―――――草を踏む爪先。
土の冷たさが素足の裏に伝う。
胸元に這わせた小さな手が震える。
長いウェーブのかかった金髪をなびかせる風に。今にも倒れそうな華奢な身体が、日差しの下、恐る恐る露わになった。
ドクンドクンと心臓が跳ねる。
息が苦しくなる。
唇を震え、呼吸が上がり、幼い表情をこわばらせ、そこにはあどけない少女が、城門の前に立っていた。
「お、お父様……」
「おはよう」
「あ……あの……」
「うん」
「あの……大きな音がして……その胸の奥が変になって……怖くなって……部屋に誰もいなくて……ソウマが、いなくて」
「うん」
「そ……ソウマは?」
震える声に応えるように、ハルトディアは無言で首のもたげその視線を、足元に横たわるソウマに向けた。
「ここ」
「ひっ……」
零れる短い悲鳴。
ミィアは青ざめた表情で、華奢な身体をこわばらせた。
血が溢れていた。
うつぶせに倒れる青年の胸元から、背中からありえないくらい大量の血が流れ、草むらを赤くぬらし、血の池を造り上げていた。
ピクリとも動かない四肢。
息も微弱だった。
苦んでいた――――
「ソウマ……ど……どうして……なんで?」
「人鬼――――多分、体内に眠る【力】を無理に活性化させたんだろうね。その反動だよ。血が止まらなくなってきている。その上傷もひどい」
「え……ええ……なんで……なんで……」
「彼はもうすぐ死ぬよ」
目の前が真っ白になる。
ミィアは目を見開いたままその場に崩れ落ちる。
わからない。
思考が停止していた。
目の前にはフェルトナが見えた。メイアが見えた。父親であるハルトディアが見えた。
だが、誰も血だまりに沈む彼を助けようとしていなかった。
彼は死のうとしていた。
心音が小さくなるのを感じた。体温が少しずつ冷たくなっていくのがわかる。
怖い。
何かが失われていく感覚に、足がすくんで動かない。
息が途切れる。
心臓が潰れそうになる―――――
「あ……ああ……あああ……」
「ミィア」
「ソウマ……ソウ、マ」
「こっちに来るんだ。これから君は選択をしないといけない」
「ソウマ……」
「ほら、彼が呼んでいるよ」
―――――ミィア。
ふと、風に乗り、遠くから聞こえるのは、小さな囁く声。
低く、優しい呼び声。
囁かれ、風がそっとほっそりとした腕を持ち上げ、彼女の体を優しく引っ張り上げ、ミィアはその瞳を細め空を見つめる。
零れる日差しが白い肌を美しく撫でた。
彼女は空から聞こえる声に、胸を掻きむしった。
「ソウ……マ」
声が呼んでいた。
行かないと。
心臓の鼓動が少しだけ収まった。
ミィアは震える足でフラフラ立ち上がると、風に背中を押され、こわばった表情で草むらを踏みしめ、歩き始めた。
「ソウマ……私……」
「そう。彼が呼んでいる」
「嘘……ミィア様」
「全て、娘の選択だ。さぁ行きなさい」
その足取りは遅く、やがて広がる血たまりに爪先が震える。
ピチャリ……
まだ暖かい。
流れ出す【命】の体温が、足の裏を通して感じた。その紅い鮮血が、震える彼女の顔を綺麗に映した。
やがて、ミィアはそのたどたどしい足取りで、草むらに横たわる青年の前へとやってくる。
「はぁ……はぁ」
息を上げ、苦しげに胸を抑えながら、少女は恐る恐る彼の前に膝を折り座り込むと、震える手を伸ばして、その裂けた背中に指を添えた。
唇をかみしめる。
こらえる。
目の前の現実を投げ出さないように、ミィアはきつく目を閉じ、祈るように胸を掻きむしる。
彼の呼ぶ声に、ただ耳を傾ける――――
―――――ミィア……必ず俺が。
「ソウマ……」
トクン……トクン……
微弱だが、心音が聞こえる。
まだ生きている。
まだ生きようとしている―――――ミィアはゆっくりと目を開くと、彼に触れていた手をおろし、跳ね上がる心音を抑えるように両手を胸に添えた。
「はぁ……はぁ……」
「さぁ。選択の時だ」
「えら……ぶ?」
「そうだ。彼はもうすぐ死ぬ」
日差しを遮り、巨竜は震える娘の背中を見下ろし、囁く。
「ミィア。お前は選択しないといけない。彼の生き死にを」
「な、なんで……」
「この見殺しにするのもいい。助けるのもいい。直接心臓を抉るのもいい。だけどどちらにせよ、彼の生死はミィアの手に握られている」
「……」
「彼を生かすのは、ミィアの願いだ」
「私の……」
「どっちだい?」
伸ばした首をかしげ、ハルトディアは優しく娘に囁きかけた。
ミィアは俯き項垂れる。
胸の奥にうずく感情を、ただ抑えきれなくて、涙をあふれさせ、ただ肩を震わせていた。
一緒にいたい。
ただ毎日、日向ぼっこをして、勉強して、夜まで一緒にいて、朝起こしてもらって朝食を食べて、また散歩をして。
「私……」
――――ミィア。
ずっと傍にいてほしい。
感情が溢れだして、ミィアは涙を浮かべる。そしてその涙は青年の背中に吸い込まれる―――――
「……お、お父様」
「うん」
「た、助けて……助けてあげて……ソウマを……ソウマをッ」
少し声が甲高くなり、枯らしながらも、ミィアは顔を上げ、大粒の涙を瞳に浮かべて、父親のハルトディアに叫んだ。
その答えに、ハルトディアは目を細めた。
傍らに佇んでいたフェルトナと、メイアは共に目を丸くする。
「ミィア様……」
「お願い……ソウマを助けて……私……私ッ」
「―――――ダメ」
巨竜は微笑みを口の端に浮かべながら、静かにその長い首を左右に振って、青ざめた表情のミィアに告げた。
「ど、どうして……? 私……ソウマに」
「どうしてほしいの?」
「い……生きて……生きてほしい……」
「うん。それから?」
「生きて……また、私を……護ってほしい……傍に……いてほしい……」
「うん」
「傍に、いてほしいの……!」
胸の奥が苦しくて、ミィアはその場に崩れ落ちたまま、うつぶせになったまま、何度も彼の背中をさする。
ユサユサと彼の体が血だまりの上で揺れた。
その身体から流れる血がさらに弱まっていく。
鼓動が小さくなる。
息遣いが遠くなる――――
「起きて……起きて……一緒にまた散歩しよう……」
「ミィア」
「ねぇ……ソウマ。ソウマは私のものなんだから……私の命令聞いてよ」
「ミィア」
「ソウマ、ソウマッ」
「ミィア。彼を助けたい?」
「助けたいッ、誰かソウマを助けて!」
「―――――自分では、助けてあげないの?」
ハルトディアはニコリと微笑んだ。
その言葉に、ミィアはきょとんとして涙を浮かべた瞳を丸くして、程なくして視線を落として、力なく青ざめた顔を左右に振った。
「ダメ……私……できない」
「どうして?」
「だって……霊術も……勉強中で……ぜんぜんやりかたわかんない……何も、知らない」
「うん」
「私じゃ、ソウマは……助けられない……助けられないの」
―――――胸を抉る、鋭い痛み。
それは無力感。
悔しさにも似た感覚。
何もしてやれない、ただただミィアは涙をぽろぽろと流すと、その雫を彼の背中に落とした。
「私……バカだから……何もできないの……私……」
「……。できるよ」
「できない……できない!」
「思いだしてごらん。太古の生命の祖霊術――――その基礎術式。全て君の魂に刻まれているはずだ。その刻印を解除するんだ。おのずと魂は呼応する」
「できない! できないよ!」
悲痛な叫びを上げ、胸を掻きむしるミィアに、ハルトディアは静かに囁いた。
「ミィア。君は彼にこう言ったね。助けてほしい。護ってほしい、と」
「ソウマ……ソウマ……」
「でもね、彼はただの高校生なんだ。そんな彼には、たった独り、少女の命すら重荷になるだろう。彼はその痛みに潰れるかもしれない」
「……」
「そう。目の前にいる彼もそうだ。……前のめりに倒れた彼を、ただ待っていても、彼は来ない」
「そんな……」
「彼は、ミィアを助けた。その命にかけて今後も護ろうとしている。その彼に報いてやることは、できないだろうか」
―――――ミィアは俯いていた目を開いた。
「……報いる」
「苦手なことだと彼は言っていた。だけどそんな苦手なことを、不器用ながら彼は為そうとした」
「……」
「ミィア。家臣である彼がそうなら、主である君は尚更、苦手なこともやってやらないとね」
「……」
「不器用でも一生懸命に彼は戦う。後ろに護られても、そんな彼の背中を支えてやることはできるだろう」
「同じ、こと」
「ああ。誰かが護るんじゃない。君が彼の命を護るんだ」
ミィアはハルトディアを見つめたまま、あっけにとられたような表情で見つめる。
「さぁ……術式の展開を行いなさい」
「……こ」
「うん」
「刻印……展開」
―――――舞い上がるウェーブのかかった長い髪。
「……霊術回路……構築開始……」
「……守ってもらう。それは主にとって正しい。だけど、そんな彼を、護ってやることもできるはずだ」
「祖霊の術式……星の魂に問いかけ……大地の芽吹き……生命の楔を繋ぎ直す……」
白い肌に浮かびあがるは、白い刻印。
それと同時に広がる血だまりを覆うように、うつぶせに倒れる青年の周囲に円形の白模様が浮かびあがって光を放った。
ミィアは静かに白の刻印の浮かぶ両手で青年の身体を恐る恐る仰向けにする。
そして肋骨が突き出て抉れた胸倉に手を添える。
祈るように眼を閉じる―――――
「ソウマ……」
「久しく忘れていたろう。その行動の根底にあるのは、ある感情だ」
「――――霊術構築完了……星霊術式【フィオリム】起動……」
囁いた瞬間――――周囲の血だまりがまるで蒸発するかのように、円形に大地に刻まれた刻印から放たれる光の奔流に吸い込まれ立ち上った。
残るのは、溢れだす光の粒に照らされ揺れる草葉。
そして光に包まれ、僅かに浮かび上がる青年の身体。
その眠る横顔が、開いた少女の紅い瞳に映る。
「……ソウマ」
フワリ……
立ち上る光の中、ミィアは恐る恐る立ち上がり、浮かびあがって目の前に漂う青年の腕に、吸い寄せられるようにその手を伸ばす。
爪先立ちでふらつきながら、彼の手にしがみつく。
ギュッと伸ばした手で、彼の腕を恐る恐る引き寄せる。
胸元に抱き寄せ、血のにじむ肌に唇を這わせ、ギュッと抱きしめる―――――
「ソウマ……ソウマ……」
死んでほしくない。
生きてほしい。
立った二つ、小さな願いを込め、祈りを刻印に刻み、霊術が光と共に起動し、光が大地と星の根より溢れだして彼を包み込んでいく。
―――――トクン……。
聞こえた。
耳を手首の血管にこすりつけながら、確かにはっきりとした脈動を感じる。
触った手が熱い。
整った呼吸が聞こえてくる。
生きている。
ミィアは光の中、恐る恐る顔を上げると、涙を浮かべた目尻をぬぐいながら、光の奔流に漂う青年を見上げた。
「ソウマ……」
「……声が、聞こえた」
―――――光の中、彼は眼を開く。
ミィアは驚きに目を見開き、その両手をソウマの腕から離し、今度はこちらを見下ろす彼の首元へと伸ばした。
フワリと髪が靡く。
爪先立ちになっていた足先が地面を離れる。
飛びあがり、その指先が傷口のふさがった肌ををなぞり、首筋を撫でる。
爪を立て顔をうずめ、きつく目を閉じ少女は、宙に浮かぶ青年の体に抱きつく―――――――
「ソウマ……ソウマ……!」
「……お前が、俺を呼んでいたんだな」
「……そうま……やだ……もう死んじゃやだ……死なないで」
「ごめん……」
「ふぇ……ふぇえ……」
「ありがとう……ミィア」
肩に顔をうずめ泣きじゃくるミィアに、ソウマは戸惑いながら、彼女の髪を撫でた。
優しく撫でながら、その感触が、確かに自分がここにいることを実感させた。
「……ずっと、誰かが呼んでいた。暗い中、闇に光を投げて、誰かが俺の手を引っ張った」
「ソウマ……ソウマ」
「お前が、ずっと傍にいたんだな……」
囁く声が立ち上る光の柱に吸い込まれていく。
そして光の柱は天高く空を貫き、やがて光の粒となって霧散し、天上に巨大な刻印を浮かべてアルドレシア一帯に広がっていく。
それは白く広がる四枚の翼のよう。
その姿は、羽ばたく鳥のように――――
「太古に残る星霊術――――まさかミィア様がここまでの霊術を」
「まぁ、流石は魔王の娘だねぇ」
ギョッとするメイアをよそに、空に羽ばたく巨大な翼の刻印を見上げながら、ハルトディアは満足げに頷いた。
その横顔を驚きに目を見開きながら、フェルトナは呻く。
「まさか、王よ。ここまで考えて……」
「さぁ」
「……。なるほど、メイアの愚行、最初から見ていたのですね」
「そこまですごくないさ。僕はただ、あの子の父親でありたいだけさ」
「ご立派です」
「今後は城内での私闘は極力厳禁。噴水直すの大変だからね」
「はい」
「―――――彼女は直に目覚める。その魂はようやく鼓動を始め、同調を始めたんだ」
「その感情と共に、ですか?」
「ああ。そうなれば、彼女はようやく元に戻る」
「……」
「あ、後メイアも極力事象兵器の使用は控えてね。星の駆逐とか、恒星間戦争時の決戦兵器だからねソレ」
そう言って振り返った先には、片膝をまげ頭を垂れる巨人が見えて、ハルトディアはニコリと笑った。
メイアは深々と頭を下げる。
「は、はい……すぐに格納しますので」
「あ、そのまで噴水の修繕頼んだよ」
「ええええ!?」
「お願い。僕これからアレクトに行かないといけないし」
「り、了解しました」
「ふふ、ありがと」
笑みをにじませつつ、苦い表情のメイアをよそに、ハルトディアはそう言ってその黒い翼を広げ、ゆっくりと立ち上がった。
「フェルトナ。僕は彼を信じている。彼の未来、必ずミィアと共にあると」
「はい。私もです」
「なら、僕が次に言うべき言葉、わかるよね」
「……?」
「まぁ、ミィアもそろそろ大人だしね。夜更かしぐらいさせてあげてもいいんじゃないかな」
―――――フェルトナの表情がこわばる。
「まさか……!」
「正解」
空へと昇る光の柱を背に、黒竜王は静かに笑みをにじませ、その翼を空いっぱいに広げて、そう告げた。
「よしなに」




