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戦国不精で何が悪い〜米作りとか面倒なのでやめました〜 ―神様のチート、無意味でしたよ。人口比10対1の東北なのに、なぜか天下が見えてきたかも―  作者: 犬童好嬉


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第72話 ぼく貴丸さんだよ、はちみつだーすき! 01

そして今、その張本人の貴丸が、しぶしぶながら現場に立っているのだった。他に敦丸、希丸、修平の四人は、蜂蜜採取の現場へと到着した。


森の縁、丸太をくり抜いて据えた巣洞が並ぶ一角である。


木立の隙間から差し込む光はまだらで、地面には乾いた落ち葉と、湿り気を含んだ土の匂いが混ざり合っている。


足を踏みしめるたびに、かすかな沈みと擦れる音が返ってきた。


少し離れた場所には、元伯、空然、銀四郎、実右衛門、助九郎、八田屋が控えている。


いずれも腕を組み、あるいは腰に手を当て、一定の距離を保ちながら様子を見ていた。


ここへ来る前に琴に呼ばれ、「守秘義務契約書」と呼ばれる書付に署名させられたばかりで、そのせいか誰も軽口を叩こうとはしない。視線だけが、こちらの動きを静かに追っている。


ここで、貴丸が名付けた「防刃服」なるものに着替える。


麻布を何層にも重ね、柿渋を塗り込んで固めた装束で、表面はやや硬く、擦れるとごわりとした音を立てた。


頭部はすっぽりと覆われ、目の部分だけに細かい紗が張られている。


さらに、事前に忌避のための煙で燻されているため、独特の燻香がわずかに立ちのぼっていた。


着込み終えた貴丸が一歩前に出て、養蜂譜を掲げる。


だが防刃服のせいで指先が利かず、紙をめくるたびに布が引っかかり、動きが鈍る。何度か試みてから、貴丸は躊躇なく右手の布だけを切り開いた。


「これで良いよな」


そう言ってようやく頁をめくり、視線を落とす。


「まず、ヨモギに火をつけて煙を出す。それを巣洞に流し込むんだって」


淡々とした口調で説明が続く。言葉は軽いが、手元は養蜂譜の記述を確かめながら進んでいた。


「蜂は火事と勘違いして、逃げる支度として腹に蜜をためるんだとさ。で、その分、動きが鈍くなる――と、書いてある。本当かどうかは知らんけど」


わずかに間を置き、次の頁をめくる。


「そのあと、蓋を開けて上半分の巣板だけを取る。全部は取らない。冬を越せなくなるんだと。幼虫や働き蜂も巻き込むが……そこは避けられぬって書いてあるよ」


簡潔に言い切ると、顔を上げる。


「そして、取った巣は桶に入れ、濡れ布で隙間を塞ぎ、油紙で包む。残りの巣は後で泥で封じ、越冬させる。暗く静かな場所に置くこと。暖かいと春と勘違いするらしい。そしてそれを漆桶に入れて持ち帰る。この場ではここまでだな」


説明はそこで終わった。


貴丸が周囲を見回し、軽く顎を上げる。


「はじめようぜ」


その一言で、全員が小さく頷いた。以後の指揮は修平が執る。


修平が前に出て、作業の段取りを示す。防刃服を着ていない大人たちはさらに距離を取り、風下側へと位置を変えた。


集めておいたヨモギに火が入り、白い煙がゆっくりと立ち上る。


湿り気を帯びた煙は重く、地を這うように流れていく。それを手際よく巣洞の口へ送り込むと、草の焦げる匂いが周囲に広がった。


しばらくして、修平が頃合いを見て小さく合図を出す。丸太の蓋が外される。


その内側には、黄金色の巣がびっしりと詰まっていた。


六角形が整然と連なり、蜜が内部に満ちて光を受けて鈍く反射する。重みを帯びたその色は、単なる甘味というより、積み重ねられた時間のようにも見えた。


「おお……」


子供たちから素直な声が漏れる。思わず一歩踏み出しかけて、足を止める。


修平もまた、ほんの一瞬だけ手を止め、その光景を目で追っていく。


蜂の動きは確かに鈍い。羽音は残っているが、刺しに来る気配は弱い。


修平が包丁を入れる。巣板を崩さぬよう、刃を浅く滑らせるようにして切り分ける。


切り離された部分はそのまま持ち上げられ、漆桶へと収められた。


内側に溜まった蜜がゆっくりと糸を引き、やがて重さに耐えきれず、縁で静かに切れる。


作業は急がず、一定の手順で進められる。量を見極め、取り過ぎないように慎重に手を動かす。


やがて必要な分だけを採り終え、一行は巣洞から離れた。


残された巣を前に、修平と貴丸はもう一度手を入れる。


崩れた部分を整え、開けた箇所を戻し、外から見て形が保たれるよう押さえつける。元の状態に近づけることを優先した。


「全部を取らないで、また来年につなげるか……SDGsだな」


貴丸がぼそりと呟く。


「ん? えすでーじーずとは何ですか?」


修平が顔を上げる。


「持続可能な世界をつくるため……か」


そこまで言って、貴丸は口を閉じた。修平がもう一度問いかけるが、貴丸はそれ以上は何も言わない。


代わりに、少しだけ空を見上げ、息を吐く。


「暑い。もう帰ろうぜぇぇぇぇ」


その言葉で、場に張っていた力が抜けた。


桶は慎重に持ち上げられ、濡れ布で口を固め、さらに油紙で二重に包まれる。抱えた腕に、蜜の重みがじわりと伝わってくる。


一行はそれを囲むようにして歩き出し、大和田館へと戻っていった。森の中には、燻したヨモギの匂いだけが、しばらく静かに残っていた。






ぼく○○さんだよ、はちみつだーすき!

このフレーズもリーガル的には、大丈夫なはず!  よね?




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