第41話 活劇:『最高の子供』に捧ぐ?
あー、、今日は3話も投稿してしまい、、
ストックが減る。。
でも、修平君商人編はここまでで、一括りなので。。
午後の光がゆるやかに傾き、庭の砂に長い影が差し始めた頃、修平は一人、板の間に膝をついていた。
八田屋から教わった所作の復習を終え、ようやく一息つこうとした、その時である。
背後から、気配もなく――
「修平。今日からお前は”妥荷得”な」
声だけが落ちてきた。
振り向くと、いつものように気の抜けた顔で、貴丸が立っている。歩いてきた気配すらない。
「ちょっと、習い事の追加だな。がんがれ!」(がんばれ)
軽く言いながら、手に持っていた籠から胡桃をひとつ取り上げた。
「まずは、これ」
何をするのかと思う間もなく、貴丸はそれを砕き潰し、そのまま床へと擦りつける。じわりと油が滲み、木の肌に薄く光が走った。
「こうやってな、塗る」
次いで、布でそれを拭き取る。余分な油を逃がし、表面だけがしっとりと落ち着く。
「で、取る」
短く、それだけ言う。
「胡桃油かける。胡桃油取る」
まるで呪文のように、同じ言葉を繰り返す。
「やってみ」
唐突だった。
修平は一瞬戸惑うが、言われるままに胡桃を手に取り、同じように床へと擦りつける。
だが力の加減が分からず、油がにじみ過ぎる。慌てて拭き取るが、今度は擦りすぎて乾きすぎる。
「違うな」
貴丸がぼそりと言う。
「恐怖に負けるな」
もう、意味が分からない。
だが、何かを示唆していることだけは、確かに感じた気がした。
「もう一回」
それだけ言われる。
修平は無言で頷き、再び手を動かす。
それが終わると、次は柿渋であった。壁に塗り、乾かぬうちにまた塗り重ねる。
腕を上下に動かし続ける。単調な反復。
「止めるな」
短い指示だけが飛ぶ。
さらに床磨き。今度は左右の動き。体の軸を崩さぬように、ひたすら往復する。
そして、部屋を移される。
衣桁にかけられた着物。
「掛ける、取る、着る、脱ぐ、拾う」
一つひとつを、区切るように言う。
「全部、やれ、俺は師匠だからな。ミヤギと呼んでくれ」
理由はない。説明もない。ただ、やれと言われる。
その日からだった。
午前の学びと養蜂の合間に、商いの稽古を終え、そのさらに後――修平は黙々とその動作を繰り返すようになった。
胡桃を潰し、塗り、拭く。
柿渋を塗り、腕を上下させる。
床を磨き、左右に動く。
着物を掛け、取って、着て、脱いで、拾う。
意味は分からない。
何のためなのかも分からない。
お佳がこっそりとその様子を不思議そうに眺めている。
だが――貴丸の言うことは、なんだかんだ言って、これまで外れたことがない。
その一点だけを頼りに、修平は続けた。
十日が過ぎる頃には、八田屋から静かな評価が下る。
「初歩としては、商人の心得として、もう問題ございませぬな」
それは、ようやく一区切りを意味していた。
ほっと息をつく、その瞬間。
背後に、また気配。
「よし」
貴丸だった。
いつの間にか、すぐ傍に立っている。
「じゃあ、ちょっとだけいいか? 俺は眼鏡蛇会な」
そう軽く言いながら――
何の前触れもなく、拳が飛んできた。
一直線に、顔面へ。
咄嗟だった。
修平の身体が、反射的に動く。
脇を締め、腕を横に払う。まるで床を磨くときのように、滑らかに。
だが――
その動きの内側を、貴丸の拳が抜けた。
次の瞬間、鈍い衝撃。
「ぐっ――」
顔面にそれがまともに入ってしまった。
よろめく修平を見て、貴丸は首を傾げた。
「あらー……やっぱり、うまくいかないな。あれは映画(活劇)だったしな……。ま、こんなもんか……」
どこか拍子抜けした声で呟いた。
「めんごめんご」
軽く手を振り、そのまま去っていく。
残された修平は、鼻を押さえたまま、しばし動けない。
その様子を、離れたところで見ていたお佳の視線が――
静かに、しかし、確実に冷えきっていた。
それから数日間。
貴丸の周囲では、妙なことが続いた。
朝餉の汁が貴丸のだけが、やけに塩辛い。
廊下を歩けば、どこからともなく桶が落ちてくる。
何もないはずの場所で、何かに足を取られ転ぶ。
朝起きると眉間に肉の文字が。
終いには道を歩いていると、犬のう○こを踏んだり。(…それは偶々…)
どれもこれも、偶然にしては出来すぎている。
そのたびに、どこからともなく視線を感じるのだが――
振り向いても、誰もいない。
ただ一人。
お佳だけが、いつもと変わらぬ顔で立っていた。
いや――どこか、晴れやかですらあった。
それを見て、侍女頭の敏は小さく首を傾げる。
理由は分からない。
だが、何かが起きていることだけは、確かであった。
妥荷得:眼鏡蛇会に因縁をつけられる子供。師匠の指導で強くなる?
また、メインストーリーに関係のない話を書いてしまい。。
反省は、、、していません!
いや、この元ネタ、分からなくても良いんです。
完全に自己満足です。
貴丸はミヤギ師匠でもハン師匠でもなかったということです。
リーガルチェック、、この程度なら問題ないですよね?




