後日談:S級ベヒーモス襲来!? 後編
遅くなりました!
片付けや後のことは任せろと言われたヴォルフラムは、部下たちの言葉に甘えて屋敷に戻ってきていた。
父親の姿を見つけたレオナルドは一目散にトコトコと駆け寄る。普段なら飛びつくレオナルドだったが、怪我をしたヴォルフラムを見て違いを感じたのか、控えめに太い脚にぎゅっと抱きついた。
……子どもというのは、勘が鋭いな。
ヴォルフラムは大きな手でレオナルドの頭を撫でる。
「レオナルド。お前の誕生日だったのに、悪かったな」
「とっさま、いたい?……れお、よしよしする!」
「ははっ!ありがとな。
…お前たちを守るのが、父さまの大事な仕事だ」
少し話せるようになったばかりのレオナルドを、片手で軽々抱き上げる。
滅多に大きな怪我をしない父親の変化に気づいて、心配する心優しい息子に、つい表情を綻ばすヴォルフラム。
ステラも二人の姿を見てやっと一息つけ、ほっと安堵していた。
「先程ヘクターが興奮していたのですが、ベヒーモスから取れた魔石は特大の、それもかなり質のいい物のようですね」
「ああ。こりゃ今回の討伐費用の数倍は稼げたな。
……たまにはいい所も見せとかねぇと、なあ?」
それだけ危険な獲物であったとステラは言いたかったのだが、ヴォルフラムは気付いているくせにニカッと明るく笑ってみせた。
心身を危険に晒し、命を削る大役を務める夫に、ステラは苦笑する。
「いつもアイゼンベルクはヴォルフラム様に頼りきりですよ」
「力仕事はそうでも、家のことはすっかりステラに任せきりだろ?」
俺も一応貴族なんだぞ、とその領地運営や屋敷の諸々の仕事はほぼステラが行っていた。
そのため、ヴォルフラムが現場に専念できる環境が続いており、日頃の訓練ができたため、兵士たちとの連携も上手くいった。
ステラは一冊の本に熱心に目を通している。
その間に、離れていた間を埋めるかのようにレオナルドと遊び倒すヴォルフラム。キャッキャッとはしゃいでいたレオナルドは居間のソファで眠ってしまった。
ステラが毛布をレオナルドに掛けて微笑む横顔をみて、寄り添うヴォルフラムがそっとキスを送る。
ゆっくり唇を離れると、ステラがそっと口を開く。
「……あの、レオも大きくなったことですし。
そろそろ二人目を考えませんか?」
「うーん。……俺はステラの負担になる方が怖い。
ただでさえ、妊娠出産は命懸けなんだろう」
「それは、そうかもしれませんが…」
少し離れたソファにステラを座るように促すヴォルフラム。
ステラがずっと二人目を希望していることを知っていた。その度に理由を付けて、まだ早いと断っていた。
ヴォルフラムはステラに負担がかかるならば、レオナルドという宝を産み落としてくれただけで十分だった。
しかし、ベルシュタイン家で生まれ育ったステラは、家族の温かみを痛いほど知っていたため、レオナルドに兄弟を作ってあげたかった。
「出産は、S級のベヒーモスよりも危険度は低いはずです」
「ははっ!……それを言われると、なかなか断りづらくなってきたな」
「悔いなく、やれるだけのことをやり尽くす人生を送りたいんです。例えば…【回復】」
ヴォルフラムの左肩にそっと手を置いたステラが、回復魔法を展開する。
先程から読みふけっていたのは初級の治癒魔法の魔導書であった。
もともとベルシュタイン侯爵家という高い位の貴族令嬢であるステラの魔力量は豊富だった。
専任の治癒士としての訓練や勉強など受けていないので、魔力量に任せた治癒力を向上させる手助けくらいしかできない。
しかし、人並外れた生命力を持つヴォルフラムにとってはかなり効き目が期待された。
「……ステラ。もういい、あまり魔力を使うな」
「ふぅ。やってみるものですね」
「『魔力アレルギー』が自分の魔力に反応しだしたらどうするつもりだ」
「ヴォルフラム様こそ、いつも危険に身を晒しているではないですか。……私もあなたの力になりたい」
ステラの『魔力アレルギー』は今のところ、自身の魔力には拒絶反応を起こしてはいない。
医師のヨハン先生とも相談して、なるべく魔力は使わない生活をすることに決めていた。
しかし、ステラはヴォルフラムの怪我が、治癒士の魔力不足で後回しになっていると聞いて、何もしないことはできなかった。
「全く。これじゃますます怪我して帰ってこられねぇじゃないか」
「ふふっ。そうですよ、絶対に無事で帰ってきて下さいね」
完治まではさせられないが、痛みを軽くするくらいはできるはず。せっかく高い魔力を持っているのだから、惜しむのは宝の持ち腐れというものだ。
ヴォルフラムは、ステラの体調が悪くなっていないかしきりに観察する。
「先程追加でアレルギーポーションを飲んだので、大丈夫ですよ」
「……そうか。なら、みんなで昼寝でもするか」
そっとステラの肩を抱いてソファの背もたれにもたれかかるヴォルフラム。
ステラは温かい彼の体温に、再び無事に帰ってきたことを実感して目元に涙が浮かんでくるのを感じていた。
……無事で、本当に良かった。
ステラは少し悪戯心を混ぜて、逞しい胸板を指で撫で甘えてみせる。
「ヴォルフラム様、寝室で休憩でもよろしいんですよ」
「んー!!……このタイミングで誘われると、ついうっかり応えちまいそうだ。
……だめだ、まだレオナルドが夜泣きとかあるだろう」
「あら、残念」
ブンブンと頭を振るヴォルフラムは、何とか理由をつけて断るが手だけは怪しくステラの腰に回っていた。
……もう少し押せばいけるかも。
ステラは冷静に受け止めながらも、愛しい人に寄り添っていた。
アイゼンベルクの地は、厳しい。
そして人々は暖かく、豊富な自然に溢れていた。
ーEndー
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