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マグノリア王国 番外編  作者: 麻生あきら
夜明けの指標

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11/12

02

 陽に透ける白銀の髪と真白の肌。

 軽く伏せられた睫毛の奥に赤い鉱石のような瞳が煌めく。

 白い神殿服に身を包んだ姿は、触れると淡く消えてしまいそうだ。


 ディルクルムにはウォルター・ルースの歓迎の挨拶など耳に入らず、ただ少女に魅入るばかりだ。

 少女がウォルターに促され礼をするべく足を後ろへ引いたところで、ディルクルムは手を伸ばし両腕を掴んだ。


「私の妃になれ!」

 ディルクルムは少女をガクガクと揺さぶった。


挿絵(By みてみん)


 神殿長と「何故?」と困惑したウォルターが視線を合わせる。

 神殿長はディルクルムに歩み寄る。


「王太子殿下、パティをこちらへ。気を失っております」

「⋯⋯あ。なんてことだ。あまりに美しすぎて!」




 ディルクルムはウォルターの案内でフローレス神殿の事実を知り、翌朝帰途についた。

 軍に守られ、去る姿を神殿長とウォルターは見送る。


「ダミー君、どういう事だ?」

「わかりません。王城でもないのに反応があるとは思ってもみませんでした。フローレス(ここ)にも影響があるのでしょうか」


 王家の男子、特に即位した者は何故か『聖女の人形』に異常な程の執着を示す。

 戴冠の儀を終え王城で人形を手にした途端、全てを放り出さんばかりに溺愛する。

 はっきりしているのは国王が崩御すると共に、次代の国王の脳内に声が聞こえるという事だけだ。


 パティは六十四人目の『聖女の人形』。

『聖女の人形』は本来であれば星船の中で秘密裏にカプセル内で成長する。

 だがパティは聖女ソフィアの意思によって、例外として普通の人間としてフローレスで育てられた。




 迂闊であった。

 王城でなければダミーもウォルターも干渉はないと思い込んでいた。

 ましてやディルクルムはまだ王太子、これ程までの反応をするはずがない。と。


「ああなってしまっては、もう取り返しがつかないかも知れない」ウォルターは首を振る。「パティはまだ目を覚まさないが、何が起きている?」


「負荷がかかり過ぎて副脳が強制的にリブートを選択しました。いささか時間がかかるかも知れません。意識の共有がまだ出来ておりません」


「ひと月後に殿下が王城にお戻りになるまでは猶予が出来たが、その後はどうなるだろうな」

「大神殿に戻った後、私も注視致します」


 ウォルターは遠く王城の方角に目をやる。その両手は気を揉むように握られた。




 ニ日後、パティは目を覚ます。

 兄ジョイルの抱擁を受け、微かに微笑んだ。

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