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第九話 蜘蛛男

「しかし、百目野君、奴はピラミッドやらを作ったわけじゃない。殺人だ。源が無いじゃないか?」

「死臭を嗅ぎ分ける・・・」

「何?」

「死臭がポイントになる。生贄です。ですが歴史上、死体を、生贄を、オリオンにした者はいない・・・」

「なんと云う見解だ・・・」

百目野はそう述べると帰った。


「木藤さん、あんな話を信じるんですか?狂ってますよ」

「お前が考える犯人像は何だ?」

「さっぱりですが・・・」

「俺は何か、禍々(まがまが)しいものだと思っている」


皇居から数十km範囲で警戒態勢を敷いた。被害者が暴力団ばかりなので、その範囲の組事務所にも警官たちを配備した。


「次はどこだ?皇居か?百目野が云うオリオン説か?」


そんなおりに、天満組から木藤に「頼みがある」と連絡が入った。「マル暴の東雲しののめじゃないのか?」

木藤は天満組に顔の広い東雲と白城を伴って組に向かった。

「組長。俺らに頼みなど珍しいな」東雲が笑った。

「いや、東雲さん、あんたじゃない。木藤さんに聞いてほしい」東雲は仏頂面になった。

「木藤さん、あんたオカルト刑事って呼ばれてるんだろ?」東雲が横でニタニタしている。

「だったら何だい?」

「おい」

すると1人の組員が部屋に入って来た。

「こいつが例の目撃者だ」

木藤、東雲、白城は目を見張った。「組長、あれだけ頑なにとぼけていたのに急にどうした?」

「稲村組だ。壊滅したって?人間業じゃない殺しだって?実は恐ろしくなってきた」

「ヤクザのあんたらがかい?経緯を話して貰えるかな?」

「実は先日、ある若僧が組の金を横領しやがって。すぐにやった奴はわかって此処に連れてきて指を詰めろと云ってやった。そしたら「嫌だ!」って云うんだ。貴様!ってなもんでうちの若いもんが襟首を掴んだんだ。そしたら・・・」

天馬は項垂れた。

「まるで雑巾のように腕が捻れて・・・若いもんは叫びながら飛び跳ねた。貴様!ってね。周りにいた連中がつっかかったんだ。そしてらそいつらが何もされていないのに壁に叩きつけられた。それで出て行ったんだ。追うよりも何がん何だかわからず皆、突っ立っていたんだが。ハッと我に返って「逃すな!連れてこい!」てね。それで追っていったのが例の5人」

「被害者か・・・何かい?あの殺人は、その若造の犯行だって云うのか?それを見たんだな?」

「それが・・・おい、此処からはお前が話せ」「へいっ」と云ってその組員が話し始めた。

「あっと云う間ですよ。皆殺しです。俺は本能的に逃げましたさ」

「そいつの名は?」

「いや、実は襲ってきたのは奴じゃなかったんで」

「仲間か?」

「そんなもんじゃないですよ。腕が6本あるんです」

「な、何?!」

「悪魔だ!こいつは人間じゃない!とね」

「夜中だったんで顔はよく見えなかったけど。全身、真っ黒でしたよ。目が異様に光っていて・・・そう6つ目が光ってた」

「コスプレじゃないのかい?」

「違う!物凄い速さで動いて、手には剣を持って、他の掌から空気みたいなもんを出すんでさ。すると兄貴達がそれに囚われたと思ったらパンクしたんでさ。俺、俺にその肉片が飛んで来て」

「・・・・よく逃げられたな」

「誰も信じてくれないんですよ」


「蜘蛛みたいな奴ですね」白城が呟いた。

「刑事さん、信じてもらえますか?」

「・・・・・」

天馬が口を開いた。「刑事さんたち、わしも最初はアホか!とドヤしましたよ。巫山戯るな!仇を取ってこい!と。佐藤が出てきて「親父さん!俺がる!」てね。しかし、佐藤まで・・・。。勝てるか?と思ったんでプロの殺し屋を雇ったんでさ、しかし、それも殺られちまった」

「神田の現場だな」

「天馬組組員とニュースになって、稲村組が垂れ流したな?と思ったんです。で、だんまりを決めたんですよ。ところが稲村組がやられたのを聞いて。蜘蛛男の仕業だ。組1つを潰すなんて・・・心底恐ろしくなったんです。残党どもが今も追っているはずですよ。やめた方が善い。全滅だ。そこで警察に話すことにしたんです」

「蜘蛛男・・・・組長、善くそこまで話してくれた」

「木藤さん、わかりますか?恐ろしいんです。あれはこの世のもんじゃない。そんなもんに狙われる恐怖が・・・」


部屋を出て東雲が呟いた。

「木藤、白城、どう思った?世迷言か?」

「真に怯えていた。俺は信じる」

「木藤、お前・・・」

「ところでその追っている若僧の名は何だったかな?」

柳田武速たけはや。15歳、住まいは本郷4丁目。父親と2人暮らしだ」

「東雲は本庁に戻ってくれ。俺と白城は柳田家に行く。蜘蛛男と何か関係があるかもしれん。天馬の話の裏を取りたい」

「わかった」

「東雲、次はヤクザ狙いじゃないかもな」

「皇居か?」

「いや。一般人かもしれん」

「お前!次がわかるのか?!」

「おもむろにしか云えないが・・・」


2人はそのまま柳田家に向かった。

「此処だ」ドアベルを鳴らした。

奥から声が聞こえた。

「はい、百目野先生?」

「百目野先生?」

ガラ!「あれ?どなたですか?」

「警察の者です。いえ、心配なさらずに・・・少し聞きたいことがあるだけです。ご協力いただけますか?」

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