疑惑の白猫
「イライザさんが出奔されたんですか?」
今日はシュー様が日勤のため、リード様とナッシュさんとお茶をしていた。
飲んでいたお茶を吹きそうになってあわてて飲み込んだ。どうなってるの?
「…今も行方は追えてないらしい。リィナにはあまり関係がないがな。…珍しい薄紫の目をした白猫を見かけたら注意してくれ」
「イライザさんって猫の獣人なんですね?」
私は一瞬しか見れていないイライザさんの外見を思い浮かべた。確かにすごく可愛くて可憐な人だったな。
「そうだ。恐らく人化した状態で逃げるのは難しいから獣化しているだろうな」
「でも…あまり獣化していると戻れなくなるんじゃ…」
リード様は頷いた。
「それもあってスタンリー公爵は血眼になって探しているらしい」
とにかく一度狙われているのは事実だから気をつけるように締めくくってその会話は終わった。
私は何故か獣化したナッシュさんと帰っていた。
「なんで獣化しているんですか?」
「こちらの方が鼻が利く」
ナッシュさんは短く答えた。
イライザさんの匂いを探しているのかな?
「あのクソ猫は昔からトラブルしか起こさないからな。俺は元々嫌いなんだ」
「そんなに色々あったんですか?」
「兄貴が面倒見の良い性格だから、わがまま三昧だったぞ。俺が知っているだけでも酷い例はいくらでもある」
兄貴は女を見る目がないんだよ、と独りごちる。
「…そんなにリード様が忘れられないのならもうこの国に入っているかもしれませんね」
「だろうな」
「ナッシュさんは出奔の原因がリード様だと思っています?」
「ああ」
短く答えた。
「あいつはとにかく自分勝手で思い通りにならないことを嫌うクソ猫だよ」




