窓辺の逢瀬
結局シュー様達が来てくれてたのは夕方近くになってからだった。なんでも大きな蠍型のモンスターで退治は早々に出来たらしいけど、毒が撒き散らされてその後始末が大変だったらしい。
足を痛めていた私はシュー様に背負ってもらって森を出た。
夜着に着替えて寝る準備をしていると窓がコツン、と鳴った。
私は昼間話したことを思い出した。もしかしたらナッシュさんが来たのかもしれない。
「…ナッシュさんですか?」
クゥンと喉を鳴らす音がした。
「僕だよ。リィナ」
「シュー様!」
私はビックリして窓に飛びついて鍵を開けた。
「ナッシュの名前が聞こえたけど」
するり、と夜にとけていた黒い犬が部屋に入ってきた。
「ナッシュさん、この前に来てたんですよ」
シュー様は耳をピンとさせて尻尾を逆立てた。ぐるる、という唸り声もする。
「…部屋に入ったの?」
「そんな!窓からお見かけしただけですよ。…勘違いしました?」
逆立った尻尾が収まるけど、耳はピンとしたままで言った。顔はわかりにくいけどすこし恥ずかしそうだ。
「あの言い方だと誤解するよ、リィナ」
「ごめんなさい、シュー様」
可愛い姿にふふっと私は微笑んだ。
「今日は少ししか居れなかったから、寝る前にごめん。窓からなら少しだけでも会えるかなと思って」
2人でベッドに座って窓の街明かりを見る。
「今日は大変でしたね」
「あんな大きなモンスターが人里近いところに出てくるなんてね。あまりないことだからちょっと運が悪かったね」
「お弁当食べてもらえなくて残念でした」
「また行こう。また作ってくれる?」
「もちろんです」
私達は顔を見合わせて笑った。
「今日、ナッシュさんからシュー様はすごい強いって聞きました」
「…そう、なんて言ってた?」
「尋常じゃない素早さだって」
シュー様は器用に苦笑する。
「彼も強いよ」
「…あとどっちが強いか聞いたら、長い戦いになるだろうって」
「…そうか、そうなるだろうな」
「戦うのは怖くないですか?」
「…怖くない、と言われたら嘘になるけど、守るべき物があると思うと頑張れるかな」
「私、シュー様が怪我するの嫌です」
「しないよ」
「したらどうしますか?」
シュー様は考えるように頷くと言った。
「なにかリィナの好きなことをしよう」
「好きなこと?」
「そう、リィナは欲しいものがあまりないだろう?僕がどこか怪我したらなんでも、リィナが好きなことしよう」
「旅行も?」
「なんでも」
街明かりの中星はあんまり見えない。シュー様はまた闇に溶けるように帰っていった。




