君の隣
「…リィナ」
柔らかく呼ぶ声に私はパッと顔を上げた。シュー様の寝ているベッド脇で寝てしまっていたらしい。
「シュー様…」
「ごめん、起こした。でもそんな体勢で寝たらいけない。ちゃんと自分の部屋に戻って…」
私は出来るだけ負担をかけないように気をつけて、ゆっくり抱きついた。
「リィナ、僕は大丈夫だよ」
優しく頭を撫でながらシュー様は言った。
「誰かが、受け止めてくれた気がした。その人に怪我は?」
「エクレール様です。少し腕を痛めているみたいですが、私の見る限りお元気そうでした」
「兄さんか…じゃあ心配ないな」
すごい信頼感だ。エクレール様だとなんだかわかるけど。くすっと笑った私をギュッと抱きしめる。
「リィナが無事で良かった」
「こっちの台詞です。…シュー様が無事で本当に良かった」
万感の思いを込めて言う。顔の横で大きな犬耳がピクピク動くのを感じる。ベッドの中で尻尾も揺れているのかな、と思ったら急に安心してまた笑ってしまった。
「リードさんは何処に?」
シュー様はひとしきり笑い終わると真剣な顔をした。
「ええっと、ごめんなさい、私動転して泣いてしまっていて状況がぜんぜんわからないんです」
「いや、無理もないよ。原因が僕だからね、申し訳ないことをした」
私の手を取って顔に寄せた。
「ライオネル兄さんの匂い?」
訝しげに聞いてきた。ああ、と私は頷いた。
「私が泣いていたので慰めてくれていたんです。…何もないですよ?」
怖い顔になってきたシュー様に慌てて言う。
「…兄さんでもダメだ。リィナ」
「はい。シュー様」
私はシュー様の頬に手を当てて頷いた。
「君から他の雄の匂いがすると思うだけで狂いそうになるんだ。獣人の本能だよ。自分に似ている身内の匂いだからまだ我慢出来るけど…出来るだけ触れさせないで」
「はい。わかりました」
「…嫌じゃない?人間同士では独占欲が強いって言うんだろう」
「そうですね」
私は顔の間近で微笑んだ。
「でも、シュー様がそう言うならそうしてあげたいんです」
だから、それは私の勝手です。と顔を両手で持って触れるだけのキスをした。
シュー様が不安に思うなら安心させてあげたい。
それを思うのは私の勝手のはずだ。




